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極道の姐
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「まさか、そんな……! っていうことは……今回の拉致にはサリーも絡んでるってわけですか!?」
「おそらくは。サリーの足取りの裏を取る為に、彼女が務めている銀座のクラブ・ジュエラ――つまりは君江の店だが――、ここ数日サリーが店に出ているかどうかを確認したところ、案の定欠勤しているとのことだった。まあ、サリーは近い内にジュエラを辞めて自分の店を持つつもりだったわけだから、君江にしてみれば最後の有給休暇という認識でいたようだ。同僚ホステスの話によると、海外旅行に出掛けると聞いていたそうだ。以上のことから、ほぼ間違いなくサリーと唐静雨は今現在一緒にいると推測できる」
「ってことは……目的は遼と……」
「白龍の両方っていうことなんですね?」
紫月と冰の声が重なる。
「おそらく間違いないだろう。焔と遼二が一緒に採掘場に出掛けるこの機会に拉致していることからも、そう考えるのが妥当だ。採掘場が比較的マカオに近かったというのもあるし、拉致の実行犯に現地の民族を引きずり込めば、当局に通報される危険性も薄い。わずかばかりの金を握らせて丸め込むのは容易かったんだろう。ヤツらにとっては都合のいいことが重なったというわけだ」
まさに負の歯車が上手いこと噛み合わさってしまったという他ない。
「けど、あの二人を拉致して女たちの目的は何なんでしょう? サリーは遼を脅迫して後見に『うん』と言わせるつもりなのかも知れませんが、唐静雨って女の方は氷川に復讐でもするつもりなのか? それともまだ恋人になる望みを捨ててないとか……」
「そこまではさすがに計りかねるが、それを知る為にもとにかくは現状を把握する必要がある。俺が潜入して盗聴器とサーモグラフィーを仕掛けてくるから、中の様子を見て救出の手立てを練ることにしよう。上手いこと監禁されている位置に近付けるようなら監視カメラも仕掛けられる。源さん、念の為その三つを用意してくれ」
「かしこまりました!」
僚一が早速に源次郎から機器を預かると、すかさず紫月と冰も一緒に行くと申し出た。
「お前さんらの気持ちは分かるが、ここは俺が単独で行った方が気付かれにくいだろう。もしも猶予のならない事態に陥っているようであれば連絡を入れるから、その時は応援に来てくれ」
仮に暴行などを受けていて怪我を負わされているなどの状況が確認された場合は、即刻踏み込もうというわけだ。
「親父っさん……」
「大丈夫だ。俺も機器を仕掛けたらすぐに戻る。ロンという男は助っ人として他にも数人の男たちを従えているようだからな。それが何人なのかも分からんし、誰一人逃さず一網打尽にするには焦りは禁物だ。お前たちは心配せずに、どんな状況になっても即座に動けるように待機しているんだ」
僚一が紫月と冰の肩を抱いてそう言う。
「分かりました。ではよろしく頼みます」
「ああ、任せろ」
そうして僚一が向かいのホテルへと潜入するのを逸る気持ちで見送ったのだった。
「おそらくは。サリーの足取りの裏を取る為に、彼女が務めている銀座のクラブ・ジュエラ――つまりは君江の店だが――、ここ数日サリーが店に出ているかどうかを確認したところ、案の定欠勤しているとのことだった。まあ、サリーは近い内にジュエラを辞めて自分の店を持つつもりだったわけだから、君江にしてみれば最後の有給休暇という認識でいたようだ。同僚ホステスの話によると、海外旅行に出掛けると聞いていたそうだ。以上のことから、ほぼ間違いなくサリーと唐静雨は今現在一緒にいると推測できる」
「ってことは……目的は遼と……」
「白龍の両方っていうことなんですね?」
紫月と冰の声が重なる。
「おそらく間違いないだろう。焔と遼二が一緒に採掘場に出掛けるこの機会に拉致していることからも、そう考えるのが妥当だ。採掘場が比較的マカオに近かったというのもあるし、拉致の実行犯に現地の民族を引きずり込めば、当局に通報される危険性も薄い。わずかばかりの金を握らせて丸め込むのは容易かったんだろう。ヤツらにとっては都合のいいことが重なったというわけだ」
まさに負の歯車が上手いこと噛み合わさってしまったという他ない。
「けど、あの二人を拉致して女たちの目的は何なんでしょう? サリーは遼を脅迫して後見に『うん』と言わせるつもりなのかも知れませんが、唐静雨って女の方は氷川に復讐でもするつもりなのか? それともまだ恋人になる望みを捨ててないとか……」
「そこまではさすがに計りかねるが、それを知る為にもとにかくは現状を把握する必要がある。俺が潜入して盗聴器とサーモグラフィーを仕掛けてくるから、中の様子を見て救出の手立てを練ることにしよう。上手いこと監禁されている位置に近付けるようなら監視カメラも仕掛けられる。源さん、念の為その三つを用意してくれ」
「かしこまりました!」
僚一が早速に源次郎から機器を預かると、すかさず紫月と冰も一緒に行くと申し出た。
「お前さんらの気持ちは分かるが、ここは俺が単独で行った方が気付かれにくいだろう。もしも猶予のならない事態に陥っているようであれば連絡を入れるから、その時は応援に来てくれ」
仮に暴行などを受けていて怪我を負わされているなどの状況が確認された場合は、即刻踏み込もうというわけだ。
「親父っさん……」
「大丈夫だ。俺も機器を仕掛けたらすぐに戻る。ロンという男は助っ人として他にも数人の男たちを従えているようだからな。それが何人なのかも分からんし、誰一人逃さず一網打尽にするには焦りは禁物だ。お前たちは心配せずに、どんな状況になっても即座に動けるように待機しているんだ」
僚一が紫月と冰の肩を抱いてそう言う。
「分かりました。ではよろしく頼みます」
「ああ、任せろ」
そうして僚一が向かいのホテルへと潜入するのを逸る気持ちで見送ったのだった。
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