極道恋事情

一園木蓮

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香港蜜月

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「うはぁ……! レイ・ヒイラギじゃん! 本物かよ……! すっげえ」
「有名なモデルさんですよね? めちゃくちゃ綺麗な人だなぁ」
 はしゃぎ合う二人を横目に周が言った。
「レイ・ヒイラギな。親父が学生時代に留学してた先で知り合って以来の友人だそうだぞ? 春節のカジノイベントには毎年顔を出してくれているようだ」
「そうなんだー。でもホント、綺麗っていうか、さすがにトップモデルさんだけあってオーラがすごいね! それに、一緒にいるのは息子さんっていう話だけど、彼もモデルさんなのかな? 二人共、人形のように綺麗だー……!」
「ああ、息子の倫周はレイのヘアメイクを専門で担当しているアーティストだそうだが、なかなかに腕がいいらしいな」
「ええ、そうなの? モデルさんじゃないんだ? お父さんのヘアメイクをしてるなんてすごいね! 立派な方なんだねぇ」
 冰がつくづく感心しているが、周にしてみればそんな素直な彼が、またいっそう愛しく思えるわけだった。

 その後、一通りのオープニングセレモニーが済むと、周らは会場をグルリと見物して歩いた。鐘崎と紫月はゲームに参加しに行ったが、周にとっては経営者側であるし、冰にしてみても少し前まではディーラーとして客を迎える立場にあったので、ゲームを楽しむというよりは別の角度からの興味が湧いてしまう。それでもスロットゲームなどをいくつか楽しんで回った後、腹ごしらえがてらファミリールームへと戻ってきた。
「階下はすごい熱気だったねー! ここから皆の様子を眺めるのもまたオツかも!」
「そうだな。とりあえず何か食うか」
 ルームにはカジノのレストランから専任のシェフとバーテンダーが出向いてくれていて、その場でローストビーフを切り分けてくれたり、好きなカクテルを作ってくれたりと至れり尽くせりである。二人が食事を取っていると、父親の隼と兄の風も揃ってルームへと戻って来た。
「おう、二人共もう戻っていたのか。カジノは楽しめたか?」
「ええ、お陰様で。すごい熱気なんで、一先ず腹ごしらえです」
 周は父と兄の為に席をひとつずらして座り直しながら言った。
「遼二と紫月はまだ階下か?」
「ええ、奴らはポーカーのテーブルに張り付いてましたよ」
「そうか。勝ててるといいがな」
「さっきチラっと見た様子じゃ、なかなかにいい塩梅のようでしたよ」
「そりゃ良かった。そういえば冰はディーラーをしていたそうだな?」
 父の隼に訊かれて、冰はコクリとうなずいた。
「はい。育ての親がディーラーだったもので、幼い頃からいろいろと教えてもらったんです」
 両親を失った冰が、大人になってから一人で生きていけるようにと、黄老人が教え込んでくれた技である。例えその道に進まずとも覚えておいて損はないということで、手取り足取り老人の持てる技をすべて仕込んでくれたというわけだ。
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