66 / 1,212
男たちの姫始め
2
しおりを挟む
「今日は和菓子に合わせてお抹茶に致しましたよ」
冰にとってはこれまた珍しい大きな茶碗に緑色が鮮やかな薄茶がふるまわれて、またひとたび話に花が咲く。
そんな一同とは少し離れた席で、周と鐘崎にはコーヒーがもてなされていた。紫月らとは違って、甘いものは殆ど口にしない鐘崎の嗜好を心得ている真田の気遣いである。
「ところで、正月の予定はどうなんだ」
ワイワイと楽しそうな紫月らの席を横目にしながら鐘崎が問う。
「俺のところは晦日から二泊で温泉に行って来ようと思ってな。冰にとっちゃ初めての日本での正月だし、雪を見せてやりてえんだ」
「なるほど。香港じゃ雪は見られねえからな」
鐘崎自身も仕事柄香港にはしょっちゅう行っているので、理解が深い。
「雪深い温泉宿を取ったんだ。真田や李らも一緒に行くことになってる。お前の方はどうなんだ」
「――奇遇だが、俺も紫月を連れて源さんたちと温泉の予定だ」
「なんだ、お前ンところもか」
「毎年正月は初詣に出掛けるくらいで、特別なことはしてなかったからな。たまにはいいかと思ってよ」
鐘崎と紫月は幼馴染みだから、普段も正月もなくしょっちゅう行き来している間柄なのだが、互いに想いを打ち明け合ったのは意外にもここ近年のことだった。つまり、恋人として一緒にどこかへ出掛けたりする正月というのは実に二度目のことなのだ。
「去年は京都の老舗宿で迎えたからな。今年は雪見しながら温泉がいいっていう紫月の希望だ」
「そうか。じゃ、お互い楽しんでくるとしよう」
そんな周と鐘崎だが、まさかこの二日後に別々に出掛けた温泉地の宿で再び顔を合わせることになろうとは、この時は想像していなかった。
◇ ◇ ◇
冰にとってはこれまた珍しい大きな茶碗に緑色が鮮やかな薄茶がふるまわれて、またひとたび話に花が咲く。
そんな一同とは少し離れた席で、周と鐘崎にはコーヒーがもてなされていた。紫月らとは違って、甘いものは殆ど口にしない鐘崎の嗜好を心得ている真田の気遣いである。
「ところで、正月の予定はどうなんだ」
ワイワイと楽しそうな紫月らの席を横目にしながら鐘崎が問う。
「俺のところは晦日から二泊で温泉に行って来ようと思ってな。冰にとっちゃ初めての日本での正月だし、雪を見せてやりてえんだ」
「なるほど。香港じゃ雪は見られねえからな」
鐘崎自身も仕事柄香港にはしょっちゅう行っているので、理解が深い。
「雪深い温泉宿を取ったんだ。真田や李らも一緒に行くことになってる。お前の方はどうなんだ」
「――奇遇だが、俺も紫月を連れて源さんたちと温泉の予定だ」
「なんだ、お前ンところもか」
「毎年正月は初詣に出掛けるくらいで、特別なことはしてなかったからな。たまにはいいかと思ってよ」
鐘崎と紫月は幼馴染みだから、普段も正月もなくしょっちゅう行き来している間柄なのだが、互いに想いを打ち明け合ったのは意外にもここ近年のことだった。つまり、恋人として一緒にどこかへ出掛けたりする正月というのは実に二度目のことなのだ。
「去年は京都の老舗宿で迎えたからな。今年は雪見しながら温泉がいいっていう紫月の希望だ」
「そうか。じゃ、お互い楽しんでくるとしよう」
そんな周と鐘崎だが、まさかこの二日後に別々に出掛けた温泉地の宿で再び顔を合わせることになろうとは、この時は想像していなかった。
◇ ◇ ◇
28
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる