極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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「私は香川理恵ですわ。繭さんと同じく、父の秘書をしておりますの」
「アタクシは中井恭子と申します。繭さんとは女学院時代からのお友達ですのよ」
「私は松坂利江。粟津の兄様とは幼馴染みで、学園も一緒だったんですのよ」
「私は――」
 まるで立板に水のごとく次々と自己紹介の嵐で、誰もが鐘崎を取り巻いては、ヘタをすると今にも腕に抱きつかん勢いでいる。
 さすがに邪険にするわけにもいかず、少々苦笑気味の鐘崎に助け船を出さんと、帝斗は朗らかに微笑んだ。
「おいおい、お前さん方、そのくらいにしておおきよ。そんな揉みくちゃにしたら遼二が気の毒じゃないか」
「あらぁ、いいじゃない。減るもんじゃなし!」
「そうよ。粟津の兄様にそんなこと言われる筋合いはなくってよ!」
 そうよねー――と、皆一斉に繭の方を見やる。”婚約者の繭さんが許してくれているのに”と言いたげな一同を横目に、そんなことは露知らずの帝斗は半ば呆れ気味で苦笑させられてしまった。鐘崎には既に紫月という伴侶がおり、二人の披露目の席にも出席していた帝斗にしてみれば、彼女たちの間で鐘崎と繭が婚約間近だなどと盛り上がっているとは微塵も思わないわけである。
「まあ、とにかく僕の展示ブースにも寄って行っておくれ」
 帝斗が鐘崎を案内して歩き出すと、ご令嬢方も当然のように後を付いて来たのだった。
「ねえ、繭さん! せっかくだから例の色占いを鐘崎さんにもうかがってみたらどうかしら?」
「そうよ、そうよ! 鐘崎さんが繭さんのことを何色のイメージで見ていらっしゃるか訊いてみたいわ!」
「繭さんも知らない一面が覗けるかも知れなくてよ?」
 女たちがキャアキャアと楽しげに騒いでいるので、帝斗も興味ありげに耳を傾けた。
「色占いってのは何だい?」
「あらぁ、粟津の兄様もやってみる? 結構当たるって評判なのよ」
「ほう? 面白そうじゃない」
 帝斗が軽いノリで興味を示すので、女たちも嬉しがって早速に盛り上がり始めた。
「鐘崎さんにも是非うかがってみたいわ!」
「それじゃあ始めるわよ。赤、青、白、黒、紫、黄色。ご自分の身近にいらっしゃる人で、それぞれの色に当てはまる人を思い浮かべてみてください! 自分では気がつかなくても、潜在意識の中でその人をどう思っているかっていうのが分かる占いですのよ」
「へえ、女性が好みそうな話題だね。それじゃあ僕からやってみようか。黒は父で白は母かな。青は遼二っぽいね。紫は……そうだなぁ、よく行くクラブの幸恵ママかな。赤と黄色は残念ながらすぐには思い当たらないね」
 帝斗が答え終わると、女たちからは『キャア、いやだー』などと歓声が上がり、ちょっとした興奮状態で大盛り上がりとなった。その理由は、帝斗が『青は遼二、紫はクラブのママのイメージだ』と答えたからである。青いイメージというのは恋人にしたい相手だし、紫は性的欲求をぶつけたい相手という意味だからだ。
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