極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
201 / 1,212
恋敵

7

しおりを挟む
「あんたの気持ちも分からねえじゃねえけどよ、周焔ってのはそんな……服とか部屋とかの外観だけで人を見るヤツじゃねえと思うけどな」
 紫月に言われて女は顔をしかめた。
「男のあなたには分からないわよ! 誰だって綺麗な女に興味を引かれるでしょうし、特に彼は容姿もお金も何でも揃ってる一流の男だもの。普通の女じゃ相手にしてくれっこないわ」
「そりゃ、あんたの思い込みだろ?」
「それなのに……! こんな子供みたいな若い……しかも男と付き合ってるだなんて信じられない! あなた、いったいどうやって焔に取り入ったのよ!」
 今度は矛先を冰に向ける。
「冰君は別に取り入ったわけじゃねえよ。ま、とにかくいつまでここに居たって仕方ねえ。車を拾って帰った方が身の為だな」
 確かにその通りだが、冰にはこの女のことが気に掛かってもいて、気付けば少々節介なことを口走ってしまっていた。
「あの……さっきの男の人たちはあなたのご自宅もご存知なんじゃないですか? よろしければ一緒にウチにいらっしゃいませんか?」
 このまま彼女を一人で帰してまた襲われたらと思うと、ついそんな心配に駆られてしまったからだ。それに、この女のことを周に黙っているわけにもいかないし、それならばいっそこのまま一緒に連れて帰るのがいいのではないかと思ったのだ。
 ところが女の方は意外にも躊躇しているようだった。
「嫌……よ。そんなの……」
 冰に世話になることがプライドに障るのだろうかと思えたが、そうではなかったらしい。
「借金取りに追われてるなんてことが焔に知れたら……恥ずかしくて生きていけない……。絶対に嫌よ……!」
 だが、冰が言うようにこのまま自宅に帰ったとて、すぐに彼らに捕まってしまうだろう。それはそれで困る。どうしていいか分からないとばかりに困惑状態の女に、冰は言った。
「さっきの男たちのことは黙っていると約束します。俺たちからは何も言いませんから。とにかくまた彼らが追って来る前にここを去った方が無難だと思います」
「でも……」
「とりあえずウチに行けば周にも会えますから。後のことはそれから考えましょう」
 冰の言葉に紫月もうなずいた。
「冰君の言う通りだ。いつまでここでグズグズしてたら危険だ。とりあえず車を拾おう」
 川沿いの遊歩道から車道を指差しながらそう促す。女は未だに迷っている様子だったが、二人にそう言われて渋々一歩を踏み出した時だった。
 突如、植え込みの陰から現れた男が紫月の背後から襲い掛かり、スタンガンを浴びせたのだ。
「……ッぐ」
「紫月さんッ!?」
 冰が紫月を振り返った時は、既に彼が意識を失って地面へと倒れ込む瞬間だった。と同時に自身の背中にも鈍い衝撃を感じた時には、冰もまたスタンガンの餌食となっていた。



◇    ◇    ◇


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...