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狙われた恋人
42(狙われた恋人 完結)
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「あ、ううん。親しいって言っていいのか分からないけど。あの後、偶然社内で彼女に会ってさ。少し話す機会があったんだ。ちょうど白龍が関西に出張に行ってた時だったかな。初めて会った時は悪いことしたって謝ってくれたり、この会社で受付嬢をするのが夢だったってこととかいろいろ話してくれたんだよ」
その時のことは冰にとっても忘れられない出来事のひとつだった。というのも、当時はまだ周と気持ちを打ち明け合う前で、しかも周に恋人がいるのではないかと勘違いをしていた最中だったので、一人で悶々と妄想を巡らせては落ち込んでいた時期だったからだ。そんな時に偶然彼女と出くわして、いろいろと話せたことがいい気分転換になったのだ。
「ほう? そんなことがあったのか」
「その時は彼女の名前も聞かないままだったんだけど、矢部さんっていうんだね。俺の顔覚えててくれたんだー」
冰はうれしそうに言うと、早速彼女に会いにロビーへと向かった。
「え? 白龍も来てくれるの?」
当然のようにして周と、しかも李まで一緒についてエレベーターに乗り込んで来たので、冰は目を丸くしてしまった。
「俺からも改めて礼を言いたいと思ってな」
何といっても、今回迅速に対応できたのは彼女がすぐに知らせてくれたお陰だからだ。
「私も彼女を営業部に飛ばした張本人ですから。詫びも兼ねて今後もよろしくと伝えたいと思います」
少し照れ臭そうにしながら李もそう言った。
「そうですか。きっと彼女も喜んでくれると思います!」
明るく微笑んだ冰を見つめながら、
「まあ、俺はお前の旦那でもあるわけだからな。嫁が世話になった礼を言うのは当然だろう」
周はニッと不敵な笑みを瞬かせた。
「ん、もう! 白龍ったらさ……ここ、一応社内なんだから……!」
如何にエレベーターの中に三人きりとはいえ、どこで誰が聞いているか分からないのだからと言いたげな冰を横目に、またしても周は不敵に笑った。
「おお、そうだ。ここは社内だからな。お前こそ白龍じゃなく氷川社長と呼ぶべきじゃねえのか?」
「……あ!」
そうだったというふうに、慌てて口元を手で押さえた冰に、
「分かればよろしい。な、奥さん?」
ギュッと肩を抱き寄せては得意げに笑った周に、
「ん、もう! 全然分かってないじゃん!」
からかわれているだけだと思いつつも、頬を膨らませてプイとソッポを向く。だが、真っ赤に染まった頬の色は隠しようもなく――。
じゃれ合う二人を眺めながら、温かく平穏な日常が戻ってきたことに心から安堵する李だった。
狙われた恋人 - FIN -
その時のことは冰にとっても忘れられない出来事のひとつだった。というのも、当時はまだ周と気持ちを打ち明け合う前で、しかも周に恋人がいるのではないかと勘違いをしていた最中だったので、一人で悶々と妄想を巡らせては落ち込んでいた時期だったからだ。そんな時に偶然彼女と出くわして、いろいろと話せたことがいい気分転換になったのだ。
「ほう? そんなことがあったのか」
「その時は彼女の名前も聞かないままだったんだけど、矢部さんっていうんだね。俺の顔覚えててくれたんだー」
冰はうれしそうに言うと、早速彼女に会いにロビーへと向かった。
「え? 白龍も来てくれるの?」
当然のようにして周と、しかも李まで一緒についてエレベーターに乗り込んで来たので、冰は目を丸くしてしまった。
「俺からも改めて礼を言いたいと思ってな」
何といっても、今回迅速に対応できたのは彼女がすぐに知らせてくれたお陰だからだ。
「私も彼女を営業部に飛ばした張本人ですから。詫びも兼ねて今後もよろしくと伝えたいと思います」
少し照れ臭そうにしながら李もそう言った。
「そうですか。きっと彼女も喜んでくれると思います!」
明るく微笑んだ冰を見つめながら、
「まあ、俺はお前の旦那でもあるわけだからな。嫁が世話になった礼を言うのは当然だろう」
周はニッと不敵な笑みを瞬かせた。
「ん、もう! 白龍ったらさ……ここ、一応社内なんだから……!」
如何にエレベーターの中に三人きりとはいえ、どこで誰が聞いているか分からないのだからと言いたげな冰を横目に、またしても周は不敵に笑った。
「おお、そうだ。ここは社内だからな。お前こそ白龍じゃなく氷川社長と呼ぶべきじゃねえのか?」
「……あ!」
そうだったというふうに、慌てて口元を手で押さえた冰に、
「分かればよろしい。な、奥さん?」
ギュッと肩を抱き寄せては得意げに笑った周に、
「ん、もう! 全然分かってないじゃん!」
からかわれているだけだと思いつつも、頬を膨らませてプイとソッポを向く。だが、真っ赤に染まった頬の色は隠しようもなく――。
じゃれ合う二人を眺めながら、温かく平穏な日常が戻ってきたことに心から安堵する李だった。
狙われた恋人 - FIN -
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