349 / 1,212
極道の姐
37
しおりを挟む
(おい、張……。奴さん、いったい何者なんだ? さっきまでの従順そうな若者とはまるで別人じゃねえか。ホントはめちゃくちゃヤバい野郎なんじゃねえのか?)
ボスの男がヒソヒソと張に耳打ちする。
(はは……確かに。ある意味、雪吹君はヤバいヤツだと言えるだろうな)
張自身、冰の演技にはまんまと騙された経験者である。彼の風貌からは想像もできない大胆な演技を苦もなくサラリと演りきってしまうあたりは、確かに”ヤバい”と例えざるを得ない。
張としてもずっと以前から冰を知っているというわけではないが、これまで付き合ってきた限りでは、大層頭がキレて、尚且つ性質は穏やかでやさしい青年だという印象しかないわけだ。だが、今の彼の様子を見ていると、どこまでが本当の彼でどこからが演技なのかが分からなくなりそうな気にさせられてしまう。ただひとつ言えることは、張も絶大な信頼をおく香港マフィア頭領の周隼が実の息子同様と言い切ったほどである。おそらく本当の冰は張が思っているままの穏やかで人のいい青年なのだろう。それを証拠に言葉使いひとつをとっても張の知っている彼とは別人であることから、明らかに今の状態は演技なのだろう。愛する周焔を助ける為とはいえ、本来の自分とは真逆の悪人面になりきっているのである。まさに命がけの大勝負といえる。
(さっき雪吹君自身も言っていただろう? 俺たちに対しても高飛車な態度を取ってしまうがすまないと)
(ああ、確かにな。こんなことを言っちゃ悪いが、俺としてはあんな気の弱そうな若い男にロンたちを騙すことができるのかって心配だったんだが、余計な節介だったようだな。いや、驚いた……! 実に大したもんだ)
ボスの男がしきじきと関心しまくっている。
(驚くのはまだ早い。雪吹君のことだ。これからもっと俺たちを仰天させるような手腕を披露してくれるかも知れんぞ)
男の身でマフィアのファミリーに嫁ぎ、亭主を支える姐の覚悟がひしひしと伝わってくるようだ。華奢な肢体を存分に大きく見せるように振る舞って、精一杯自分を奮い立たせているのだろう。張は大勝負に挑む冰の姿を目の当たりにしながら、あっぱれとも哀れともつかない言いようのない気持ちがこみ上げてならなかった。
(まあ、滅多にない機会だ。おおよそお目に掛かれない周一族の姐さんの手腕をお前さんもよく目に焼き付けておくといい)
そう言って苦笑しながらも、内心で冰の底知れぬオーラにゾクゾクと背筋を伝う例えようのない感嘆の思いが湧き上がるのを感じたのだった。
側ではいよいよ冰が周との対面を果たすべく追い討ちに掛かっていく。
「じゃ、そろそろ周焔のツラを拝ませてもらおうか。言っておくが、ただ殺っちまうなんて甘っちょろいことはしねえからな! まずはあの野郎が巻き上げてくれた俺の金を返してもらうのが何より先だ。それまであんたらはぜってえ手出すなよ?」
大金を盾にしながら、周本人の身の安全を確実に約束させるあたりは実に巧妙といえる。案の定、ロンも素直に聞き入れるそぶりを見せている。
ボスの男がヒソヒソと張に耳打ちする。
(はは……確かに。ある意味、雪吹君はヤバいヤツだと言えるだろうな)
張自身、冰の演技にはまんまと騙された経験者である。彼の風貌からは想像もできない大胆な演技を苦もなくサラリと演りきってしまうあたりは、確かに”ヤバい”と例えざるを得ない。
張としてもずっと以前から冰を知っているというわけではないが、これまで付き合ってきた限りでは、大層頭がキレて、尚且つ性質は穏やかでやさしい青年だという印象しかないわけだ。だが、今の彼の様子を見ていると、どこまでが本当の彼でどこからが演技なのかが分からなくなりそうな気にさせられてしまう。ただひとつ言えることは、張も絶大な信頼をおく香港マフィア頭領の周隼が実の息子同様と言い切ったほどである。おそらく本当の冰は張が思っているままの穏やかで人のいい青年なのだろう。それを証拠に言葉使いひとつをとっても張の知っている彼とは別人であることから、明らかに今の状態は演技なのだろう。愛する周焔を助ける為とはいえ、本来の自分とは真逆の悪人面になりきっているのである。まさに命がけの大勝負といえる。
(さっき雪吹君自身も言っていただろう? 俺たちに対しても高飛車な態度を取ってしまうがすまないと)
(ああ、確かにな。こんなことを言っちゃ悪いが、俺としてはあんな気の弱そうな若い男にロンたちを騙すことができるのかって心配だったんだが、余計な節介だったようだな。いや、驚いた……! 実に大したもんだ)
ボスの男がしきじきと関心しまくっている。
(驚くのはまだ早い。雪吹君のことだ。これからもっと俺たちを仰天させるような手腕を披露してくれるかも知れんぞ)
男の身でマフィアのファミリーに嫁ぎ、亭主を支える姐の覚悟がひしひしと伝わってくるようだ。華奢な肢体を存分に大きく見せるように振る舞って、精一杯自分を奮い立たせているのだろう。張は大勝負に挑む冰の姿を目の当たりにしながら、あっぱれとも哀れともつかない言いようのない気持ちがこみ上げてならなかった。
(まあ、滅多にない機会だ。おおよそお目に掛かれない周一族の姐さんの手腕をお前さんもよく目に焼き付けておくといい)
そう言って苦笑しながらも、内心で冰の底知れぬオーラにゾクゾクと背筋を伝う例えようのない感嘆の思いが湧き上がるのを感じたのだった。
側ではいよいよ冰が周との対面を果たすべく追い討ちに掛かっていく。
「じゃ、そろそろ周焔のツラを拝ませてもらおうか。言っておくが、ただ殺っちまうなんて甘っちょろいことはしねえからな! まずはあの野郎が巻き上げてくれた俺の金を返してもらうのが何より先だ。それまであんたらはぜってえ手出すなよ?」
大金を盾にしながら、周本人の身の安全を確実に約束させるあたりは実に巧妙といえる。案の定、ロンも素直に聞き入れるそぶりを見せている。
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる