極道恋事情

一園木蓮

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香港蜜月

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 その瞬間、冰の双眸にみるみるとうるみ出した涙に、周と父親の隼は慌てたようにして瞳を見開いてしまった。
「おいおい、どうした。泣くヤツがあるか」
 周も一緒になってその顔を覗き込む。
「ご、ごめ……すみませ……! 白龍と初めて会った時のことを思い出してしまって……本当にすみません!」
 そうなのだ。父親の隼の掛けてくれた言葉や仕草が周とそっくりで、感激ともなんとも言いようのない思いが涙という形になってあふれ出してしまったのだ。
 初めて周と出会った幼いあの日、周も同じように屈みながら顔を覗き込んでくれた。大人になって汐留の社を訪れた際にも、『周焔だ。よく訪ねてくれた』と迎え入れてくれたし、『そう畏まることはねえ』と言って緊張を解してくれようとした。今まさにそんな彼とよく似た面立ちの隼にまったく同じ言葉を掛けてもらえたことが、その時の感動と重なって思えたのだ。冰は改めて周という唯一無二の恋人と共にいられる幸せを痛感したのだった。
 取り留めのないながらもその思いを懸命に告げると、隼も周も、そして周りの皆も温かい気持ちに包まれたのだった。
 そんな折だ。
「あなた! もうそろそろいいかしらー?」
 待ち切れないとばかりに柱の影から顔を出したのは、周の継母と兄夫婦だった。どうやら彼らは隼によって少しの間、対面を待つように言われていたらしい。一度に全員で顔を出せば、初めて訪れる冰を緊張させてしまうかも知れない。それでは気の毒かろうと、順々に自己紹介することに決めていたようだ。
「白龍! 会いたかったわ!」
 継母は待ち兼ねたように駆け寄ると、小さな子供を抱きしめるように周へとハグをした。と同時に、
「あなたが冰ね? まあ、なんて可愛いのかしら!」
 間髪入れずに今度は冰を抱きしめて、周にしたのと同じようにハグをしてよこした。
「旦那様がね、いきなり皆で出て行ったら冰が面食らうといけないと言ってね。私たちは待たされていたのよー」
 初対面とは思えない朗らかな歓迎に、冰の緊張も一気に解されていく。
「私は香蘭、焔の母よ。そしてこちらが兄の風とお嫁さんの美紅ちゃん! 皆、あなたに会えるのを楽しみにしていたのよ」
 言葉通りに瞳をキラキラと輝かせて言う。香蘭の名のごとく、見惚れるほどに美しく、そして朗らかな彼女に、冰は周から聞き及んでいたままの印象を受けた。
「はじめまして。雪吹冰です! お目に掛かれて光栄です!」
 隼の時とは違い徐々に緊張も解れてきたし、また、彼女の明るさにつられるようにして今度は冰も上がらずに挨拶をすることができたのだった。
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