極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
352 / 1,212
極道の姐

40

しおりを挟む
「よし、ここを少し広げれば行けそうだ。俺は作業に掛かる。紫月は二人の会話を拾ってくれ。密かに階下へ降りて女の背後に回り、有無を言わさず捕らえるのが第一目標だ。女に勘付かれて大声を出されれば、向かいの部屋の焔たちにも危険が及ぶ」
「はい」
「だが、もしも遼二の命にかかわるような切羽詰まった状況になった時はすぐに言え。その時は強行突破する」
「承知しました!」
 鐘崎とサリーの会話を追うのは紫月に任せて、僚一は換気口を広げる作業に取り掛かった。
 室内ではサリーの勝ち誇ったような声音が、まるで独り言のように繰り返されているようだ。時折短く相槌を打っているのは鐘崎の声に間違いない。その声のトーンや息づかいから、彼が今どういった体調にあるのか、またどんな感情で喋っているのか、事細かに聞き取ろうと紫月は耳を研ぎ澄ませた。
「ふふ、遼二。気分はどう? そろそろその気になってくれたかしら?」
 女の上機嫌な声がそう言う。鐘崎の方は一向に無視を決め込んでいるのか、ひと言も発しないところからすると相槌を返さずにそっぽを向いているといったところか。
「本当に強情ねぇ。でもいつまで持つかしら? あなた、ここ一週間は山奥の採掘場でお仲間たちと共同生活だったんでしょう? 皆の目がある中じゃ、あなたの自慢の紫月を抱くこともできなかったでしょうに。あなたのような男が一週間以上も禁欲状態だなんて気の毒な話よね? 強情張っても身体は正直だわ」
 ふふふと女が嬉しそうに笑う。会話の内容から察するに、催淫剤を盛られたというのは事実らしい。女は鐘崎が欲に負けて彼女を欲するのを待っているのだ。
 少しすると、若干息の上がったような鐘崎の声が聞こえてきた。
「……ッ、下衆なことを考えやがる。だが、お前の思い通りにはさせねえぜ……。俺はお前にガキを仕込むつもりなんぞ更々ねえ。諦めるんだな」
「ふふ、何とでも言えばいいわ。あなたがどんなに望まなくても薬の力には逆らえないわよ? これ、ものすごく強力なんですもの!」
「……は、どこまで浅はかなことを考えやがる! 仮にお前の望み通りになったとして、俺がガキを産ませると思うのか?」
「あら、まさか堕ろせとでも言うつもり? あなたにそんなことができるかしら?」
 女が笑う。言葉ではどう言おうが、根はやさしい鐘崎のことだ。如何に不本意といえど、授かった子供を葬ることなど到底できないと踏んでいるのだろう。
「目的は何だ……。ついこの前までは店の後見を迫ってたと思いきや、今度はガキか。話が飛び過ぎてついて行けんな!」
 いくら後見の承諾を取り付けたいからといえ、さすがに子供を作ってまで迫る必要があろうか。
 女には何か別に本当の目的があるのかも知れない――鐘崎はそう思っていた。
「あなたがどう思おうがどうでもいいのよ。とにかくアタシはあなたの子が欲しいの! あなただってアタシと寝られるんだから損にはならないはずよ? これでも銀座では引き手数多だったんですもの!」
 有り難く思ってちょうだいとでも言いたげである。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...