348 / 1,212
極道の姐
36
しおりを挟む
「いいわ。じゃあ一緒に焔に報復してやりましょう! 今のあなたの話を聞いて、まさか焔がそこまで最低だったなんて驚いたけど……。正直なところ、アタシは例の横領金程度で済んで幸いだったのかも知れないって思ったわ。あんな男はこの世から葬ってやるのが後々の為よね! 生かしておいたらこの先もアタシやあなたのように泣きを見る人間が何人出るか分からないもの。そんな悲惨な女性たちを出さない為にも二人であの男を地獄に送ってやりましょう!」
静雨は意気込んでそう言うと共に、気の触れたような高笑いをしてみせた。そして、満足するまで周兄弟を甚った後に彼らに銃で相討ちさせる計画を誇らしげに話して聞かせた。
「拳銃はこのロンが用意してくれているわ。これであの兄弟に撃ち合いをさせるのよ」
やはり先程集音器で聞いた通りの手順を実行するつもりらしい。既に彼女らの計画は承知だったが、冰は薄らっとぼけて聞き返した。
「撃ち合いだ?」
「そうよ。あんな男の為にアタシたちが手を汚す必要はないもの! そうは思わない?」
「ふぅん? まあ一理あるけどな。で、拳銃ってのは? 疑うわけじゃねえが、マトモに使い物になる代物なんだろうな?」
今度はその拳銃を見せろと顎をしゃくってみせる。撃ち合いをさせると聞かされても顔色ひとつ変えない冰の様子に、本当に周を恨んでいることが窺えるわけか、はたまたそれと同時に相当場慣れしていると感じた様子のロンが自慢げに二丁の銃を差し出してみせた。
「ほら、見てくれ! あんたもマフィアだって話だが、俺だってニューヨークじゃ名のある組織の一員だったんだ。足の付かねえ銃を手に入れるくらい朝飯前さ!」
密かに自分の立場も大したものなのだと自慢したいのだろう。だが、冰は差し出された銃を目にするなり鼻で笑ってみせた。
「は――、トカレフかよ。悪いがそんなモンじゃ俺の気は到底収まらないね!」
言うと同時に懐から鈍色に光るずっしりとした代物をチラつかせては舌舐めずりをしてみせた。
「ゲッ……! ま、まさかそれ……! マ、マグナム……っスか?」
あまりの驚きにロンがひっくり返ったような声を上げた。言葉じりも敬語になっているところが笑えるが、当の本人はまったく気がついていないようだ。つまり、それほど驚いたということなのだろう。
「そ! コルトパイソン・マグナム、俺の爺さんのそのまた爺さんだっけかな。とにかく代々我が家に受け継がれている愛用の銃さ。撃ち合いなんてチンケなことはさせやしねえ。こちとら捨てられただけじゃねんだ! 莫大な金まで持ち逃げされたんだぞ! 周焔から全額取り返して、俺がこの手で仕留めなきゃ腹の虫が収まらねえ!」
ガゴッという独特な音と共に撃鉄をチラつかせ、ギラギラと剣を伴った瞳を瞬かせる。そんな様子に更に尻込んだのか、ロンも静雨も冰のただ者ではない雰囲気に冷や汗を伴ったような苦笑を浮かべている。そして、それは張やボスの男らにとっても同様だったようだ。
静雨は意気込んでそう言うと共に、気の触れたような高笑いをしてみせた。そして、満足するまで周兄弟を甚った後に彼らに銃で相討ちさせる計画を誇らしげに話して聞かせた。
「拳銃はこのロンが用意してくれているわ。これであの兄弟に撃ち合いをさせるのよ」
やはり先程集音器で聞いた通りの手順を実行するつもりらしい。既に彼女らの計画は承知だったが、冰は薄らっとぼけて聞き返した。
「撃ち合いだ?」
「そうよ。あんな男の為にアタシたちが手を汚す必要はないもの! そうは思わない?」
「ふぅん? まあ一理あるけどな。で、拳銃ってのは? 疑うわけじゃねえが、マトモに使い物になる代物なんだろうな?」
今度はその拳銃を見せろと顎をしゃくってみせる。撃ち合いをさせると聞かされても顔色ひとつ変えない冰の様子に、本当に周を恨んでいることが窺えるわけか、はたまたそれと同時に相当場慣れしていると感じた様子のロンが自慢げに二丁の銃を差し出してみせた。
「ほら、見てくれ! あんたもマフィアだって話だが、俺だってニューヨークじゃ名のある組織の一員だったんだ。足の付かねえ銃を手に入れるくらい朝飯前さ!」
密かに自分の立場も大したものなのだと自慢したいのだろう。だが、冰は差し出された銃を目にするなり鼻で笑ってみせた。
「は――、トカレフかよ。悪いがそんなモンじゃ俺の気は到底収まらないね!」
言うと同時に懐から鈍色に光るずっしりとした代物をチラつかせては舌舐めずりをしてみせた。
「ゲッ……! ま、まさかそれ……! マ、マグナム……っスか?」
あまりの驚きにロンがひっくり返ったような声を上げた。言葉じりも敬語になっているところが笑えるが、当の本人はまったく気がついていないようだ。つまり、それほど驚いたということなのだろう。
「そ! コルトパイソン・マグナム、俺の爺さんのそのまた爺さんだっけかな。とにかく代々我が家に受け継がれている愛用の銃さ。撃ち合いなんてチンケなことはさせやしねえ。こちとら捨てられただけじゃねんだ! 莫大な金まで持ち逃げされたんだぞ! 周焔から全額取り返して、俺がこの手で仕留めなきゃ腹の虫が収まらねえ!」
ガゴッという独特な音と共に撃鉄をチラつかせ、ギラギラと剣を伴った瞳を瞬かせる。そんな様子に更に尻込んだのか、ロンも静雨も冰のただ者ではない雰囲気に冷や汗を伴ったような苦笑を浮かべている。そして、それは張やボスの男らにとっても同様だったようだ。
26
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる