極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
319 / 1,212
極道の姐

しおりを挟む
 そうなのだ。隣のビルには周の経営するアイス・カンパニーの子会社が軒を連ねているわけだが、それらの偵察方々必要書類などを届けに回るのが冰の仕事でもある。これまでは彼一人で回ってもらっていたのだが、その帰り道でマカオの張らに拉致されたこともあって、以後は劉と共に二人一組で回らせるようにしたのだった。
「お夕飯は外へ出られますか?」
 そうであれば手配をという李の有り難い言葉に、周も瞳を細めた。
「そうだな。この時間ならまだ真田も支度はしていなかろう。今宵は皆で中華でも囲むか。お前らも一緒にどうだ」
 中華を食べに行くなら二人きりよりも人数がいた方が楽しめる。何より、そう言えば冰の方から『それだったら李さんや劉さん、それにもしご都合がつけば真田さんたちも』と言い出すに決まっている。自分だけがいい思いをするという観念がない冰は、そうして常に周りの人々を思いやってくれる性質だからだ。
「では有り難くご相伴に与ります。いつもながらのお心遣い、痛み入ります」
 李は言うと、早速に店の手配に取り掛かったのだった。

 その夜、夕飯から帰ってのことだ。周は念の為、昼間聞いた唐静雨の件について冰の耳にも入れておこうと、リビングで就寝前の酒を片手に彼と向き合っていた。
「今はまだ何か起こるといったわけじゃねえが、ここしばらくはお前も身の回りに気を配るようにしておいてくれ。もっと詳しいことが分かってくるまで辛抱をかけるがすまねえな」
 そんなふうに謝ってくる周を目の前に、冰はブンブンと首を横に振りながらうなずいた。
「白龍のせいじゃないんだからさ。そんな謝らないでよ。でも俺も気をつけるようにするね」
 いつもこうして気遣いを忘れない。そんな伴侶を愛しく思わずにはいられない周だった。
「よし! じゃあ休むとするか」
 酒のグラスを片付けてベッドへと誘う。もうすっかり共に寝るのが通常となっているので、冰も当然のように同じベッドへと向かう。
「明日も朝一からの予定は入ってねえし、割合ゆっくりめだ。この後はまたお前のベッドに移動してもいいし、このままここで寝ちまっても俺は一向に構わねえぞ」
 ベッドを移動という言葉に冰は瞬時に頬を赤らめた。つまり抱きたいという意味だからだ。
 初めての睦の時、汗や体液でシーツがぐちゃぐちゃになってしまったので、これでは寝づらかろうと冰の部屋のベッドへと二人で移動して就寝についたことがある。それ以来、愛を紡ぐ夜は周のベッドで、その後は冰の部屋へと移動して寝ることがすっかり習慣になってしまっているのだ。まあ、激しい夜には疲れてそのまま寝入ってしまうこともあるのだが、気持ちよく熟睡させてやりたいと、周はいつもそうして気遣ってくれるわけだ。そんな亭主を、冰もまた心から頼もしく愛しく思うのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...