極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
315 / 1,212
極道の姐

しおりを挟む
「そのはずだ。俺の知る限りでも取り立てて特別な関係は一切ないと記憶している。我々があの店を使う時は君江ママが直々についてくれるのが決まりとなっているし、ただ……サリーって女がヘルプで同席することは何度かあったのは事実だ。あの女はナンバーワンとも言われているような人気のホステスだ。本来、ヘルプとして他のテーブルにつくようなことはないんだが……何故か我々が行くと、決まって自分から割り込んでくるのさ」
「ナンバーワンが自分からかよ……」
「ママもその度に『ここはいいから自分のお客様を大事にしなさい』と釘を刺すんだがな。どういうわけか、我々が行く日に限って身体が空いているようでな、正直言ってあまり聞かれたくない商談の時なんかは鬱陶しくも思っていたものだ」
「そいつはまた随分と狡猾なことだな。まさかとは思うが、若あたりがお目当てだったりして……」
 橘が苦笑しつつも半分は冗談でそんなことを口走ったが、清水にとってはさほど冗談で済む話ではなさそうである。苦い顔つきで漏らす溜め息がそう物語っていた。
「……そうでないことを祈るばかりだが、俺の勘では”無いとも言い切れない”というのが実際のところだ」
「はぁッ!? マジかよ……?」
 橘がすっとんきょうな声を上げる。
「ついこの前も財閥令嬢に惚れられてたいへんな思いしたばっかじゃねえか。まあ、あン時は相手が素人だったし、姐さんの人望のお陰で上手いこと収束してくれたわけだが……さすがに玄人相手じゃ、別の意味で手を焼かされるんじゃねえか?」
「確かにな……。若はあの通り男前でいらっしゃるし、誰かに惚れられることがあってもそれ自体は格別驚くことじゃない。大概の女は相手にされないと分かればすぐに引くし、ましてやああいった客商売のプロが集まる銀座界隈では、若に姐さんがいらっしゃることも周知している。普通ならば客は客として、それ以上の関係を望んじゃならねえとわきまえてもいる。だが、あのサリーに限っては少々要注意人物と気になってはいたところだ」
「あー、思い出した! サリーって女、そういや俺も確か一、二度ツラを合わせたことがあったっけな! 乳のデカい、割とイイ女じゃねえか?」
 率直過ぎる橘の言い草には苦笑を誘われてしまうところだが、まあ当たっているといえるだろう。
「確かに容姿の点ではそうかも知れんが――問題は中身だ。今まで世話になっていた君江ママから是非にと頼まれるならまだしも、本人から直々となるとな。しかも――ママの目を盗むような形で自分の係の客に仲介させるってのも好ましいとは思えない」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...