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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)
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「鐘崎を出せ! 隠し立てすると為にならねえぞ! うぉい、早くしねえか! 娘を手籠めにした落とし前をつけてもらわねえ内はテコでも動かねえぞ!」
テーブルの次はソファを蹴り上げる。暴れて威嚇するしか面子を保てないとばかりに荒れる中、今度は事務所内に娘の金切り声が轟いた。
「いい加減にして! もうやめてよ! 悪いのはパパじゃない!」
さすがの道内も驚いたわけか、一瞬、水を打ったように場が静まり返る。娘は紫月に掛けてもらった上着で必死に身を隠すようにしながら叫び続けた。
「この人の言う通りよ! パパはアタシを道具にしただけじゃない! そりゃ……アタシだって鐘崎さんの奥さんになれるならって……最初はパパの作戦に協力したのは認めるわ! だってそうでしょ? あんなカッコいい人と結婚できたらどんなにいいかって……女なら誰だってそう思うわよ! でも鐘崎さんみたいな素敵な人がアタシなんかを相手にしてくれるはずがないって言ったら……大丈夫だ、彼が絶対にその気になるように薬を盛るから……とにかく既成事実だけ作っちまえばいいんだって、そう言ったのはパパじゃない!」
娘の口からは先程若い衆らが聞き出してきたことと同じことが語られた。
「な、な、何を言い出すんだ、このアバズレが!」
思わぬところで企みを暴露された道内は、終ぞ娘にまで暴言を吐き捨てる。娘も負けてはいなかった。
「最初はそれでもいいと思ったわ! 例え汚い手でもあの人と付き合えるならって……。でも……分かったの……。この上着を掛けてくれた人を見てはっきり分かったのよ」
そう言う娘の瞳には、今にも溢れそうな涙が潤み始めていた。
「アタシじゃ鐘崎さんの奥さんにはなれないって分かったのよ。もしもアタシが鐘崎さんと結婚できたとして、今日のアタシたちがしたみたいな企みを仕掛けられたとしたら……きっとアタシは正気じゃいられないと思うわ。彼を責めて、相手の女のことを恨んで、大暴れしちゃうと思う。でもその人は違った。例えどんなに酷いことを聞かされても鐘崎さんを信じてる。彼がそんなことするはずがないって信じ切ってる。そればかりか、アタシにまで気を遣ってこの服を貸してくれた……。鐘崎さんを支えて側にいる資格があるのはその人みたいな人なんだって思い知らされた。アタシにはそんなふうに大きな器もないし、ハナから奥さんになる資格なんてなかったんだって……よく分かったのよ……」
堪え切れずに頬を伝った涙まじりに彼女は言った。
テーブルの次はソファを蹴り上げる。暴れて威嚇するしか面子を保てないとばかりに荒れる中、今度は事務所内に娘の金切り声が轟いた。
「いい加減にして! もうやめてよ! 悪いのはパパじゃない!」
さすがの道内も驚いたわけか、一瞬、水を打ったように場が静まり返る。娘は紫月に掛けてもらった上着で必死に身を隠すようにしながら叫び続けた。
「この人の言う通りよ! パパはアタシを道具にしただけじゃない! そりゃ……アタシだって鐘崎さんの奥さんになれるならって……最初はパパの作戦に協力したのは認めるわ! だってそうでしょ? あんなカッコいい人と結婚できたらどんなにいいかって……女なら誰だってそう思うわよ! でも鐘崎さんみたいな素敵な人がアタシなんかを相手にしてくれるはずがないって言ったら……大丈夫だ、彼が絶対にその気になるように薬を盛るから……とにかく既成事実だけ作っちまえばいいんだって、そう言ったのはパパじゃない!」
娘の口からは先程若い衆らが聞き出してきたことと同じことが語られた。
「な、な、何を言い出すんだ、このアバズレが!」
思わぬところで企みを暴露された道内は、終ぞ娘にまで暴言を吐き捨てる。娘も負けてはいなかった。
「最初はそれでもいいと思ったわ! 例え汚い手でもあの人と付き合えるならって……。でも……分かったの……。この上着を掛けてくれた人を見てはっきり分かったのよ」
そう言う娘の瞳には、今にも溢れそうな涙が潤み始めていた。
「アタシじゃ鐘崎さんの奥さんにはなれないって分かったのよ。もしもアタシが鐘崎さんと結婚できたとして、今日のアタシたちがしたみたいな企みを仕掛けられたとしたら……きっとアタシは正気じゃいられないと思うわ。彼を責めて、相手の女のことを恨んで、大暴れしちゃうと思う。でもその人は違った。例えどんなに酷いことを聞かされても鐘崎さんを信じてる。彼がそんなことするはずがないって信じ切ってる。そればかりか、アタシにまで気を遣ってこの服を貸してくれた……。鐘崎さんを支えて側にいる資格があるのはその人みたいな人なんだって思い知らされた。アタシにはそんなふうに大きな器もないし、ハナから奥さんになる資格なんてなかったんだって……よく分かったのよ……」
堪え切れずに頬を伝った涙まじりに彼女は言った。
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