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極道の姐
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「なぁ、サリーちゃんよ。節介なことを言うようだが、こんだけの大それたことをやらかす気概があるなら、それをてめえが本当に惚れた男にぶつけるのが筋じゃねえのか? アンタの好きな森崎瑛二ってヤツに思ってることを全部さらけ出して体当たりしてみろよ! こんなところで自暴自棄ンなって他所の男と寝て、ガキをこさえたところでアンタの気持ちは晴れるのか? 晴れねえだろ?」
「……ッ」
「アンタは逃げてるだけだ。自分ごまかして、神経すり減らしてズタボロになるんなら、その労力を全部使って――そう、全身全霊込めて心底惚れてる野郎にぶつけろよ!」
「……何……よ、偉そうに……あなたにアタシの気持ちなんて分かんないわよッ……!」
言葉では反抗しつつも、紫月が真剣に言っていることだけは本能で分かるのだ。
本来ならば、『俺の男に何しやがる!』と、この場でねじ伏せられたとしても当然だろう。紫月はスレンダーだが体術に長けていることも知っている。鐘崎の伴侶であり姐さんと呼ばれていることからやわらかな印象を受けがちだが、道場育ちであるし、何より男性だから当然女のサリーよりも力は圧倒的に強いはずである。彼がほんの少し本気を出せば、簡単に殴られ蹴られして、今頃はすっかり気を失っていても不思議はないのだ。
だが、紫月は怒るより先に大きな心でこちらの気持ちを汲み取ろうとしてくれている。愛する男にちょっかいを出されて、横恋慕されそうになっているというのに、詰らずに心を通わせようとしてくれている。
様々な感情が一気にあふれ出したわけか、ワナワナと肩を震わせながらも、サリーの瞳は今にもあふれそうな大粒の涙でいっぱいになっていた。
「例え……瑛二にアタシの気持ちをぶつけたって……どうにもなりゃしないわ……! あの人はアタシよりも他の女を選んだの! だからこうするしかないのよ! 瑛二より権力も美貌も何もかもが優ってる遼二と縁を持つことでしかアタシは救われないのよ!」
堪え切れずにボロボロとこぼれ出した涙を拭いもせずに、サリーは拳を握り締めた。
「退いて……邪魔しないで……! どうしても聞き入れてくれないっていうなら……」
サリーはスカートを捲し上げると、ガーターに括り付けていたナイフを取り出し、震える手で切っ先を紫月へと向けた。
「退いてくれないならあなたを刺すわ……。本気よ……脅しなんかじゃないんだからッ!」
紫月は鐘崎が捕らわれているベッドの前へと立つと、彼の身を庇うように両手を広げてみせた。
「……退いて! 退きなさいってば! 本当に刺すわよ……あなたも、それに遼二も……! 庇うフリをすればアタシが怯むと思ったら大間違いよ! 女の力だってナメないでよね……。全身で体当たりすれば……あなたに大怪我させることだってできるんだからッ……。悪くすれば死んじゃうかも知れない! それでもいいのッ!?」
ガタガタと震えながらも精一杯吠えてみせる。だが、紫月は鐘崎の前から一歩も退こうとせずに、じっと真っ直ぐに彼女を見つめた。
「……ッ」
「アンタは逃げてるだけだ。自分ごまかして、神経すり減らしてズタボロになるんなら、その労力を全部使って――そう、全身全霊込めて心底惚れてる野郎にぶつけろよ!」
「……何……よ、偉そうに……あなたにアタシの気持ちなんて分かんないわよッ……!」
言葉では反抗しつつも、紫月が真剣に言っていることだけは本能で分かるのだ。
本来ならば、『俺の男に何しやがる!』と、この場でねじ伏せられたとしても当然だろう。紫月はスレンダーだが体術に長けていることも知っている。鐘崎の伴侶であり姐さんと呼ばれていることからやわらかな印象を受けがちだが、道場育ちであるし、何より男性だから当然女のサリーよりも力は圧倒的に強いはずである。彼がほんの少し本気を出せば、簡単に殴られ蹴られして、今頃はすっかり気を失っていても不思議はないのだ。
だが、紫月は怒るより先に大きな心でこちらの気持ちを汲み取ろうとしてくれている。愛する男にちょっかいを出されて、横恋慕されそうになっているというのに、詰らずに心を通わせようとしてくれている。
様々な感情が一気にあふれ出したわけか、ワナワナと肩を震わせながらも、サリーの瞳は今にもあふれそうな大粒の涙でいっぱいになっていた。
「例え……瑛二にアタシの気持ちをぶつけたって……どうにもなりゃしないわ……! あの人はアタシよりも他の女を選んだの! だからこうするしかないのよ! 瑛二より権力も美貌も何もかもが優ってる遼二と縁を持つことでしかアタシは救われないのよ!」
堪え切れずにボロボロとこぼれ出した涙を拭いもせずに、サリーは拳を握り締めた。
「退いて……邪魔しないで……! どうしても聞き入れてくれないっていうなら……」
サリーはスカートを捲し上げると、ガーターに括り付けていたナイフを取り出し、震える手で切っ先を紫月へと向けた。
「退いてくれないならあなたを刺すわ……。本気よ……脅しなんかじゃないんだからッ!」
紫月は鐘崎が捕らわれているベッドの前へと立つと、彼の身を庇うように両手を広げてみせた。
「……退いて! 退きなさいってば! 本当に刺すわよ……あなたも、それに遼二も……! 庇うフリをすればアタシが怯むと思ったら大間違いよ! 女の力だってナメないでよね……。全身で体当たりすれば……あなたに大怪我させることだってできるんだからッ……。悪くすれば死んじゃうかも知れない! それでもいいのッ!?」
ガタガタと震えながらも精一杯吠えてみせる。だが、紫月は鐘崎の前から一歩も退こうとせずに、じっと真っ直ぐに彼女を見つめた。
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