極道恋事情

一園木蓮

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極道の姐

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「では、冰に付いて行くのは私の側近たちの中から特に体術に優れた者を出そう。李は私と共にここに残って引き続き通信機器からの傍受と、それを冰らに伝えることに専念してくれ」
 隼がそう言うので、李は引き続きこの場での作業に徹することとなった。敵味方全員の位置や刻々と変わる状況をいち早く察知して、それぞれの現場へ的確な指示を出す重要な役目でもある。李は確実に任務を遂行すべく、より一層気を引き締めるのだった。
 一方、冰は異国マフィアに扮する為、フォーマルなスーツへの着替えに取り掛かる。今回の旅ではカジュアルな服装を多く持参して来たのだが、道路開発の完成祝いの宴用にと改まった礼装も用意してきて正解だった。
「それからお父様、もしも可能でしたら、さっき白龍が言っていたトカレフという拳銃を改造したものなどは用意できますでしょうか?」
 着替えながら冰が訊く。
「――トカレフ自体は用意できるが、改造というと?」
「実弾の代わりに血糊が飛び出すようなオモチャの銃……なんてありませんよね……」
 冰は自分で言っておいて、そんな都合のいいものがあるわけもないと申し訳なさそうな顔をする。ところが、意外なことにその答えは張敏からもたらされた。
「着弾と同時に血糊が噴き出すモデルガンだったら俺が用意できるぞ。発射音もよほどのプロでなければ見分けがつかない代物だ」
「張さん! 本当ですかッ!?」
「ああ。実は脅し……というと言葉が悪いが、ハッタリをかます目的でそういった類のモデルガンなどを少しばかり所持していてね。ただし、型はトカレフではないんだが……それでもいいかい?」
「構いません! そこは何とか上手くごまかせるよう考えます」
「そうか。お役に立てれば何よりだよ」
 張はタジタジと頭を掻きながら苦笑したが、冰らに出会う以前は確かに後ろ暗いことにも手を染めていた張ならではの用意だったのだろう。特に隼の前では昔の悪どい手腕を知られるのが気まずいといった調子であったが、今更隠したところで仕方がない。とにかく今は役に立つなら包み隠さず提供したいという張の思いに、隼も素直に礼を述べたのだった。
「ではすぐに部下に言って届けさせよう。だが、そんな物をどうするつもりなんだい?」
 張が目を丸くしながら冰に訊いている。
「ええ、もしも俺が白龍を撃てと言われた場合に最終手段として使えると思うのと、さっきロンという人が言っていたように白龍とお兄様がどうあっても撃ち合いをさせられる状況になったら、二人にその銃を持たせて撃ち合ってもらおうかと思っています。ロンが用意した本物の拳銃とモデルガンをすり替えるのは俺が上手くやりますので」
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