極道恋事情

一園木蓮

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年の瀬

2(年の瀬 完結)

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 午後になると鐘崎が紫月と共に正月飾り一式を持ってやって来た。今日は二人きりではなく、他に三人ほどの男たちも一緒だ。
 一人は真田と同じ年くらいの初老の男で、名を藤堂源次郎とうどう げんじろうといった。彼もまた、真田同様で、鐘崎家の一切を取り仕切っている家令らしい。他の二人は鐘崎らと同い年くらいだろうか、若くて体格も立派な、見るからに頼もしそうな男たちである。源次郎の指示で門松などの大きなものを手際よく運び入れてくれる。彼らは鐘崎の組の若い衆とのことだった。
「さて、社の方は済んだな。冰、お待ちかねの”雪だるま”を飾りに行くぞ」
「うん!」
 子供の頃に見た可愛い雪だるまを想像していた冰は、ダイニングに飾る鏡餅を見た瞬間、想像していたものより遥かに大きく立派なのに驚かされてしまった。
「うわ……! 大きい……」
 餅は一つでもずっしりと重く、危なっかしい手つきながらも、周に手伝ってもらってようやくと持ち上げられるくらいだった。
「ほら、気の済むまで触っていいぞ」
 ニヤりとしながら周に言われて、思わず頬が染まる。
「そ、それどころじゃないよー。なんかすごい神聖な感じで、触るのも怖いくらいだもん」
 こんなに立派なものを落とさないようにしなければと、それだけで精一杯である。ハラハラとしながらも真剣な顔付きで設置している。周にとってはそんな姿も実に可愛いらしく思えるものであった。
「ほら、橙はお前が乗せろ」
「いいの?」
「それとも二人で一緒に乗せるか?」
 なんだか結婚披露宴のケーキ入刀を思い浮かべてしまうようなことを言われて、冰はポッと頬を染めながらもコクリとうなずいた。
「この橙もすごく大きくて立派なんだねー。葉っぱまでついてる! 向きはこっちでいいの?」
 一つ一つ隣に立つ周に確認しながら慎重に飾る様子は真剣そのものだ。
「冰君ってば、ほんとに可愛いんだから!」
「冰さん、お上手ですよ」
 紫月や真田らにも見守られる中、周の大きな手に添えられながら立派な橙を鏡餅の天辺にそっと供え付ける。
「よし、完成だ。幸先のいい年になるな」
 無事に鏡餅を飾り終えると同時に周からクシャクシャっと頭を撫でられて、またしても頬が染まる。冰にとっては見るものすべてが珍しく、ひとしきり行事を楽しむことができた年の瀬であった。

- FIN -
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