極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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「ありがとうございます! よ、よろしくお願いします!」
 さすがに若頭の迫力の前では身の縮む思いでいるのだろう、人形のようにギクシャクとした動きながらも必死さだけは伝わってくる。鐘崎は彼にもう一瞥をくれると、一等肝心の要件を付け加えた。
「ひとつだけ言っておく。この紫月は俺の唯一無二の伴侶だ。世間でいうところの妻ということになる。意味は分かるか?」
「は、はい! もちろんです! それで”姐さん”なんですよね?」
「そうだ。お前さんはこいつに惚れたそうだが、それは人間性に惚れたという見解で間違いないな?」
「も、もちろんです! 姐さんのお人柄に感動しました!」
「そうか。では邪な気持ちは一切ないということだな?」
「よ、ヨコシマ……?」
 徳永は一瞬言われている意味が分からないといったようにポカンと口を半開きにしながらも首を傾げている。その態度から本当に人柄に感銘を受けただけだということを見て取ったのか、鐘崎は険しかった表情をわずかにゆるめると、フっと悪戯そうに口角を上げながら言った。
「こいつに惚れるのは人柄だけにしておけよ。夢夢おかしな気を起こすんじゃねえ。万が一にも手を出したりしたら、その時はてめえのタマはねえと思えよ」
「タ……タマ……ですか?」
 言われている意味がいまいち理解できないでいる様子の彼に、清水がスマートに通訳を口にする。
「我々の世界では”命”という意味です」
「……へ?」
 徳永は未だポカンとしたまま大きな瞳をバチバチとさせている。よくよく見れば、今より少し若い頃の紫月を思わせるような見目良い顔立ちをしている。土下座状態なのではっきりとは分からないが、上背もそこそこありそうで、だが筋肉隆々といったふうではなく、どちらかといえば華奢でスレンダーなイメージだ。それこそ紫月によく似た――というのだろうか、姐さんという意味も理解しているようであるし、外見の印象からして間違っても組み敷いてどうこうしようという気配はとりあえずのところなさそうと見える。まあ、仮にしそうなったところで、体術に長けている紫月にねじ伏せられるのは必須――か。
 鐘崎は薄く苦笑をみせると、清水に向かって念を押した。
「人選は任せる。しっかり教育してやってくれ」
「かしこまりました。では、春日野にでも言って面倒を見させましょう。彼なら一番年齢も近いですし、上手くやってくれるでしょう」
「それでいい。よろしく頼む」
 鐘崎はうなずくと、
「念の為、こいつの親御さんにも裏を取っておけ。もしも本格的に組に入るようなことになった場合は挨拶に出向かにゃならんしな」
 そう付け加えて、紫月と共に周の母親たちを迎えるべく空港へと向かったのだった。
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