極道恋事情

一園木蓮

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極道の姐

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「へえ、へえ、そりゃもう! 兄さんが気の済むようになさってくれて構いませんぜ! まあ、俺も周風のヤツを一、二発撫でてやるくらいはさしてもらえればと思いますけど……」
 ロンがすっかり下手にまわっている。この短い間に冰のオーラに飲み込まれてしまったということなのか。冰自身はそんな扱いも当然といったふうに満足そうな笑みを浮かべている。
「なに――、上手く金が戻ってくれば、心ばかりだがアンタらにも礼金を弾んでやるさ。何てったって周焔を狩れるこんないい機会に便乗させてもらえるんだからな?」
 期待していいぞとばかりに冰は笑った。
「お、おお! ホントですかッ!? 兄さん、さすが違いますね! 話が分かっていらっしゃる!」
 金をもらえると聞いて、ロンは最高潮に上機嫌だ。静雨にしても横領金の一件以来、金に苦労していたのは事実なのだろう。少しでも潤うと思うと彼女の表情にも安堵の色が浮かぶ。二人共に完璧に冰に丸め込まれたといった様子だった。
「あの兄弟の部屋は二階ですぜ! 案内しますんで、どうぞこちらへ」
「ああ。楽しみだ――」
 堂々とした態度を醸し出しながらうなずくかたわら、いよいよ周との対面の時に一層気を引き締める冰であった。

 一方、裏口からの別ルートで潜入に挑んでいた紫月と僚一も、冰らが表から敵を釘付けにしてくれているお陰で、容易く建物内へと潜り込めていた。
「女たちは既に休んでいたスイートルームを出たようだな。唐静雨は一階のロビーで冰の相手をしているが、サリーの方は見当たらんな」
「じゃあ、彼女は先に遼の捕らえられている部屋へ向かったということでしょうか?」
「そのようだ。化粧道具が散らばっている。シャワーも使われているところをみると、ロンっていうヤツはここへ滞在することを見込んで事前に少しライフラインを復活させていたんだろう」
「案外綿密に今回の計画を練ってたってことですね」
「そのようだ。サリーと静雨は先に来てここで数日過ごしたのかも知れん」
 十年以上も廃墟になっていたにしては小綺麗な室内の様子を見渡しながら、僚一が彼女らの足取りを推測していく。
「ここはサリーの使っていた部屋に違いない。持ち物の中にあの女が好んで吸っていた銘柄の煙草がある。一応めかし込んで遼二の元へ向かったようだな。俺たちも後を追うぞ」
「はい!」
 二人はサリーがいたらしいスイートルームを一通り調べてから、二階へと急ぐことにした。

 階下のロビーからは人の話し声が聞こえている。ちょうど冰がロンたちと対峙中なのだろう。時折ロンらしき男の感嘆のような声音が混じっていることから、冰の方でも上手く事が運んでいることが窺える。
「冰に何かあれば李から連絡がくるはずだ。俺たちは遼二の部屋へ回ろう」
「了解しました!」
 と、ちょうどその時だ。集音器から皆の様子を窺っていた李からの通信が届いた。
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