極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
142 / 1,212
香港蜜月

36

しおりを挟む
「まあ、乳を揉んだり吸ったりしたことがねえとは言わねえが、俺にとってはお前がこの世で唯一無二ってことだ」
「え……はぁ?」

 って――それ、ホントはどっちなんだって!

 紫月は苦虫を噛み潰したような表情で、目の前の男を見つめてしまった。
「正直なところ記憶にはねえが、赤ん坊の時分にはまだお袋も家を出て行く前だったろうしな?」
 ニヤッと不敵に微笑まれた次の瞬間には作り物の豊満な胸を揉みしだかれて、紫月は『ひ……ッ』と声にならない声を上げさせられてしまった。
「せっかくだ。今夜はそのまま抱いてやる」
 余裕綽々にベッドへと押し倒されて、首筋から鎖骨へと色香際立つ濃厚な口付けの嵐にすぐさま背筋がゾワりと栗毛立つ。
「ちょ……ッ! 待て待て待て! それってまさか……赤ん坊の時に母ちゃんのオッパイを吸ったとかいう冗談かよ……」
「まあな。産まれてすぐの頃はまだお袋も家にいた。乳くらいは飲んだろうさ」
「あ……? はぁッ!?」
 巧みな仕草で背中のファスナーを下ろされて、あれよという間に肩先から胸元までがあらわにされる。と同時に、肝心なことは上手くはぐらかされたようだ。結局、どっちなのかうやむやのままで、すっかり抱く体勢に入っているのが何とも憎らしい。しかも女物のドレスを脱がしていく仕草も手慣れていて迷いがない。
「……って、おい、遼……ッ! なし崩しかよッ! 結局上手くごまかしやがる気……だな!」
「ごまかすとはご挨拶だな。お前の方こそ相変わらずに口が悪い」
 そんな口は塞ぐに限るとばかりに、息もままならないほどに歯列を割り忍び込んできた舌先に口中を掻き回されて、
「……ッ、遼……!」
 抵抗虚しくすぐに欲情の海へと引きずり込まれてしまう。
「バ……ッカやろ……、ンなギュウギュウすんなって……の! せっかくの服……が皺に……ッ」
「心配するな。丁寧に扱うさ」
 そう言いつつも遠慮なしに大きな掌で乳をワシッと揉まれて、紫月は大焦りで視線を泳がせた。
「……って、遼! 待……ッ、乳取れる……!」
「ああ、お前に乳は必要ねえ。俺には豊満な乳房より、この可愛い乳首だけで充分だ」
 卑猥ともいえる台詞を恥ずかしげもなく、こうも堂々と言われると、逆にひどく恥ずかしくなってしまう。と同時にゾワゾワと欲情の波がつま先から頭のてっぺんまでを電流のように貫いた。
「てめ、よくそんな……スカしたツラで、ンな、やーらしい……台詞言える……ッ」
「いやらしい俺は嫌いか?」
 すっかりとドレスを剥ぎ取られ、女物の下着を盛り上げている欲情の印を尖った舌で突かれて、思わず淫らな嬌声が上がってしまう。
「い……ッ、あ……遼!」
「ほう、下着まで女物とはな? しかもガーターまで付いていやがる。あの緊急時に、こんなもん一体どこで調達したんだか――随分とまた凝ったもんだ」
 その”ガーター部分”を器用に弄びながら、上目遣いの瞳が弧を描いている。整いすぎた顔立ちがまるで捕食者のような獣を連想させるようで、ふと――めちゃくちゃに奪われてみたいような欲情が突き上げて、紫月は焦った。
「や……ッ、だって……レイ・ヒイラギの息子が……これ穿けっつーから! あ……、クッ……」
 好きで穿いたわけじゃない。これをどうぞと出されたから従ったまでのことだ。
「てめ、勘違いすんな……よ! 別に俺の趣味ってわけじゃ……ねし」
「そう照れるな。まあドレスの下がブリーフじゃ、確かに味気ねえってもんだ。レイさんの息子もいい仕事をする」
 不敵に笑いながら細く華奢な下着の脇ひもの間から指を滑り込ませて、一等敏感な部分を指の腹で擦り上げられる。
「あ……ッつ! 遼……! こ……ッの、嘘……つ」
 焦らすように太腿のやわらかい部分を吸われ、赤いキスマークを方々に散らされていく。慣れた仕草でショーツまで剥ぎ取られ、みるみると頬が染まった。

(やっぱ、てめえ……女を抱いたことないなんて……嘘だろが!)

「この……嘘つき……! ほ……ッんと、しょーもねえ極道……」
「誰が嘘つきだ」
「お……前が……! 俺っきゃ……知らね……とか、信じらんね……、はぁ……ッ」
「――どうとでも。だが紫月、これだけは嘘じゃねえ。正真正銘、今も昔も、俺が心底愛してんのはお前だけだ。未来永劫、お前だけだと誓う」
「……ッ、んあっ……! それ……全っ然、答えンなって……ねー!」
 嘘か誠か、そんなことはもうどうでもいいほどに乱されながら、紫月は愛する男の腕の中へと堕とされていったのだった。



◇    ◇    ◇


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...