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恋敵
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一方、周の方は接待の会食が済み、鐘崎や李らと共に汐留の邸に戻ってきていた。時刻は既に夜の十一時になろうかという頃だ。帰りを待っていた真田が、少々心配そうな面持ちで出迎えた。
「お帰りなさいませ、坊っちゃま方」
周と鐘崎の姿を見ながらも、何やら所在なさげにキョロキョロとしている。
「あの……冰さんと紫月さんはご一緒ではないのですか?」
二人が周たちとは別々に夕飯に出掛けたことは真田も知っていたのだが、当然周たちよりも先に帰って来ると思っていた為、気になっていたのだ。もしかしたら途中で周らと合流して、一緒に帰って来てやしないかと思ったようだった。
「何だ、あいつらはまだ帰ってねえのか?」
「ええ。……お二人で盛り上がっていらっしゃるのでしょうか?」
それにしても少し遅くはないかと心配顔である。
「……ったく、仕方のねえ奴らだな。どれ、ちょっと電話してみるか」
周が苦笑しながら電話をかけたが、通じない。どうやら電源が落とされているようだ。
「こっちもダメだ」
鐘崎も紫月を呼び出せど、やはり電源自体が落ちているようだと言った。
まさかとは思うが、また何かの事件にでも巻き込まれたのだろうか。嫌な予感に、周はすぐさま冰の現在地を確認すべくタブレットを立ち上げた。
「……おかしい。GPSもダメだ。カネ、お前の方はどうだ」
紫月もGPS付きのピアスをしているので確かめてもらう。
「紫月のヤツのも反応がねえ。何かあったのかも知れない」
鐘崎の言葉を受けて、周はすぐに李と劉を呼び寄せた。
「帰って早々すまねえ。冰と一之宮、二人のスマートフォンと腕時計のGPSが反応しねえんだ」
李らも驚いて、もう一度メインの別のパソコンを立ち上げて確認を急ぐ。
「やはり繋がりません!」
深夜のダイニングが一気に緊張感に包まれた。
「とりあえずあいつらが出掛けた店を当たってみよう。この時間ならまだ開いているはずだ」
「かしこまりました。すぐに車を手配します! 念の為、劉はここに残って冰さんたちのGPSを再度追ってくれ。何か新しい状況が掴めるかも知れない」
「承知しました!」
周と鐘崎は、李と共に冰たちが行っていたというスイーツの店へと急いだ。
店は閉店間際だったが、まだ開いていて店長が出てきて応対してくれた。今夜何か変わったことがなかったかと確かめてもらったところ、冰らのことを覚えているという店員が見つかった。
「ええ、実はちょっと気になったお客様がおりまして。随分と慌てて店を出て行かれたのでよく覚えております」
「それは何時頃だったか分かるか?」
周が訊くと、店員は『はい』と言ってうなずいた。
「確か……八時半頃だったと思います。ウチの店は事前会計ですので、お客様がお好きな時間にお帰りになるのは特に問題ないのですが、それにしても血相を変えてというくらいのご様子だったので、何だろうと思っていたんです」
「お帰りなさいませ、坊っちゃま方」
周と鐘崎の姿を見ながらも、何やら所在なさげにキョロキョロとしている。
「あの……冰さんと紫月さんはご一緒ではないのですか?」
二人が周たちとは別々に夕飯に出掛けたことは真田も知っていたのだが、当然周たちよりも先に帰って来ると思っていた為、気になっていたのだ。もしかしたら途中で周らと合流して、一緒に帰って来てやしないかと思ったようだった。
「何だ、あいつらはまだ帰ってねえのか?」
「ええ。……お二人で盛り上がっていらっしゃるのでしょうか?」
それにしても少し遅くはないかと心配顔である。
「……ったく、仕方のねえ奴らだな。どれ、ちょっと電話してみるか」
周が苦笑しながら電話をかけたが、通じない。どうやら電源が落とされているようだ。
「こっちもダメだ」
鐘崎も紫月を呼び出せど、やはり電源自体が落ちているようだと言った。
まさかとは思うが、また何かの事件にでも巻き込まれたのだろうか。嫌な予感に、周はすぐさま冰の現在地を確認すべくタブレットを立ち上げた。
「……おかしい。GPSもダメだ。カネ、お前の方はどうだ」
紫月もGPS付きのピアスをしているので確かめてもらう。
「紫月のヤツのも反応がねえ。何かあったのかも知れない」
鐘崎の言葉を受けて、周はすぐに李と劉を呼び寄せた。
「帰って早々すまねえ。冰と一之宮、二人のスマートフォンと腕時計のGPSが反応しねえんだ」
李らも驚いて、もう一度メインの別のパソコンを立ち上げて確認を急ぐ。
「やはり繋がりません!」
深夜のダイニングが一気に緊張感に包まれた。
「とりあえずあいつらが出掛けた店を当たってみよう。この時間ならまだ開いているはずだ」
「かしこまりました。すぐに車を手配します! 念の為、劉はここに残って冰さんたちのGPSを再度追ってくれ。何か新しい状況が掴めるかも知れない」
「承知しました!」
周と鐘崎は、李と共に冰たちが行っていたというスイーツの店へと急いだ。
店は閉店間際だったが、まだ開いていて店長が出てきて応対してくれた。今夜何か変わったことがなかったかと確かめてもらったところ、冰らのことを覚えているという店員が見つかった。
「ええ、実はちょっと気になったお客様がおりまして。随分と慌てて店を出て行かれたのでよく覚えております」
「それは何時頃だったか分かるか?」
周が訊くと、店員は『はい』と言ってうなずいた。
「確か……八時半頃だったと思います。ウチの店は事前会計ですので、お客様がお好きな時間にお帰りになるのは特に問題ないのですが、それにしても血相を変えてというくらいのご様子だったので、何だろうと思っていたんです」
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