極道恋事情

一園木蓮

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周焔編

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「……ッ、白龍! あの、えっと……服……! 服くらい着なきゃ……」
「ああ? お前だってローブだろうが」
 周には何をこうまで慌てているのか、まるで分からないようである。
「あの……! あのさ、俺、こっちのベッドの片付けをしなきゃと思ってたんだけど……もうすっかり綺麗にしてもらっちゃってるんだよー」
 冰は周の開けたローブの前を隠すように向かい合って立つと、クッと背伸びをしながら小声でその耳元に打ち明けた。
 頼むから状況を察してくれよー! と、祈るように訴えかけるも、周にはまったく伝わっていないようだ。それどころか、まるでトンチンカンな返事をくれながら、慌てる素振りも皆無である。
「片付けなんぞ真田がするだろ?」
 さも当然といったように、未だ眠そうにあくびまでするおまけ付きだ。
 寝起きで髪はボサボサと乱れ気味だし、ローブさえ適当に羽織っただけの――ある意味だらしない格好といえるのだが、朝陽の中で惜しげなく堂々と素肌を晒しながら眠たげにしている様子でさえ、何とも言い様のない色気が感じられてしまうのは困りものだ。作っていない”素”の男の色香が滲み出ているようで、ますますもって目の毒なのだ。しかも、そんな格好で冰のベッドから抜け出してきただろうことを目にすれば、言わずとも状況が分かろうというものだ。
「んもぉー! 白龍ってばさ!」
 周のような男に羞恥心など期待しているわけではないが、冰にとっては一大事なのである。いまいち会話が噛み合わないでいるそんな二人を前に、真田からはもっと赤面させられてしまうような台詞が飛び出した。
「坊ちゃま、雪吹様、お早うございますな。昨夜はお幸せなことがお有りのご様子、もう少し遅くまでおやすみかと存じておりましたが」
 ニコニコと細めた瞳に弧を描きながら、嬉しそうに告げてくる。
「さ……真田さん……!」
 冰は口をパクパクとさせながらも、頬は真っ赤にしたり、はたまた真っ青にしたりと忙しい。リネンを取り替えた真田にはすっかりすべてがバレてしまったのだと思うと、恥ずかしくて穴があったら入りたいくらいの心持ちにさせられてしまったのだ。
 ショックで足元をフラフラさせながらも、周の背に隠れるようにしながらローブの端を引っ張ってはブツブツと呟く。
「真田さんにバレちゃうかもと思って、シーツだけでも片付けようと思ってたんだよー。それなのに俺ってば、すっかり寝過ごしちゃって……。俺が来た時にはもう掃除も終わっちゃっててさ……。どうしよう……こんなの恥ずかしすぎるって」
 相変わらずに小声で訴えれば、周はようやくと目が冴えてきたわけか、『そんなことか』と言って、呆れたように一笑してよこした。
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