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香港蜜月
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こうまで嬉しいことを聞かされれば、もはや迷うわけもない。自分用のはブラックダイヤで即決し、紫月には下見していたアメジストを贈ることにした。
「え? ちょい待ち! まさか……俺のも買ってくれちゃうわけ?」
「ああ。元々お前にと思って、実はさっき氷川と下見に来たんだ」
「マジ? 何でまた急に……」
まさか自分に贈られるとは思っていなかった紫月は驚き顔でいる。そんなの悪いからいいよと言われる前に、鐘崎はさっさと店員に言って二人分のカフスを購入してしまった。
が、買ってしまった後で少しばかり急いてしまったかと気付く。
「……なぁ、紫月――お前はそいつで良かったのか?」
鐘崎にとっては、紫月といえばやはり紫色のイメージが強い。彼も嫌とは言わなかったものの、半ば強引に決めてしまった感もあったので、少々心配になってそう訊いたのだ。
だが、紫月は鐘崎が選んでくれたこと自体に感激したようで、頬を染めながら大事にすると言って喜んでくれている。
「いきなしこんなん買ってもらっちゃって……すっげサプライズってかさ。ビックリしたけど超嬉しいわ!」
今夜すぐに使うわけだが、初めて宝石の類を贈る記念でもあるしと、ギフト用に包んでもらったので、それを大事そうに抱えながら紫月は頬を染めている。こうまで喜んでもらえると、自分たちも周らの組紐ストラップのように、普段使いできる物も贈りたくなってしまう。
「せっかく香港に来た記念だ。他にも揃いで何か買うか。そうだな、普段から身に付けられるようなものがいいが……お前はどんなのがいい?」
紫月にも意見を訊いてみる。
「や、どんなのって……今これ買ってもらったばっかだし、そんな何個もいらねって!」
遠慮するところがまた可愛いわけだが、そうなると事更に是が非でも贈りたくなるのは男心というものだ。
「俺がお前とペアで付けてえんだ。カフスは改まった席用だ。普段使いできるものが欲しいじゃねえか」
「普段使いねえ……。でもほら、これ! 祝言の記念にって指輪ももらってるし……」
「氷川と冰だって揃いのストラップを付けてるだろ? マネするわけじゃねえが、俺らもペアで何か持っていたいと思うわけだ」
「へえ、お前がそんなこと言い出すなんてさ」
紫月は笑うが、鐘崎が是非にと言ってくれるのならやぶさかでないと思うわけか、早速何がいいか思いめぐらせている様子である。
スマートフォンのストラップなら常時身に付けている物という点では最適だが、それだと周らと同じになってしまうし、二番煎じのようで分が悪い気もする。何かもっと気の利いたものはないかと思う鐘崎だったが、その答えは意外にもすぐに見つかった。何故なら紫月から嬉しい提案があったからだ。
「え? ちょい待ち! まさか……俺のも買ってくれちゃうわけ?」
「ああ。元々お前にと思って、実はさっき氷川と下見に来たんだ」
「マジ? 何でまた急に……」
まさか自分に贈られるとは思っていなかった紫月は驚き顔でいる。そんなの悪いからいいよと言われる前に、鐘崎はさっさと店員に言って二人分のカフスを購入してしまった。
が、買ってしまった後で少しばかり急いてしまったかと気付く。
「……なぁ、紫月――お前はそいつで良かったのか?」
鐘崎にとっては、紫月といえばやはり紫色のイメージが強い。彼も嫌とは言わなかったものの、半ば強引に決めてしまった感もあったので、少々心配になってそう訊いたのだ。
だが、紫月は鐘崎が選んでくれたこと自体に感激したようで、頬を染めながら大事にすると言って喜んでくれている。
「いきなしこんなん買ってもらっちゃって……すっげサプライズってかさ。ビックリしたけど超嬉しいわ!」
今夜すぐに使うわけだが、初めて宝石の類を贈る記念でもあるしと、ギフト用に包んでもらったので、それを大事そうに抱えながら紫月は頬を染めている。こうまで喜んでもらえると、自分たちも周らの組紐ストラップのように、普段使いできる物も贈りたくなってしまう。
「せっかく香港に来た記念だ。他にも揃いで何か買うか。そうだな、普段から身に付けられるようなものがいいが……お前はどんなのがいい?」
紫月にも意見を訊いてみる。
「や、どんなのって……今これ買ってもらったばっかだし、そんな何個もいらねって!」
遠慮するところがまた可愛いわけだが、そうなると事更に是が非でも贈りたくなるのは男心というものだ。
「俺がお前とペアで付けてえんだ。カフスは改まった席用だ。普段使いできるものが欲しいじゃねえか」
「普段使いねえ……。でもほら、これ! 祝言の記念にって指輪ももらってるし……」
「氷川と冰だって揃いのストラップを付けてるだろ? マネするわけじゃねえが、俺らもペアで何か持っていたいと思うわけだ」
「へえ、お前がそんなこと言い出すなんてさ」
紫月は笑うが、鐘崎が是非にと言ってくれるのならやぶさかでないと思うわけか、早速何がいいか思いめぐらせている様子である。
スマートフォンのストラップなら常時身に付けている物という点では最適だが、それだと周らと同じになってしまうし、二番煎じのようで分が悪い気もする。何かもっと気の利いたものはないかと思う鐘崎だったが、その答えは意外にもすぐに見つかった。何故なら紫月から嬉しい提案があったからだ。
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