極道恋事情

一園木蓮

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狙われた恋人

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 周と李が一旦社長室へと戻ると、劉が既に監視カメラの映像を洗い出して待っていた。
「現場の様子が写っているカメラが二台ほど見つかりました。冰さんは隣のビルから出てきたところで奴らに声を掛けられたようです」
 確かに隣のツインタワーの方から歩いてきた冰が確認できる。いつものように関連会社へ資料を届けに行った帰りだろう。矢部清美が写した画像と同じ車が、ツインタワーの間にある小道に停められているのも確認できた。小道といっても車両も通行可能な一般的な道路である。ただ、景観に配慮されている為、歩道や街路樹などが洒落た造りになっているというだけである。
「相手の男は三人だな。車のナンバーから持ち主は割り出せたか?」
 周が訊くと、それを調べていた劉が少々苦い声で答えた。
「どうやら偽造ナンバーのようです。照会しましたが、実際にこのナンバーに当たる車は登録されておりません」
 ということは、本物に似せて作ったプレートを上から貼り付けただけなのだろう。
「GPSの方はどうだ」
「はい。冰さんのスマートフォンは反応しませんが、老板がお贈りになった腕時計に付いている方は確認できています」
 腕時計というのは、つい先日、春節で香港に帰った際に周が贈った宝石付きのものだ。鐘崎が紫月にGPS付きのピアスを贈ると聞いて、周もそれを羨ましく思いマネしたわけだが、まさかこんなにすぐに役立つことになろうとは思わなかった。
 案の定、スマートフォンの方は反応しないということだから、敵が冰から取り上げて電源を落としたのだろう。相手も素人ではなさそうだ。
「現在地は?」
「つい先程、高速道路に乗ったのを確認しました。西へ向かっているようです」
「西か――。羽田かも知れんな。中国語を喋っていたというし、もしかしたら国外へ連れ出す気なのかも知れん」
「国外というと……香港でしょうか? ですが、何故冰さんを……」
「分からん。本来の目的は俺で、冰はおびき出す為の人質か、餌に使われたのかも知れねえが――」
 だとしたら、こちらの正体が相手にも分かっているということだろう。つまりはマフィア絡みということだ。
「香港の親父に連絡を入れる。向こうでも既に何か起こっているかも知れねえ」
 周は言うと、すぐさま父の隼と兄の風に電話を入れた。ところが、ファミリーの方には特に変わった様子はないという。
「俺が目当てじゃねえってのか――」
「では、冰さんご本人が目的だと――?」
「分からねえ。とにかく腕時計のGPSが敵に気付かれる前に突き止める! すぐに追い掛けるぞ!」
「かしこまりました。ではお車を回します。念の為、装備なども一通り用意して参ります」
 つまり、銃器類や防弾機能の付いたベストなどを装着していくということだ。
 白昼堂々、手際のよく拉致を成功させている点から見ても、相手も裏社会に生きる人間かも知れないからだ。
 冰が連れ去られてから、未だに何の連絡もないということも気に掛かる。社長室と秘書室の内線電話を携帯に転送させると、周は李と劉を伴って、ペントハウスから直に階下へと降りられる駐車場へと向かった。
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