極道恋事情

一園木蓮

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香港蜜月

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 午後になって紫月と冰が起きてきたので、周と鐘崎は少し遅めの昼食がてら恋人たちを伴って早速にショップへと向かった。
「どうだ、綺麗な色だろう?」
「カフスボタン……? これ買うのか? つか、お前、カフス持って来てなかったっけ?」
「一応持って来てはいるが、せっかく香港に来たんだ。記念にもう一つくらいどうかと思ってな。こういうのはいくつあってもいいだろ?」
「まあ、そうだけど――」
 目星をつけてあったものを紫月に見せながら反応を見る。気に入った様子ならこれに決めようと思うわけだ。すると、当の紫月は鐘崎が使う物と勘違いしたらしく、マジマジと見つめながら少々首を傾げてよこした。
「確かに綺麗な色だけど、お前がするならもうちっと別のやつの方がいんじゃねえ?」
 ショーケースを覗き込みながら真剣な眼差しで考えているというふうである。鐘崎としては紫月にと思っていたのだが、ここはひとつ自分用のを彼の好みで選ばせるのもいい機会かも知れないと考えた。
 先刻、下見に来た際に真田と源次郎から聞いていた誕生石だという真珠のカフスも見たのだが、鐘崎自身はいまいちピンとこないというか、果たして自分にはどんな石が似合うのかなど、まったくというほどイメージが湧かなかったからだ。紫月に贈ることしか頭になかったというのもあるが、周らもペアで買うらしいし、どうせなら色違いで二人一緒のデザインのものを揃えたいところだ。
「だったら俺にはどんなのが似合うと思う?」
 珍しくもワクワクとしながら鐘崎は訊いた。
「うーん、そうだな……。遼だったらこれかな?」
 紫月が指差したのはブラックダイヤがはまったカフスだった。
「――ブラックダイヤか」
「うん。ブラックダイヤってネーミングからしてカッコいいし、似合うと思うぜ」
 真珠とは真逆の印象のものを選んだ紫月に少々驚いた鐘崎だったが、その理由を聞いて更に驚かされることとなった。
「俺さぁ、遼のイメージっつったら昔っからブラックダイヤなんだよねー」
「そうなのか?」
 長い付き合いの中でも初めて聞くセリフである。鐘崎は俄然興味が湧いてしまった。
「白い方のダイヤモンドってのは輝きを発する方だろ? それとは逆にブラックダイヤは周りの光を吸収する石だって聞いたことがあってさ。それ知った時に遼が頭の中に浮かんだんだよね。色的にも硬質っつーかさ、イメージにピッタシだし」
「俺のイメージは黒ってわけだな?」
「うん、色でいえばそうかな。つかさ……お前がブラックダイヤだとしたら、俺はそれに吸収されてみてえとかって思っちまったのよね。あ! もち、付き合う前の話な」
 いつかアクセサリーをプレゼントするならブラックダイヤを贈りたいと思っていたのだと紫月は言った。
「じゃあ、今はすっかり吸収されてくれた――と思っていいわけだな?」
 あまりにも嬉しいことを聞かされて、鐘崎はこの場で今すぐにでも抱き締めたい衝動に駆られてしまった。
「吸収された……つか、まあ……そういうことになるのかなぁ」
 彼特有の照れ隠しの為か、少々唇を尖らせながらもモジモジと視線を泳がせている。そんな様子も堪らなく愛しくて仕方ないと思う鐘崎だった。
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