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極道の姐
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ほどなくして機器を仕掛け終えた彼が戻って来ると、内部の様子も徐々に明らかとなってきた。時を同じくして張敏の知り合いだというここいら一帯を仕切るボスの男が、ロンという男と会った際の防犯カメラ映像を持ってやって来た。
「これがロンか……」
「一緒にいる女性は……やはり唐静雨さんのようですね」
紫月と冰が映像に被り付きで目を凝らす。
「映っているのは二人だけだな。サリーの姿は見当たらねえ」
ということは、ボスの男のところに挨拶に来たのはロンと唐静雨の二人だけだったのだろう。
「ついでにホテルの見取り図が載っているパンフレットが見つかったんで持って来たぜ。創業当時のかなり古いもんだが、何かの役に立つかと思ってよ」
ボスの男が気をきかせて探し出してくれたのだ。皆にとっては有り難いことこの上なかった。
彼に礼を述べてパンフレットの見取り図と周らのGPSが示す位置を重ね合わせていく。それによると、周と鐘崎は廊下を挟んだ対面の客室に離れ離れで捕らわれているらしいことが分かってきた。
「別々の部屋か……。兄貴の風さんは氷川と一緒のようだな」
しばらくすると、階下から誰かが登ってくると思われる足音がして、ドアが開かれた気配が盗聴器から聞こえてきたのに、一気に緊張が走った。
「感度は問題ありません! 息遣いから衣擦れの音まではっきり拾えています」
源次郎のその言葉で皆一斉に耳をこらす。すると、まずは男の声で『チッ、いつまで寝てやがる! いい加減起きねえか!』という言葉が聞こえてきた。言語は英語だ。
「こいつがロンか……?」
「起きろと言っていますね。ということは、白龍たちはまだ催眠剤が切れていないということでしょうか……」
そうであれば、今のところ暴行などといった目には遭っていない可能性が高い。紫月と冰の表情にもわずか安堵の色が浮かぶ。
僚一が仕掛けてきた機器類は盗聴器とサーモグラフィー、そして監視カメラも一応は取り付けてきたものの、さすがに三人が監禁されている部屋までは辿り着けなかったようである。それでもホテルロビーが見渡せる吹き抜けの天井部分に監視カメラを設置できたので、犯人の人数などはおおよその見当がつきそうだ。とにかくは盗聴器の音から三人の様子を探るのが先決といえた。
皆で耳をこらしていると、突如ドカッという鈍い音と共に何かがミシミシと軋むような感覚が窺えた。部屋の梁か何かを蹴り上げたような音だ。続いてロンと思われる男の怒号が室内にこだましたと思ったら、聴き慣れた声音が割合冷静な感じで続いたのに一同はハッと目を見合わせた。
『起きやがれ! このクズ共がッ!』
『そう騒ぐな。耳に響く』
まぎれもない、周の声だ。それを聞くと同時に、冰が誰よりも身を乗り出して集音器の前で息をひそめた。
「これがロンか……」
「一緒にいる女性は……やはり唐静雨さんのようですね」
紫月と冰が映像に被り付きで目を凝らす。
「映っているのは二人だけだな。サリーの姿は見当たらねえ」
ということは、ボスの男のところに挨拶に来たのはロンと唐静雨の二人だけだったのだろう。
「ついでにホテルの見取り図が載っているパンフレットが見つかったんで持って来たぜ。創業当時のかなり古いもんだが、何かの役に立つかと思ってよ」
ボスの男が気をきかせて探し出してくれたのだ。皆にとっては有り難いことこの上なかった。
彼に礼を述べてパンフレットの見取り図と周らのGPSが示す位置を重ね合わせていく。それによると、周と鐘崎は廊下を挟んだ対面の客室に離れ離れで捕らわれているらしいことが分かってきた。
「別々の部屋か……。兄貴の風さんは氷川と一緒のようだな」
しばらくすると、階下から誰かが登ってくると思われる足音がして、ドアが開かれた気配が盗聴器から聞こえてきたのに、一気に緊張が走った。
「感度は問題ありません! 息遣いから衣擦れの音まではっきり拾えています」
源次郎のその言葉で皆一斉に耳をこらす。すると、まずは男の声で『チッ、いつまで寝てやがる! いい加減起きねえか!』という言葉が聞こえてきた。言語は英語だ。
「こいつがロンか……?」
「起きろと言っていますね。ということは、白龍たちはまだ催眠剤が切れていないということでしょうか……」
そうであれば、今のところ暴行などといった目には遭っていない可能性が高い。紫月と冰の表情にもわずか安堵の色が浮かぶ。
僚一が仕掛けてきた機器類は盗聴器とサーモグラフィー、そして監視カメラも一応は取り付けてきたものの、さすがに三人が監禁されている部屋までは辿り着けなかったようである。それでもホテルロビーが見渡せる吹き抜けの天井部分に監視カメラを設置できたので、犯人の人数などはおおよその見当がつきそうだ。とにかくは盗聴器の音から三人の様子を探るのが先決といえた。
皆で耳をこらしていると、突如ドカッという鈍い音と共に何かがミシミシと軋むような感覚が窺えた。部屋の梁か何かを蹴り上げたような音だ。続いてロンと思われる男の怒号が室内にこだましたと思ったら、聴き慣れた声音が割合冷静な感じで続いたのに一同はハッと目を見合わせた。
『起きやがれ! このクズ共がッ!』
『そう騒ぐな。耳に響く』
まぎれもない、周の声だ。それを聞くと同時に、冰が誰よりも身を乗り出して集音器の前で息をひそめた。
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