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香港蜜月
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「よし、それじゃまずは石を決めるとするか! 別にアメジストじゃなくてもお前の好きなのにすればいい」
この際、もう周らと同じストラップでも構わない。四人一緒だろうと、それぞれの絆が強い上でのお揃いなのだから、それも幸せというものだ。
「ストラップでもいいし、ブレスレットでも腕時計でも――石も形もお前のいいと思うやつにしろ」
すると、紫月はまたしても鐘崎を喜ばせるようなことをサラッと口にした。
「うーん、そうだな。だったら俺、ブラックダイヤがいいな……。そんでもって、アクセの形はピアスにしてもらって、そこにGPSを仕込んでもらえればいっかな。時計だと外す機会も多いけど、ずっとつけっぱなしにできるっつったらピアスがいいんじゃねえかなって」
それを聞いて、鐘崎はもう我慢できずにその場で紫月を抱き締めてしまった。
「そうか……! そうか! なら、俺はアメジストで指輪でも作るか。石の形を揃えればアクセサリーの種類は別でもいいかも知れねえ」
同じカットの宝石で指輪とピアスのペアというのもまた粋である。これなら周たちとも被らないし、とびきりいい案に辿り着いとばかりに鐘崎は気分も上々、幸せの極みといった表情でいる。
「そうだ、遼! パスワードだけどさ。これも化学式にするんじゃ、さすがに覚えらんねえつか……俺ンはもうちょい簡単なのにしてくれよな?」
「ああ、パスか。そうだな、じゃあお前の好きな言葉でいいぜ?」
確かにあっちもこっちも化学式ではこんがらがりそうだ。紫月用のは分かりやすいものの方が賢明かも知れない。
「好きな言葉かぁ……。マジで俺が決めていいのか?」
「ああ。お前の好きなワードで覚えやすいのにするといい」
「そうだなぁ……じゃあ、アール、ワイ、オーにすっかな」
「またえらく短えな? いくらなんでもそれじゃパスにゃなら……ねえ……」
鐘崎は笑ったが、頭の中で文字列を綴った瞬間に、ハタと瞳を見開いて紫月を見つめてしまった。
そうなのだ。アール、ワイ、オー、つまりは”リョウ”である。
「紫月――お前、それって……」
「いけねえ? だって……俺ン好きな言葉でいいっつったじゃん!」
唇を尖らせながらも、その頬は朱に染まっている。鐘崎はそれこそ本気ですぐにも彼を押し倒してしまいたいくらいの気分にさせられてしまった。
「紫月……まったくお前は……どこまで俺を喜ばせるんだ……!」
「べ、別に……おめえを喜ばせる為じゃねって! 分かりやすい好きなワードっつーから俺は……」
「それが喜ばせるってことだ」
もう嬉しいも嬉しい。嬉しくて踊り出したいくらいなのは確かだが、実際にこれではパスワードとしては短すぎるのも事実である。
「――よし、それじゃこうしよう。その三文字をフォネティックコードにすりゃいいんだ」
「フォネティックコード?」
フォネティックコードというのは、聞き間違いを防ぐ為の通信手段に使われるものである。
「……って、何だそれ?」
「ああ、それはな――」
言い掛けたところで、
「フォネティックコードがどうしたって?」
背後からニュッと周に覗き込まれて、二人は驚いたようにビクりと肩を震わせて振り返った。
この際、もう周らと同じストラップでも構わない。四人一緒だろうと、それぞれの絆が強い上でのお揃いなのだから、それも幸せというものだ。
「ストラップでもいいし、ブレスレットでも腕時計でも――石も形もお前のいいと思うやつにしろ」
すると、紫月はまたしても鐘崎を喜ばせるようなことをサラッと口にした。
「うーん、そうだな。だったら俺、ブラックダイヤがいいな……。そんでもって、アクセの形はピアスにしてもらって、そこにGPSを仕込んでもらえればいっかな。時計だと外す機会も多いけど、ずっとつけっぱなしにできるっつったらピアスがいいんじゃねえかなって」
それを聞いて、鐘崎はもう我慢できずにその場で紫月を抱き締めてしまった。
「そうか……! そうか! なら、俺はアメジストで指輪でも作るか。石の形を揃えればアクセサリーの種類は別でもいいかも知れねえ」
同じカットの宝石で指輪とピアスのペアというのもまた粋である。これなら周たちとも被らないし、とびきりいい案に辿り着いとばかりに鐘崎は気分も上々、幸せの極みといった表情でいる。
「そうだ、遼! パスワードだけどさ。これも化学式にするんじゃ、さすがに覚えらんねえつか……俺ンはもうちょい簡単なのにしてくれよな?」
「ああ、パスか。そうだな、じゃあお前の好きな言葉でいいぜ?」
確かにあっちもこっちも化学式ではこんがらがりそうだ。紫月用のは分かりやすいものの方が賢明かも知れない。
「好きな言葉かぁ……。マジで俺が決めていいのか?」
「ああ。お前の好きなワードで覚えやすいのにするといい」
「そうだなぁ……じゃあ、アール、ワイ、オーにすっかな」
「またえらく短えな? いくらなんでもそれじゃパスにゃなら……ねえ……」
鐘崎は笑ったが、頭の中で文字列を綴った瞬間に、ハタと瞳を見開いて紫月を見つめてしまった。
そうなのだ。アール、ワイ、オー、つまりは”リョウ”である。
「紫月――お前、それって……」
「いけねえ? だって……俺ン好きな言葉でいいっつったじゃん!」
唇を尖らせながらも、その頬は朱に染まっている。鐘崎はそれこそ本気ですぐにも彼を押し倒してしまいたいくらいの気分にさせられてしまった。
「紫月……まったくお前は……どこまで俺を喜ばせるんだ……!」
「べ、別に……おめえを喜ばせる為じゃねって! 分かりやすい好きなワードっつーから俺は……」
「それが喜ばせるってことだ」
もう嬉しいも嬉しい。嬉しくて踊り出したいくらいなのは確かだが、実際にこれではパスワードとしては短すぎるのも事実である。
「――よし、それじゃこうしよう。その三文字をフォネティックコードにすりゃいいんだ」
「フォネティックコード?」
フォネティックコードというのは、聞き間違いを防ぐ為の通信手段に使われるものである。
「……って、何だそれ?」
「ああ、それはな――」
言い掛けたところで、
「フォネティックコードがどうしたって?」
背後からニュッと周に覗き込まれて、二人は驚いたようにビクりと肩を震わせて振り返った。
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