極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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「うわぁ、それ最高ですね! お母様たちとお義姉様だもん、着物姿だなんてきっとめちゃめちゃ綺麗だと思うし、何より喜んでくださると思います!」
 紫月の提案に冰も嬉しそうに瞳を輝かせた。
「なら俺たちも着物を着るか。どうだ、カネ」
「おう、いいな! こうなったらとことん日本情緒満載でいくのもオツだな」
「うわぁ! 白龍と鐘崎さんの和服姿かぁ。カッコいいだろうなぁ!」
「何言ってんだ。お前らも着るんだぞ」
「え? 俺たちも?」
「当たりめえだろ! とびきり渋いのを新調してやる。それともいつぞやみてえに女装ってのもいいんじゃねえか? お前と一之宮なら艶やかだろうぜ?」
「うはは! やだなぁ、白龍ったら!」
 冰が恥ずかしがる横で、紫月と鐘崎は意外にも真剣に盛り上がっている様子でいる。
「んでも、それもアリかもな! 俺と冰君で花魁道中でもやってみっか!」
「花魁か! そいつはいいな」
 二人の意見を聞いて大賛成とばかりに周も身を乗り出す。
「だったら床の用意も欲しくなるじゃねえか! 赤い組布団とか揃えて、その夜はカネん家の純和風の部屋に泊まらしてもらうってのもいいな」
「うはは! 出たよ、氷川エロ魔神が! 結局それ目当てかよ!」
 そんな話で最高潮に盛り上がっていた時だった。組の若い衆が慌てたような顔付きで幹部の清水を呼びにやって来たことから事態は一転した。
「若、清水幹部! お寛ぎのところすみません! 実は例の三崎財閥の社長が緊急の用事だとかで血相変えて訪ねていらしてるんですが……」
 その言葉で和気藹々としていた空気が一気にトーンダウンした。
「緊急の用事だと? 社長が一人で来ているのか?」
 清水が尋ねると、若い衆からはもっと驚くような報告が飛び出した。
「いらしているのは社長と専務、それに運転手の方の三人です。何でも娘さんが誘拐されたとかで……」
「誘拐――ッ!?」
 その場にいた全員が声を揃えてしまった。
「と、とにかく私が話を聞いて参りましょう。若たちはこちらでお待ちください」
 清水がすかさず立ち上がったが、
「いや、直接聞いた方が早いだろう」
 鐘崎がそう言うので、結局は皆で一緒に応接室まで行くこととなった。
 鐘崎の姿を一目見るなり社長が飛びつくようにしてソファから立ち上がった。
「鐘崎君! た、助けてくれ……! あの子が……繭が……」
「社長さん、落ち着いてください。お嬢さんが誘拐に遭ったとのことですが、警察へは届けられたんですか?」
「いや……それはまだ……。警察に言えば繭の命はないと……言われて」
「犯人にお心当たりは?」
「いいや……。こんなこと初めてで……私にはもう何が何だか……」
「連絡がきたのは電話でですね? 相手の声に聞き覚えは?」
「分からない……声を変える機械を通したようなやつだった」
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