極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
331 / 1,212
極道の姐

19

しおりを挟む
 台湾での仕事を切り上げて、早速に駆け付けて来たのである。
親父おやっさん! お待ちしてました!」
 紫月が感嘆の面持ちで迎える。
 裏の世界で右に出る者はいないというほどの百戦錬磨の僚一がいれば鬼に金棒である。彼の姿を見ただけで、その場にいた者たちにとてつもない勇気の感情が湧き上がっていくようだった。
「僚一、煩わせてすまない」
 むろんのこと隼も例外ではなく、僚一がいてくれるだけで心強いといったように出迎える。
「ここへ来るまでの間に俺の方でも少し調べてみたんだが、やはり犯人は唐静雨という女が絡んでいることに間違いなさそうだ」
 僚一は、源次郎からの報告を受けて、拉致犯の割り出しに取り掛かっていたのだった。
「唐静雨が米国で懇意になったという男の素性だが、どうやらニューヨークマフィアというのは本当らしい。名前はロナルド・コックス、通称ロンだ。ヤツは元々ここマカオの出身だが、両親が他界したことでアメリカに渡ったらしい。ロナルドというイングリッシュネームも元々の”龍”という名から取ったと思われる。腕に小さな龍のタトゥを入れて、向こうではドラゴンなどとのたまっていたそうだ」
 その話を聞いて、隼からは思わず嘲笑が漏れる。
「ドラゴンとな――。笑わせやがる」
 それも然りか、周親子のあざなには皆”龍”の文字が入っているし、ドラゴンのタトゥという点でも被っている。ただ、周家の場合は三人それぞれ、背中全面にうねるような立派な昇龍の刺青があるわけで、ロンという男がお遊びで入れたのだろうシールまがいとは格が違うといえる。
 僚一の調べでは、ロンは当初親戚を頼って渡米したそうだが、折り合いが悪く、ほどなくして不良グループに入り、そこから地元マフィアの一員にまで成り上がったらしいとのことだった。
「ただ、マフィアといっても名ばかりで、立場的には下っ端も下っ端、上層部の連中からは存在すら知る由もないといった具合だったようだ。唐静雨という女の方も焔との一件で香港を追われてから、ニュージャージーにある小さな貿易会社で事務員として働いていたようだが、そこでロンに出会ったんだろう。ヤツがマフィアと知って焔への対抗心でも生まれたのかも知れん」
 さすがは僚一である。李らが時間を掛けて調べ上げた情報を、この数時間の内にすっかり把握してしまった手腕には驚きを通り越して驚愕とさえいえる。
「しかも、この真向かいにあるホテルはロンの両親が経営していて潰れた跡地だそうだな? 拉致した三人を捕らえておくには最適と踏んで舞い戻って来たんだろう」
 そこまでお見通しというわけか。李などは恐れ多いといった調子で、心底申し訳なさそうに首を垂れてしまった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...