極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
194 / 1,212
ワンコ輪舞曲

6(ワンコ輪舞曲 完結)

しおりを挟む
「そうだよ。すっげ頼りになる番犬なんだぜ! いつも中庭で放し飼いしてんだ」
 紫月が説明しながら庭へと降りて犬たちの頭を撫でると、彼らはちぎれんばかりに尻尾を振って『ウォン!』と凛々しい声で応えてきた。
「すごい! 皆カッコいいねー! 俺が撫でても大丈夫かな……?」
 体格のいいシェパードたちを見つめながら、興味はあれども恐る恐る尋ねる冰に、
「大丈夫だよ! 皆、こう見えて賢いヤツらだから。冰君も降りて来いよ!」
 紫月に手招きされて冰が縁側から降りると、犬たちにも彼が主人の大事な客だと分かるわけか、野太い声から『クゥーン』という甘え声になって、礼儀正しくお座りで迎えてくれた。
「うっわ、可愛いー! 本当に皆、ハンサムさん揃いだねぇ」
 静かに並んで冰に頭を撫でてもらえるのをちゃんと待っている。
「よし、そんじゃ中庭に出て皆で記念撮影でもすっか!」
 鐘崎の意外な提案に、周は思い切り眉根を寄せてしまった。
「おいおい……庭に出んのか? この格好でかよ」
「うはぁ、うれしいなぁ! 白龍も早くおいでよ! 今日はお天気もいいし、気持ちいいよー!」
「お! いいねえ! 記念撮影するべ、するべ!」
 周以外の三人は大乗り気である。
「なあ、おい、カネよぉ……。若い衆もいんだろうが。てめ、そんなカッコで恥ずかしくねえのか……って、おい! 聞いてねっだろ!」
 鐘崎は早速どこからかカメラを持ち出してきて庭へと降りていく。
「おい、誰かいるかー? ちょっとシャッター押してくれねえか?」
 しかも自ら若い衆を呼び付けているではないか。
「……ったはぁ……。ダメだ、こりゃ」
 もう何を言っても通じそうもない。周は頭を抱えながら、深い溜め息を連発してしまった。
「わ、若……ッ!?」
「ど、どうされたんスか……その格好……」
 案の定か、呼び付けられて飛んで来た若い衆らが目を丸くしてあんぐり顔だ。だが、鐘崎は物怖じすることなく、鼻息を荒くしながら両手を腰に当てて『ウンウン』とうなずいてみせた。
「これは大事な国際交流の一環だ」
「……こ、国際交流っスか……!?」
「おう! どうせこの写真を張に送ってやるんだろ? そいつを見りゃ、着ぐるみを贈った張も喜ぶだろうが」
 確かに一理ある。
 張がこの写真を見れば、贈って良かったと喜んでくれるだろう。果ては、互いの間の絆と信頼が強固となり、任されたカジノ経営にもより一層精を出すというものだ。
 周はそんな鐘崎を見つめながら、
「は……、器がでけえってのか。てめえにゃ負けるぜ」
 苦笑しながらも、こんなふうにさりげなくもこちらの立場まで考えてくれる親友に、堪らなく誇らしい気持ちがあふれ出すのだった。
「よっしゃ! それじゃ皆で」

「はい、チーズ!」

 本物のシェパードたちに囲まれながら、紫月と冰はとびきりの笑顔で、鐘崎は自らも飼い犬に負けじとシェパードらしく得意顔で、そして周は片眉をしかめながらも隠しきれない照れに頬を染めての直立不動、人形状態の顔が何とも微笑ましい。
 和気藹々、最愛の恋人と最高の仲間たちの楽しげな声に囲まれながら、賑やかしい春の午後を満喫した一同であった。

 その後、写真を受け取ったマカオの張が喜んだのは言うまでもない。それと同時に、一緒に写っている鐘崎家のシェパードたちを冰が飼っている犬だと思ったらしい張から、今度は正真正銘犬用の服がたんまりと送られてきたのはご愛嬌である。
 一方、鐘崎組の若い衆らの間では、『ウチの若はめちゃくちゃグローバルなお人だ』という噂が広まり、これまでにも増して若頭に対する憧れと尊敬の視線が集まるようになったとか、ならなかったとか。
 とにもかくにも、幸福な花吹雪舞う春爛漫であった。

ワンコ輪舞曲 - FIN -
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...