350 / 1,212
極道の姐
38
しおりを挟む
「へえ、へえ、そりゃもう! 兄さんが気の済むようになさってくれて構いませんぜ! まあ、俺も周風のヤツを一、二発撫でてやるくらいはさしてもらえればと思いますけど……」
ロンがすっかり下手にまわっている。この短い間に冰のオーラに飲み込まれてしまったということなのか。冰自身はそんな扱いも当然といったふうに満足そうな笑みを浮かべている。
「なに――、上手く金が戻ってくれば、心ばかりだがアンタらにも礼金を弾んでやるさ。何てったって周焔を狩れるこんないい機会に便乗させてもらえるんだからな?」
期待していいぞとばかりに冰は笑った。
「お、おお! ホントですかッ!? 兄さん、さすが違いますね! 話が分かっていらっしゃる!」
金をもらえると聞いて、ロンは最高潮に上機嫌だ。静雨にしても横領金の一件以来、金に苦労していたのは事実なのだろう。少しでも潤うと思うと彼女の表情にも安堵の色が浮かぶ。二人共に完璧に冰に丸め込まれたといった様子だった。
「あの兄弟の部屋は二階ですぜ! 案内しますんで、どうぞこちらへ」
「ああ。楽しみだ――」
堂々とした態度を醸し出しながらうなずくかたわら、いよいよ周との対面の時に一層気を引き締める冰であった。
一方、裏口からの別ルートで潜入に挑んでいた紫月と僚一も、冰らが表から敵を釘付けにしてくれているお陰で、容易く建物内へと潜り込めていた。
「女たちは既に休んでいたスイートルームを出たようだな。唐静雨は一階のロビーで冰の相手をしているが、サリーの方は見当たらんな」
「じゃあ、彼女は先に遼の捕らえられている部屋へ向かったということでしょうか?」
「そのようだ。化粧道具が散らばっている。シャワーも使われているところをみると、ロンっていうヤツはここへ滞在することを見込んで事前に少しライフラインを復活させていたんだろう」
「案外綿密に今回の計画を練ってたってことですね」
「そのようだ。サリーと静雨は先に来てここで数日過ごしたのかも知れん」
十年以上も廃墟になっていたにしては小綺麗な室内の様子を見渡しながら、僚一が彼女らの足取りを推測していく。
「ここはサリーの使っていた部屋に違いない。持ち物の中にあの女が好んで吸っていた銘柄の煙草がある。一応めかし込んで遼二の元へ向かったようだな。俺たちも後を追うぞ」
「はい!」
二人はサリーがいたらしいスイートルームを一通り調べてから、二階へと急ぐことにした。
階下のロビーからは人の話し声が聞こえている。ちょうど冰がロンたちと対峙中なのだろう。時折ロンらしき男の感嘆のような声音が混じっていることから、冰の方でも上手く事が運んでいることが窺える。
「冰に何かあれば李から連絡がくるはずだ。俺たちは遼二の部屋へ回ろう」
「了解しました!」
と、ちょうどその時だ。集音器から皆の様子を窺っていた李からの通信が届いた。
ロンがすっかり下手にまわっている。この短い間に冰のオーラに飲み込まれてしまったということなのか。冰自身はそんな扱いも当然といったふうに満足そうな笑みを浮かべている。
「なに――、上手く金が戻ってくれば、心ばかりだがアンタらにも礼金を弾んでやるさ。何てったって周焔を狩れるこんないい機会に便乗させてもらえるんだからな?」
期待していいぞとばかりに冰は笑った。
「お、おお! ホントですかッ!? 兄さん、さすが違いますね! 話が分かっていらっしゃる!」
金をもらえると聞いて、ロンは最高潮に上機嫌だ。静雨にしても横領金の一件以来、金に苦労していたのは事実なのだろう。少しでも潤うと思うと彼女の表情にも安堵の色が浮かぶ。二人共に完璧に冰に丸め込まれたといった様子だった。
「あの兄弟の部屋は二階ですぜ! 案内しますんで、どうぞこちらへ」
「ああ。楽しみだ――」
堂々とした態度を醸し出しながらうなずくかたわら、いよいよ周との対面の時に一層気を引き締める冰であった。
一方、裏口からの別ルートで潜入に挑んでいた紫月と僚一も、冰らが表から敵を釘付けにしてくれているお陰で、容易く建物内へと潜り込めていた。
「女たちは既に休んでいたスイートルームを出たようだな。唐静雨は一階のロビーで冰の相手をしているが、サリーの方は見当たらんな」
「じゃあ、彼女は先に遼の捕らえられている部屋へ向かったということでしょうか?」
「そのようだ。化粧道具が散らばっている。シャワーも使われているところをみると、ロンっていうヤツはここへ滞在することを見込んで事前に少しライフラインを復活させていたんだろう」
「案外綿密に今回の計画を練ってたってことですね」
「そのようだ。サリーと静雨は先に来てここで数日過ごしたのかも知れん」
十年以上も廃墟になっていたにしては小綺麗な室内の様子を見渡しながら、僚一が彼女らの足取りを推測していく。
「ここはサリーの使っていた部屋に違いない。持ち物の中にあの女が好んで吸っていた銘柄の煙草がある。一応めかし込んで遼二の元へ向かったようだな。俺たちも後を追うぞ」
「はい!」
二人はサリーがいたらしいスイートルームを一通り調べてから、二階へと急ぐことにした。
階下のロビーからは人の話し声が聞こえている。ちょうど冰がロンたちと対峙中なのだろう。時折ロンらしき男の感嘆のような声音が混じっていることから、冰の方でも上手く事が運んでいることが窺える。
「冰に何かあれば李から連絡がくるはずだ。俺たちは遼二の部屋へ回ろう」
「了解しました!」
と、ちょうどその時だ。集音器から皆の様子を窺っていた李からの通信が届いた。
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる