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香港蜜月
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その後、二日ほどを観光などで堪能した一同は、周の父親らファミリーに見送られて帰国の途についた。
帰りも行きと同じく周のプライベートジェットで悠々、快適な旅だ。
カジノイベントから帰った夜、ひょんなことから一悶着あった鐘崎と紫月の”初体験騒動”も結局うやむやなまま欲情を貪り合って終わってしまったのだが、案外脳天気な性質の紫月は、その件についてもすぐにあっけらかんと忘れてしまっていた。鐘崎が自分を好いてくれていて、自分も鐘崎を大切に想っている。それ以上でも以下でもない。要は、今が幸せならばそれでいいと思うわけなのだ。
すっかりいつも通り熱々な二人は、周と冰らと共に地元の料理や土産店などを観光して歩き、充実した香港での休暇を楽しんだのだった。
「うん! ハプニングもあったけど、今回の旅はホンっト楽しかったよなぁ! 本場の中華料理もめちゃめちゃ美味かったし、それに冰君が買ってきてくれた月餅も最高だったしさ!」
黄老人が好きだったという店で冰が買ってくれた月餅を気に入った紫月は、鐘崎組の若い衆らや実家への土産にと言って店を教えてもらい、たんまりと買い込んできたほどだった。
「俺は乾物を買ってきました! ウチで待ってくれてる調理場やハウスキーピングの皆さんにと思って。それに李さんと劉さんたちも本国のお料理は懐かしいでしょうし、お茶もいろんな種類を!」
そうなのだ。周が不在の間、社の方は李たちに任せてきたので、お土産は多種多様に選んできた冰である。
「次は二ヶ月後かぁ。氷川の父ちゃんがカジノイベントのやり直しにも是非遊びに来てくれって言ってくれたからさ!」
「そうですね。今から楽しみです!」
「今度はカジノ船でやるって言ってたもんな! クルーズもできるし待ち遠しいな!」
紫月と冰がそんな話で盛り上がっていると、真田がお茶と菓子を持ってやって来た。
「お二方共、お茶をお淹れしましたぞ」
「わぁ、真田さん! ありがとうございます!」
「うは! ケーキだ!」
「ええ、先程空港で選んで参りました。ここ数日ケーキは召し上がっていらっしゃらなかったでしょう? そろそろお懐かしい頃かと思いまして」
さすがの気遣いに礼を述べながらも、二人共子供のようにはしゃぐ紫月と冰だった。
「そういえば遼と氷川はまた経済談義でもしてんのかな?」
先程から姿が見えないことに気がついて、紫月が尋ねると、ニッコリとウィンクを飛ばしながら真田が言った。
「坊っちゃま方はご帰国後のお仕事のご準備とのことで、お二人ご一緒にパソコンを抱えてプライベートリビングにいらっしゃいますよ」
考えてみれば、約一週間ほど仕事を留守にしていたわけだ。メールのチェックやら帰ってからの準備など、大黒柱たちには気掛かりも多いのだろう。
「そっか。じゃ、労いがてら茶でも届けてやるか!」
「そうですね!」
真田からティーセットを受け取って、紫月と冰は周らのいるリビングへと向かった。
ところがだ。
「ありゃ、寝ちまってるじゃねえの」
「あ、ホントだ」
テーブルの上にパソコンを広げたままで、二人共に寝息を立てている。
ソファは悠々ベッドにもなるくらい大きいので、周はその背もたれに深く身体を預けたまま、鐘崎はすっかり大の字になって眠ってしまっていた。
帰りも行きと同じく周のプライベートジェットで悠々、快適な旅だ。
カジノイベントから帰った夜、ひょんなことから一悶着あった鐘崎と紫月の”初体験騒動”も結局うやむやなまま欲情を貪り合って終わってしまったのだが、案外脳天気な性質の紫月は、その件についてもすぐにあっけらかんと忘れてしまっていた。鐘崎が自分を好いてくれていて、自分も鐘崎を大切に想っている。それ以上でも以下でもない。要は、今が幸せならばそれでいいと思うわけなのだ。
すっかりいつも通り熱々な二人は、周と冰らと共に地元の料理や土産店などを観光して歩き、充実した香港での休暇を楽しんだのだった。
「うん! ハプニングもあったけど、今回の旅はホンっト楽しかったよなぁ! 本場の中華料理もめちゃめちゃ美味かったし、それに冰君が買ってきてくれた月餅も最高だったしさ!」
黄老人が好きだったという店で冰が買ってくれた月餅を気に入った紫月は、鐘崎組の若い衆らや実家への土産にと言って店を教えてもらい、たんまりと買い込んできたほどだった。
「俺は乾物を買ってきました! ウチで待ってくれてる調理場やハウスキーピングの皆さんにと思って。それに李さんと劉さんたちも本国のお料理は懐かしいでしょうし、お茶もいろんな種類を!」
そうなのだ。周が不在の間、社の方は李たちに任せてきたので、お土産は多種多様に選んできた冰である。
「次は二ヶ月後かぁ。氷川の父ちゃんがカジノイベントのやり直しにも是非遊びに来てくれって言ってくれたからさ!」
「そうですね。今から楽しみです!」
「今度はカジノ船でやるって言ってたもんな! クルーズもできるし待ち遠しいな!」
紫月と冰がそんな話で盛り上がっていると、真田がお茶と菓子を持ってやって来た。
「お二方共、お茶をお淹れしましたぞ」
「わぁ、真田さん! ありがとうございます!」
「うは! ケーキだ!」
「ええ、先程空港で選んで参りました。ここ数日ケーキは召し上がっていらっしゃらなかったでしょう? そろそろお懐かしい頃かと思いまして」
さすがの気遣いに礼を述べながらも、二人共子供のようにはしゃぐ紫月と冰だった。
「そういえば遼と氷川はまた経済談義でもしてんのかな?」
先程から姿が見えないことに気がついて、紫月が尋ねると、ニッコリとウィンクを飛ばしながら真田が言った。
「坊っちゃま方はご帰国後のお仕事のご準備とのことで、お二人ご一緒にパソコンを抱えてプライベートリビングにいらっしゃいますよ」
考えてみれば、約一週間ほど仕事を留守にしていたわけだ。メールのチェックやら帰ってからの準備など、大黒柱たちには気掛かりも多いのだろう。
「そっか。じゃ、労いがてら茶でも届けてやるか!」
「そうですね!」
真田からティーセットを受け取って、紫月と冰は周らのいるリビングへと向かった。
ところがだ。
「ありゃ、寝ちまってるじゃねえの」
「あ、ホントだ」
テーブルの上にパソコンを広げたままで、二人共に寝息を立てている。
ソファは悠々ベッドにもなるくらい大きいので、周はその背もたれに深く身体を預けたまま、鐘崎はすっかり大の字になって眠ってしまっていた。
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