330 / 1,212
極道の姐
18
しおりを挟む
一儲け――つまりは周兄弟を拉致して身代金でも引き出そうというわけだろうか。
「なるほど……。お陰で経緯はだいたい掴めた。迷惑ついでと言っちゃなんだが、俺と俺の仲間たちをそのホテルの近くまで案内してはもらえまいか? できればヤツらの動きを見張れるヤサがあれば尚有り難いんだが」
張が頼むと、男の方もすぐに事情を察したのだろう。深くは理由を訊かずに快諾してくれた。
「ワケ有りと言っていたな。案内は俺が直接しよう。ホテルを見張れるヤサも用意する」
「すまない。恩に着るぜ」
「他に必要なものがあれば言ってくれ。力になれるかどうかは分からんが、俺にできることなら協力させてもらおう」
「助かる! では――お前さんの幼馴染みだというその男の名と、もしも可能であればそいつの顔写真なんかがあると有り難い」
「分かった。ヤツが俺を訪ねて来た際の防犯カメラの映像が残っているはずだから、すぐに用意させる」
これも張の人徳故だろう、マカオの裏社会でも更に裏を仕切っているこのボスに二つ返事で動いてもらえるのだから、さすがといったところだ。
張は今聞いた話を早速に伝えるべく隼らの元へと急いだのだった。
その頃、隼の方でもちょうど突入の準備が整ったところだったようだ。
「頭領・周! 遅くなって申し訳ありません。おおよその経緯が分かりました」
張は今しがたスラム街を仕切る男から聞いてきたことを簡潔に報告した。
「犯人が立てこもっているホテルの跡地までは私の知り合いが案内してくれるそうですので、すぐに出発しましょう」
これで街区の住人たちとの間にいざこざを起こさずに、すんなりと現場入りできるというものだ。隼は張に向かって丁重に礼を述べると、紫月や冰ら皆と共に早速現場へと向かった。
ホテルの跡地といっても、まだ建物自体は当時のまま取り壊されてはおらず、廃屋と化してはいるものの、かなり立派な外観といえた。部屋数もそれなりに多いことは一目瞭然である。建物内のどこにどんな状態で周らが捕らえられているのか、まずはそれを把握するのが何より先だ。
幸い、張の知人が自由に使ってくれていいと言って、ホテル真向かいのショッピングセンターの一室を提供してくれたので、通信機材などはそこへと持ち込まれた。
「ここからなら集音器なども仕掛けやすい。とはいえ、確実に内部の状況を知るには、やはりホテルの敷地内に潜入して機器を仕掛ける必要があります。そのお役目は私が引き受けますから、紫月さんたちはここで機器からの傍受をお願いできますでしょうか?」
源次郎が言うと同時に、後方から頼もしい声音が重なった。
「それは俺が行こう」
皆が声の主を振り返ると、そこには鐘崎の父親の僚一が精悍な顔付きでこちらへと向かってくるのがうかがえた。
「なるほど……。お陰で経緯はだいたい掴めた。迷惑ついでと言っちゃなんだが、俺と俺の仲間たちをそのホテルの近くまで案内してはもらえまいか? できればヤツらの動きを見張れるヤサがあれば尚有り難いんだが」
張が頼むと、男の方もすぐに事情を察したのだろう。深くは理由を訊かずに快諾してくれた。
「ワケ有りと言っていたな。案内は俺が直接しよう。ホテルを見張れるヤサも用意する」
「すまない。恩に着るぜ」
「他に必要なものがあれば言ってくれ。力になれるかどうかは分からんが、俺にできることなら協力させてもらおう」
「助かる! では――お前さんの幼馴染みだというその男の名と、もしも可能であればそいつの顔写真なんかがあると有り難い」
「分かった。ヤツが俺を訪ねて来た際の防犯カメラの映像が残っているはずだから、すぐに用意させる」
これも張の人徳故だろう、マカオの裏社会でも更に裏を仕切っているこのボスに二つ返事で動いてもらえるのだから、さすがといったところだ。
張は今聞いた話を早速に伝えるべく隼らの元へと急いだのだった。
その頃、隼の方でもちょうど突入の準備が整ったところだったようだ。
「頭領・周! 遅くなって申し訳ありません。おおよその経緯が分かりました」
張は今しがたスラム街を仕切る男から聞いてきたことを簡潔に報告した。
「犯人が立てこもっているホテルの跡地までは私の知り合いが案内してくれるそうですので、すぐに出発しましょう」
これで街区の住人たちとの間にいざこざを起こさずに、すんなりと現場入りできるというものだ。隼は張に向かって丁重に礼を述べると、紫月や冰ら皆と共に早速現場へと向かった。
ホテルの跡地といっても、まだ建物自体は当時のまま取り壊されてはおらず、廃屋と化してはいるものの、かなり立派な外観といえた。部屋数もそれなりに多いことは一目瞭然である。建物内のどこにどんな状態で周らが捕らえられているのか、まずはそれを把握するのが何より先だ。
幸い、張の知人が自由に使ってくれていいと言って、ホテル真向かいのショッピングセンターの一室を提供してくれたので、通信機材などはそこへと持ち込まれた。
「ここからなら集音器なども仕掛けやすい。とはいえ、確実に内部の状況を知るには、やはりホテルの敷地内に潜入して機器を仕掛ける必要があります。そのお役目は私が引き受けますから、紫月さんたちはここで機器からの傍受をお願いできますでしょうか?」
源次郎が言うと同時に、後方から頼もしい声音が重なった。
「それは俺が行こう」
皆が声の主を振り返ると、そこには鐘崎の父親の僚一が精悍な顔付きでこちらへと向かってくるのがうかがえた。
26
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる