極道恋事情

一園木蓮

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男たちの姫始め

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 そして晦日の日――。
 周は冰と真田らと共に新幹線で温泉地へと向かった。車でもよかったのだが、冰に新幹線を体験させてやりたかったのもあって、今回は列車の旅を選んだのだ。
 午後の二時を回った頃、宿に着いてチェックインをしていると、見知った顔ぶれと鉢合わせて驚かされるハメとなった。
「――なんだ、てめえもここだったのか……?」
「そりゃ、こっちのセリフだぜ」
 周と鐘崎は苦虫を噛み潰したような表情で一瞬ポカンと硬直状態に陥ったが、冰や紫月は大喜びである。
「冰君ー! まさか一緒の宿とはね! すげえな、俺ら! めちゃくちゃ縁があるじゃん」
「紫月さん! ほんとですね、ご一緒できて嬉しさ倍増です!」
 思い掛けない偶然に二人は手を取り合ってはしゃいでいる。真田も源次郎も普段から付き合いがあるので、一緒に大浴場の温泉を楽しもうと入浴時間まで打ち合わせて、早々と盛り上がっていた。
 そんな一同を横目にしながら、周と鐘崎の大黒柱二人はやれやれと苦笑させられるのだった。
「おい、カネ――。てめえらの部屋はどこだ」
「紫雲の間だ。最上階の東の端だそうだ」
 そう聞いて、周は手元のパンフレットを広げながら館内の見取図を確かめる。
「俺らは昇龍の間か――」
 間取りは鐘崎らと同じだが、最上階の西の端と知ってホッと胸を撫で下ろす。
「これなら安心だな」
 周が独りごちる傍らで、鐘崎が面白そうに口角を上げた。
「なんだ、てめえ。部屋が離れてると何か都合のいいことでもあるのか?」
 ニヤッと人の悪い笑みまで浮かべるオマケ付きだ。
「そりゃ、まあな。俺は隣同士でも一向に構わんが、冰が気にするだろうと思ってよ」
「――何の話だ。部屋が近え方が紫月と冰は喜ぶんじゃねえのか?」
 ここ数回の行き来で、すっかり打ち解けた紫月と冰だ。どうせ夕方からの宴会も一緒にしようなどと言い出すに決まっている。
「俺が言ってるのはその後の話だ。冰はあれでも恥ずかしがり屋なところがあるんでな」
「ほう――そっちの心配か」
 いわゆる”夜の営み”のことを言っているのが分かっていて、わざと大袈裟に納得してみせる鐘崎である。
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