極道恋事情

一園木蓮

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極道の姐

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 とにかくは帰ってから若頭である鐘崎に相談するしかないだろう。例によって、長の僚一が現在はまた海外だからだ。邸が近付くにつれてますます重い溜め息が増えるばかりの清水であった。
 ところが、鐘崎の帰りを待ってそれを告げたところ、格別には驚きもされずに拍子抜けすることと相成った。戸惑うでもなくうっとうしがるでもなく、鐘崎があっさりと話を蹴ると言ったからだ。
「ですが……よろしいのですか? 君江ママの手前もお有りかと思うのですが」
「構わねえ。本当にそういった用件なら、ママの方から直接親父に話がいくはずだ。だが何も聞いていないし、おそらくはそのサリーって女の独断なんだろうからな」
 鐘崎の言うには、実にかなり以前からサリーにしつこく後見の話を持ち掛けられていたのだそうだ。もしも彼女が独立して店を持つ時がきたら力になって欲しいと、ジュエラに行く度にねだられていたらしい。
 清水は驚いた。
「まさかそんなことがあったとは……。我々の知らないところで若にだけそんな話をしていたということですか」
「ああ。正直言ってしつこいなんてもんじゃねえ。時にはVIPが使う個室に引っ張り込まれたこともあるし、俺が用足しに行った化粧室にまで追っ掛けて来ることもしょっちゅうだ」
「男性用の廁にですか?」
「最初の時はたまたま出すモン出した後だったから良かったが、ヘタすりゃ小便の最中ってことも有り得たからな。途中で引っ込めるわけにもいかねえし、以後は警戒してわざわざ個室で用足すようになっちまった」
「それはまた……災難でしたね」
「まったくよくやるなと呆れさせられる。しかも一度や二度じゃねえってのがな」
「そんなに執拗に……ですか」
「ああ。何でたかだか小便行くのにビビらなきゃなんねんだって……な?」
 その度にしなだれ掛かっては、あわよくばそのままアフターに持ち込まんと必死だったそうだ。
「あの女はてめえの容姿に相当自信を持っているようだからな。色を使や、男は何でも言うことを聞くと思っているんだろう」
 だが鐘崎は何度でもはっきりと断り続け、色仕掛けにも一切乗らなかったということだから、ついには戦法を変えてきたというところなのか。いずれにせよ、誰が仲介に入ろうがどんな戦法で来ようが、鐘崎自身の考えは変わらないとのことだった。例えその仲介者がどんな大物であろうと――だ。
 長の僚一もその件に関しては既に了解していて、サリーという女と後見などの縁を持つつもりはないということは、組の方針として決まっていたのだそうだ。
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