極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
202 / 1,212
恋敵

しおりを挟む
 一方、周の方は接待の会食が済み、鐘崎や李らと共に汐留の邸に戻ってきていた。時刻は既に夜の十一時になろうかという頃だ。帰りを待っていた真田が、少々心配そうな面持ちで出迎えた。
「お帰りなさいませ、坊っちゃま方」
 周と鐘崎の姿を見ながらも、何やら所在なさげにキョロキョロとしている。
「あの……冰さんと紫月さんはご一緒ではないのですか?」
 二人が周たちとは別々に夕飯に出掛けたことは真田も知っていたのだが、当然周たちよりも先に帰って来ると思っていた為、気になっていたのだ。もしかしたら途中で周らと合流して、一緒に帰って来てやしないかと思ったようだった。
「何だ、あいつらはまだ帰ってねえのか?」
「ええ。……お二人で盛り上がっていらっしゃるのでしょうか?」
 それにしても少し遅くはないかと心配顔である。
「……ったく、仕方のねえ奴らだな。どれ、ちょっと電話してみるか」
 周が苦笑しながら電話をかけたが、通じない。どうやら電源が落とされているようだ。
「こっちもダメだ」
 鐘崎も紫月を呼び出せど、やはり電源自体が落ちているようだと言った。
 まさかとは思うが、また何かの事件にでも巻き込まれたのだろうか。嫌な予感に、周はすぐさま冰の現在地を確認すべくタブレットを立ち上げた。
「……おかしい。GPSもダメだ。カネ、お前の方はどうだ」
 紫月もGPS付きのピアスをしているので確かめてもらう。
「紫月のヤツのも反応がねえ。何かあったのかも知れない」
 鐘崎の言葉を受けて、周はすぐに李と劉を呼び寄せた。
「帰って早々すまねえ。冰と一之宮、二人のスマートフォンと腕時計のGPSが反応しねえんだ」
 李らも驚いて、もう一度メインの別のパソコンを立ち上げて確認を急ぐ。
「やはり繋がりません!」

 深夜のダイニングが一気に緊張感に包まれた。

「とりあえずあいつらが出掛けた店を当たってみよう。この時間ならまだ開いているはずだ」
「かしこまりました。すぐに車を手配します! 念の為、劉はここに残って冰さんたちのGPSを再度追ってくれ。何か新しい状況が掴めるかも知れない」
「承知しました!」
 周と鐘崎は、李と共に冰たちが行っていたというスイーツの店へと急いだ。

 店は閉店間際だったが、まだ開いていて店長が出てきて応対してくれた。今夜何か変わったことがなかったかと確かめてもらったところ、冰らのことを覚えているという店員が見つかった。
「ええ、実はちょっと気になったお客様がおりまして。随分と慌てて店を出て行かれたのでよく覚えております」
「それは何時頃だったか分かるか?」
 周が訊くと、店員は『はい』と言ってうなずいた。
「確か……八時半頃だったと思います。ウチの店は事前会計ですので、お客様がお好きな時間にお帰りになるのは特に問題ないのですが、それにしても血相を変えてというくらいのご様子だったので、何だろうと思っていたんです」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...