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極道の姐
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「俺はお前を抱くつもりはねえ……ッ!」
「そんなこと言ってられるのも今の内よ。それにね、遼二。今は子供なんかいらないと思っていても、あと数年もすればあなたも気が変わるはずよ。例えあなたがアタシを嫌っていようと子供は紛れもなくあなたの子なんですもの。あなただってずっと若いままではいられないわ。歳をとれば自分の一粒種を愛しく思う日が必ずやってくるわ」
「……ふざけたことを抜かしてんじゃねえ! 第一、てめえは愛されてもいねえ男の子供を産んで何がしたいってんだ! ガキだって不幸になるだけだぞ」
「心配には及ばないわ。アタシは何もあなたに愛してもらおうなんてこれっぽっちも思っちゃいないもの。あなたと紫月の仲を邪魔するつもりもないから安心していいわよ?」
「……だったら何が目的だ。ガキが欲しいだけなら好いた男と作りゃいいだろうが」
「アタシの目的はあなたじゃなくあなたの組の力よ。裏の世界で右に出る者はいないというほどの鐘崎組と血縁関係を作りたいだけ。それには子供ほど強力な鎹はないっていうことよ」
「要は権力が欲しいってか?」
「まあ、それだけっていうわけでもないけれどね。あなたは確かに群を抜いてイイ男だし、子供だってきっと美形に育つはずだもの。その点でもあなたは合格っていうわけ」
「……は! 呆れてモノが言えんな」
「そんなことよりそろそろ我慢も限界なんじゃなくて? さっきっから話を引き延ばして一生懸命気を逸らしているようだけど、随分と苦しそうよ? それを証拠にほら、ここ!」
女の白い手が鐘崎のボトムに触れる。
「……ッ! 触んじゃねえ!」
鐘崎の怒鳴り上げる切羽詰まった声が天井にいる紫月にも届いた。
「あら、早く触ってくれの間違いじゃないかしら? 何だったら口でしてあげてもいいのよ?」
女が身体を擦り寄せる雰囲気が衣擦れの音で伝わってくる。紫月の心臓がビクりと跳ねた。
下では二人の会話が続いている。
「……どこまでも下衆な女だな……てめえにゃプライドのかけらもねえのか! 愛してもいねえ男のモンをてめえから咥え込もうなんざ売女そのものだ」
苦しげな鐘崎の声音が、意思とは裏腹に色を欲している様子が伝わってくる。正直なところ身体は限界なのだろう。相手が誰であろうと、すぐにも口淫、あるいは触って欲しくて堪らないと悶え苦しんでいるのが紫月には痛いほど伝わってきていた。
「ほら、強がっていないで素直になりなさいよ。アタシは上手いわよ?」
女がジッパーを下ろさんとボトムに指を掛けたその時だ。
「……キャ……ッ!? 痛……ッ!」
どうやら鐘崎が女の髪を噛んで引き回したらしい。
「何すんのよッ!」
「俺はこの通り手脚を拘束されているわけだからな。使えるモンといや、この口しかねえ。腹が立ったならさっさとそこを退け!」
女にとっては自慢のロングヘアをむんずと掴み上げられたようなものだ。平手打ちされるよりもプライドを傷付けられたわけだろう、ワナワナと震え出す様子が窺えた。
「そんなこと言ってられるのも今の内よ。それにね、遼二。今は子供なんかいらないと思っていても、あと数年もすればあなたも気が変わるはずよ。例えあなたがアタシを嫌っていようと子供は紛れもなくあなたの子なんですもの。あなただってずっと若いままではいられないわ。歳をとれば自分の一粒種を愛しく思う日が必ずやってくるわ」
「……ふざけたことを抜かしてんじゃねえ! 第一、てめえは愛されてもいねえ男の子供を産んで何がしたいってんだ! ガキだって不幸になるだけだぞ」
「心配には及ばないわ。アタシは何もあなたに愛してもらおうなんてこれっぽっちも思っちゃいないもの。あなたと紫月の仲を邪魔するつもりもないから安心していいわよ?」
「……だったら何が目的だ。ガキが欲しいだけなら好いた男と作りゃいいだろうが」
「アタシの目的はあなたじゃなくあなたの組の力よ。裏の世界で右に出る者はいないというほどの鐘崎組と血縁関係を作りたいだけ。それには子供ほど強力な鎹はないっていうことよ」
「要は権力が欲しいってか?」
「まあ、それだけっていうわけでもないけれどね。あなたは確かに群を抜いてイイ男だし、子供だってきっと美形に育つはずだもの。その点でもあなたは合格っていうわけ」
「……は! 呆れてモノが言えんな」
「そんなことよりそろそろ我慢も限界なんじゃなくて? さっきっから話を引き延ばして一生懸命気を逸らしているようだけど、随分と苦しそうよ? それを証拠にほら、ここ!」
女の白い手が鐘崎のボトムに触れる。
「……ッ! 触んじゃねえ!」
鐘崎の怒鳴り上げる切羽詰まった声が天井にいる紫月にも届いた。
「あら、早く触ってくれの間違いじゃないかしら? 何だったら口でしてあげてもいいのよ?」
女が身体を擦り寄せる雰囲気が衣擦れの音で伝わってくる。紫月の心臓がビクりと跳ねた。
下では二人の会話が続いている。
「……どこまでも下衆な女だな……てめえにゃプライドのかけらもねえのか! 愛してもいねえ男のモンをてめえから咥え込もうなんざ売女そのものだ」
苦しげな鐘崎の声音が、意思とは裏腹に色を欲している様子が伝わってくる。正直なところ身体は限界なのだろう。相手が誰であろうと、すぐにも口淫、あるいは触って欲しくて堪らないと悶え苦しんでいるのが紫月には痛いほど伝わってきていた。
「ほら、強がっていないで素直になりなさいよ。アタシは上手いわよ?」
女がジッパーを下ろさんとボトムに指を掛けたその時だ。
「……キャ……ッ!? 痛……ッ!」
どうやら鐘崎が女の髪を噛んで引き回したらしい。
「何すんのよッ!」
「俺はこの通り手脚を拘束されているわけだからな。使えるモンといや、この口しかねえ。腹が立ったならさっさとそこを退け!」
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