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狙われた恋人
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ご存じの通り、周の社屋はツインタワーになっている。メインのアイス・カンパニーが入っているのは第一タワーで、周の住居部分と系列会社が占める第二タワーを繋ぐ連絡通路が最上階にある。普段はそこを通って出勤しているわけだが、その最上階から直接車に乗り込める駐車場は第二タワーの方に設置されていた。つまり、住居の前を通って向かうわけだ。
「念の為、真田にも伝えておこう。自宅に何らかの連絡が入るかも知れねえ」
険しい表情で連絡通路を急いでいると、向こうからその真田が朗らかな様子でやってくるのが見えた。まだ彼は冰が連れ去られたことを知らないので、それも致し方ない。
「坊ちゃま、ちょうど良うございました。只今お知らせに上がろうと――。鐘崎様と一之宮様がお見えですぞ」
その報告に、周はハッと瞳を瞬かせた。
「カネが来てるのか!」
「ええ、例のケーキをお土産に持って来てくださいましてな」
「そいつぁ、有り難え!」
周は言うや否や、邸へと向かって通路を走り出した。
「坊ちゃまー……! あら、あらあら……李さんも劉さんも慌てて、どうなされましたのです?」
瞳をまん丸くしながら驚いている真田に、李がことの次第を話して聞かせた。
一方、周の方では、偶然にも訪ねてくれた鐘崎と紫月に事情を説明すると、彼らもすぐに助力すると言ってくれた。
「氷川、ここ数日の監視カメラの映像をもらえるか? 奴らが冰の顔を知っているとすると、事前に下調べに来ている可能性が高い。それを親父と源さんに送って敵を突き止めてもらう。俺たちはすぐに冰を連れ去った車を追おう」
さすがに鐘崎の考えることは俊敏だ。裏の世界で右に出る者はいないという僚一の息子だけあるというものだ。周は早速二人の側近たちに手配するよう伝えながら、リアルタイムの動向を探っていた。
「現在地はどうだ」
「高速を羽田方面に向かっています。やはりこのまま海外へ飛ぶ気でしょうか」
「念の為、もう一度香港の兄貴にも事情を伝えよう。香港行きが本当なら空港で押さえてもらえる」
その会話を横でうかがっていた鐘崎は、源次郎らに監視カメラの映像を送り終えると、自らの見解を周へと告げた。
「氷川――こうは考えられねえか? 冰をさらった奴らの目的だが、ディーラーの手腕が欲しかったとしたらどうだ」
「ディーラーの手腕だと?」
「この前の春節イベントに来ていた客の中にはカジノ関係の人間もいただろうからな。その時に目を付けられたと考えれば、今回の拉致にも合点がいく。奴らの目的はイカサマ騒ぎを見事に破った冰の腕を欲しがってのことかも知れねえと思ってな」
鐘崎の推測に、周はハッと瞳を見開くと、
「招待客と当日の来場者リストを至急親父に確認する――」
再び、すぐさま香港へと連絡を入れたのだった。
「念の為、真田にも伝えておこう。自宅に何らかの連絡が入るかも知れねえ」
険しい表情で連絡通路を急いでいると、向こうからその真田が朗らかな様子でやってくるのが見えた。まだ彼は冰が連れ去られたことを知らないので、それも致し方ない。
「坊ちゃま、ちょうど良うございました。只今お知らせに上がろうと――。鐘崎様と一之宮様がお見えですぞ」
その報告に、周はハッと瞳を瞬かせた。
「カネが来てるのか!」
「ええ、例のケーキをお土産に持って来てくださいましてな」
「そいつぁ、有り難え!」
周は言うや否や、邸へと向かって通路を走り出した。
「坊ちゃまー……! あら、あらあら……李さんも劉さんも慌てて、どうなされましたのです?」
瞳をまん丸くしながら驚いている真田に、李がことの次第を話して聞かせた。
一方、周の方では、偶然にも訪ねてくれた鐘崎と紫月に事情を説明すると、彼らもすぐに助力すると言ってくれた。
「氷川、ここ数日の監視カメラの映像をもらえるか? 奴らが冰の顔を知っているとすると、事前に下調べに来ている可能性が高い。それを親父と源さんに送って敵を突き止めてもらう。俺たちはすぐに冰を連れ去った車を追おう」
さすがに鐘崎の考えることは俊敏だ。裏の世界で右に出る者はいないという僚一の息子だけあるというものだ。周は早速二人の側近たちに手配するよう伝えながら、リアルタイムの動向を探っていた。
「現在地はどうだ」
「高速を羽田方面に向かっています。やはりこのまま海外へ飛ぶ気でしょうか」
「念の為、もう一度香港の兄貴にも事情を伝えよう。香港行きが本当なら空港で押さえてもらえる」
その会話を横でうかがっていた鐘崎は、源次郎らに監視カメラの映像を送り終えると、自らの見解を周へと告げた。
「氷川――こうは考えられねえか? 冰をさらった奴らの目的だが、ディーラーの手腕が欲しかったとしたらどうだ」
「ディーラーの手腕だと?」
「この前の春節イベントに来ていた客の中にはカジノ関係の人間もいただろうからな。その時に目を付けられたと考えれば、今回の拉致にも合点がいく。奴らの目的はイカサマ騒ぎを見事に破った冰の腕を欲しがってのことかも知れねえと思ってな」
鐘崎の推測に、周はハッと瞳を見開くと、
「招待客と当日の来場者リストを至急親父に確認する――」
再び、すぐさま香港へと連絡を入れたのだった。
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