極道恋事情

一園木蓮

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香港蜜月

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 紫月と冰の二人が仮眠を取り始めてから小一時間が経った頃、旦那組の男たちの方も雑談が終わったのか、揃って愛しい恋人のもとへとやって来た。
「おいおい、寝ちまってるぜ」
「ああ、本当だ」
 お菓子がたんまりと乗ったテーブルを挟んだ両脇のソファベッドに一人ずつ、紫月は大の字になって脚と腕を投げ出したまま、冰は子供のように毛布に包まり丸まって寝息を立てている。
「また腹出して寝てやがる……。仕方のねえヤツだな」
 鐘崎はクスッと笑いながら、寝相の悪い紫月の脇に座り込んではそっと毛布を掛け直してやっている。一方の周は、丸まった子猫のような冰を見下ろしながら、
「無邪気な顔しやがって」
 起こさない程度に、そっと頬を指先で突っついては瞳を細めて口角を上げる。

「――ったく! 可愛いったらねえな」

 一字一句違わずに同時に呟いて、思わず声が重なった瞬間、男二人は互いに顔を見合わせてしまった。
「おい、ハモってんじゃねえよ」
「そりゃこっちのセリフだぜ」
 またもや同時に片眉を吊り上げ合って、二人はプッと噴き出してしまった。
「着陸までもう一時間くれえあるからな。このまま寝かしといてやるか」
「そうだな。おおかた、はしゃぎ過ぎて疲れちまったってところだろう」
「そういやさっきっから賑やかしくやってたようだからな」
「二人して何を話してたんだか……。まるで遠足に行ったガキだな」
「はは! 違いねえ」
 うなずき合うと、周と鐘崎はそっと隣の部屋へと移動したのだった。
 片やマフィアの頭領ファミリー、片や裏の世界でその名を轟かせている硬派極道といわれる男たちも、恋人の前では形なしである。誰もが想像し得ないほどにやさしい眼差しで愛しい者を見つめる二人は、おそらく当人たちでさえこんなにも甘い表情になっているなどとは気づかないのだろうと思うくらいなのだった。
「おや、坊っちゃま方! お早いお戻りで。冰さんと紫月さんはどうされました?」
 隣に行ったと思ったらすぐに帰って来たことに、真田が目を丸くしている。
「二人とも寝ちまってるんでな」
「左様でございますか!」
 残念そうに苦笑した周を見て、真田は瞳に弧を浮かべながら言った。
「では紹興酒でもお持ち致しましょう。ご到着まで坊っちゃま方も少し休まれると良うございますよ」
 ほほほと朗らかに笑っては、甲斐甲斐しく飲み物の準備に席を立つ。
「おい、真田。気遣いも有り難えが、お前も疲れんようにな? 俺らは適当にやってるから、旅に出た時くれえはゆっくりしてくれ」
「ありがとうございます。いつもながらの坊っちゃまのお気遣い、そのお気持ちだけでこの真田は元気をいただけておりますよ」
 そう返しつつも軽快な動作でドリンクを運んでくる。
 和やかな二人の会話に、鐘崎と源次郎も瞳を細めて微笑み合うのだった。
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