極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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「それで――あの娘が紫月のことを嗅ぎ回る理由は何だか分かるか?」
 早速に鐘崎は帝斗に尋ねた。
「さあ、そこまではなんとも。ただ単に興味があるだけなのかも知れないが、それにしては随分と大っぴらに誰彼構わずといった調子で訊いて回っているらしい」
「ここにくる前に俺もザッと三崎財閥について調べ直してみたが、裏の世界との繋がりは出てこなかった。お前の話じゃ興信所にまで調査を依頼しているかも知れないとのことだったが。正直なところ狭い世界だ、そういった話があれば俺の耳に入ってきても良さそうなんだがな」
 つまり、裏社会で鐘崎組について調べ回っているような人物がいれば、そういった動きは情報屋を通して割合すぐに知れ渡るというものだからだ。
「まあ、興信所といっても様々ありますからな。普段、我々とはあまり縁のない人間が動いているのかも知れません。まずはその人物を洗い出すところから始めましょう」
 源次郎がそう言う傍らで、清水はまた別の見方をつぶやいた。
「あのご令嬢は若に熱を上げているようでしたから、もしかしたら諦め切れないでいるだけなのかも知れません……」
 驚いたのは帝斗だ。
「そうだったのかい!? そいつはびっくりだ。だって遼二に嫁さんがいることは彼女も知っているだろうよ」
 実にそれを教えたのは帝斗自身だ。華道展の際に皆の前で言ったのだから、あの時そばにいた繭も当然知っているはずである。
「好きだから余計に姐さんのことが気になるんじゃないですかね?」
「もしも繭嬢が遼二にご執心だとするなら、奥方がどんな人なのかって気になるのは分からないでもないさ。だけど、それを知ってどうしたいっていうんだい? まさか不倫でもいいから付き合いたいと思っているとでも?」
「分かりません。単に興味があるだけかも知れませんし。とにかく俺個人の見解ですが、若を好いていることだけは確かだと思われます」
 だとすれば、紫月を拉致してどうこうしようなどという非常事態が起こる可能性は低いといえるだろうか。だが、好いた惚れたで家庭や組内を掻き回されるのも御免被りたいところだ。
「――ったく! 厄介なことになったもんだ」
 深い溜め息と共に鐘崎が眉根を寄せる。あの父娘にははっきりと既婚者であることを告げた時点で既にカタはついたと思っていたのだが、想像以上に諦めが悪いようだ。
「そのご令嬢の目的が本当に色恋だけというのなら、対処のしようもあるかと存じます。ただ、単なる娘の色恋と舐めて掛かって予期せぬ事態が起こらないとも限りません。念の為、紫月さんの周辺には特に気を配ると共に、警備体制も整えておくことに致しましょう」
 酸いも甘いも知っている年長者の源次郎の言葉は非常に心強い。
「すまないな、源さん――。粟津も世話を掛けた」
「いや、構わないよ。僕の方でもまた何か新しい情報が入ればすぐに連絡をするとしよう」

 そんな中、久方ぶりで鐘崎が呼び出されたのは、とある高級ホテルのバーラウンジ――待っていたのは三崎繭の父親であった。
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