332 / 1,212
極道の姐
20
しおりを挟む
「長・鐘崎……ご尽力、恐縮の極みです。我々がついていながら唐静雨の動きを読み切れなかったことは手落ちとしか言いようがございません。焔老板はもとより、兄上の風老板、それにご子息の遼二殿まで煩わせてしまい、お詫びのしようもございません! かくなる上はどうあっても御三方を無事に救出できるよう命を賭して臨む所存です! どうか引き続きご助力賜りたく……この通りです……!」
気の毒なくらいに腰を折って謝罪する様子を横目に、だが僚一はもっと驚くべきことを口にした。
「李、そう恐縮してくれるな。実はな、今回の拉致だが、どうも目的は焔だけではないようなんだ」
その言葉に全員が一斉に僚一を見やる。
「……と申されますと?」
「唐静雨が焔への未練を捨て切れずに――あるいは逆恨みの感情でか分からんが、この拉致計画を企てたことは間違いないだろう。女一人では成し遂げられない故にロンというチンピラをそそのかしたのも事実だろうが、それだけではないようだ。唐静雨は今回の企てを実行する直前に日本を訪れていたようだぞ」
つまり、つい最近彼女が来日していたらしいというのだ。
「あの女が……ですか? ですが、我々の耳には入ってきておりませんで……」
まさか動きを見落としてしまったのだろうかと、李はそれこそ身の縮む思いに陥ってしまった。だが、そうではなかったらしい。
「女の動きに気付かなかったとしても、それは李の落ち度ではない。唐静雨が来日した経緯には裏があってな」
「裏……ですか? それはいったいどういう……」
「まず最初にロンというチンピラが先に日本へやって来て、密かに焔の周辺を嗅ぎ回っていたようだ。情報を得がてらヤツは銀座界隈のクラブにも顔を出していたようでな、えらく羽振り良く振る舞っていたらしい」
つまり、遊興ついでに周焔についての情報も仕入れようとしていたということか。
「焔の社は汐留にある。若くしてあれだけでかい社のトップだから、当然銀座のクラブなどにも顔馴染みであると踏んだのだろう。一見としていくつかの店を回っていたようだが、そこで或るホステスと知り合い、意気投合したようでな。そのホステスというのが我が愚息の遼二にしつこく色目を使っていたサリーという女だったんだ」
これには李よりも紫月の方が驚かされる羽目となった。
「サリーって……遼に再三後見を頼んできてたっていう……あのサリーですか?」
「そうだ。まったく厄介な縁というか、負の歯車が噛み合わさっちまったらしい。焔と遼二が親友であると知ったことから、ヤツらは互いの目的の為に手を組むことにしたと思われる。米国でロンからの情報を待っていた唐静雨に、サリーの名で偽旅券を作り、日本に呼び寄せて合流。今回の拉致計画を練ったってところだろう」
気の毒なくらいに腰を折って謝罪する様子を横目に、だが僚一はもっと驚くべきことを口にした。
「李、そう恐縮してくれるな。実はな、今回の拉致だが、どうも目的は焔だけではないようなんだ」
その言葉に全員が一斉に僚一を見やる。
「……と申されますと?」
「唐静雨が焔への未練を捨て切れずに――あるいは逆恨みの感情でか分からんが、この拉致計画を企てたことは間違いないだろう。女一人では成し遂げられない故にロンというチンピラをそそのかしたのも事実だろうが、それだけではないようだ。唐静雨は今回の企てを実行する直前に日本を訪れていたようだぞ」
つまり、つい最近彼女が来日していたらしいというのだ。
「あの女が……ですか? ですが、我々の耳には入ってきておりませんで……」
まさか動きを見落としてしまったのだろうかと、李はそれこそ身の縮む思いに陥ってしまった。だが、そうではなかったらしい。
「女の動きに気付かなかったとしても、それは李の落ち度ではない。唐静雨が来日した経緯には裏があってな」
「裏……ですか? それはいったいどういう……」
「まず最初にロンというチンピラが先に日本へやって来て、密かに焔の周辺を嗅ぎ回っていたようだ。情報を得がてらヤツは銀座界隈のクラブにも顔を出していたようでな、えらく羽振り良く振る舞っていたらしい」
つまり、遊興ついでに周焔についての情報も仕入れようとしていたということか。
「焔の社は汐留にある。若くしてあれだけでかい社のトップだから、当然銀座のクラブなどにも顔馴染みであると踏んだのだろう。一見としていくつかの店を回っていたようだが、そこで或るホステスと知り合い、意気投合したようでな。そのホステスというのが我が愚息の遼二にしつこく色目を使っていたサリーという女だったんだ」
これには李よりも紫月の方が驚かされる羽目となった。
「サリーって……遼に再三後見を頼んできてたっていう……あのサリーですか?」
「そうだ。まったく厄介な縁というか、負の歯車が噛み合わさっちまったらしい。焔と遼二が親友であると知ったことから、ヤツらは互いの目的の為に手を組むことにしたと思われる。米国でロンからの情報を待っていた唐静雨に、サリーの名で偽旅券を作り、日本に呼び寄せて合流。今回の拉致計画を練ったってところだろう」
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる