極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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「けど、さすが姐さんっス! あの血気盛んな年頃のチンピラ連中も大人しくさせちまうんですもん! しかも、殴るでもなきゃ暴力沙汰には一切せずに収めちまった! それに、あんだけしつこかった例の娘まで諭しちまうしで……俺ら、正直感動しちまいました!」
「そうっスよ! 若や清水幹部があれだけ手を焼いてたってのに、姐さんが出て行った途端にあの娘っ子ってば!」
「そうそう、すっかり人が変わったようにいい子になっちまいやがった! 驚いたなんてもんじゃありませんよ」
「いやぁ、さすが姐さんです!」
 皆一様に感激の眼差しで興奮状態でいる。自治会の老人方も同様に紫月を褒め称えながらうなずいていた。
「別に俺は大したことをしたわけじゃねえよ。ただ、あの娘も自分で自分が制御できなくなって意固地になってただけなんだろうと思ってな。正面から真っ直ぐに向き合ってやれば、自分を取り戻すきっかけが掴めるんじゃねえかって思っただけさ」
 これまでは、皆が腫れ物に触るようにして斜めからしか彼女を受け止めてやれなかったのだろう。彼女の父親も、そして実に鐘崎自身も例外ではない。まあ、鐘崎の場合は伴侶である紫月に対する遠慮があったのだろうし、誤解を生むようなことはしたくないという気持ちが強かった為に少々冷たい向き合い方しかできなかったのだと思われる。そんな亭主の深い愛情に感謝すると共に、この問題を正面から受け止めてやるべきは自分の役目だと紫月は思っていたようだ。
「でもホント、改めて姐さんの大きさを目の当たりにしました。姐さんは俺ら全員の誇りです!」
「バカタレ、そうおだてるなって! 照れるじゃねっか」
 言葉とは裏腹に、実に爽やかな笑顔を見せる自分たちの姐さんを囲みながら、組員たちも朗らかな笑顔に包まれるのだった。
「そういえば、もうすぐ若も帰って来られると思いますよ!」
 ここに着いたと同時に入れた橘からの報告を受けて、すぐに仕事を切り上げて駆け付けるから、それまで紫月を頼むと鐘崎は言ったそうだ。
「あー、マジ? ンじゃ、旨いメシでもこさえて待っててやっか! 今日の晩飯は久々に俺が作っちゃる! お前ら何食いたい?」
 紫月の明るい声に若い衆らが一斉に盛り上がる。
「やった! 姐さんのメシかぁ!」
「めちゃめちゃ旨いっスからね、姐さんの作るメシは!」
「俺、ハンバーグがいいっス!」
「俺も俺も! 姐さんのチーズ入りバーグは最高っスもん!」
「よっしゃ! ンじゃ、帰りに食材買ってくか! 腕によりを掛けちゃるわ!」
「俺、荷物持ちますから!」
「姐さんと一緒に買い物行ったなんて知れたら、若にド突かれそうだなぁ!」
「あー、言えてる! 若はああ見えて案外ヤキモチ焼きっスからね!」
「そりゃお前、姐さんに対してだけだろうが!」
 ワイのワイのと楽しげな笑い声に包まれながら、まるで学生時代の部活動の帰り道のように夕陽の射す帰路を共に歩く。自分たちの足元から伸びる長い影が重なり合うことに幸せを感じる組員たちだった。



◇    ◇    ◇


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