356 / 1,212
極道の姐
44
しおりを挟む
「あなた……紫月……ッ!? いったいどうやってここに……」
「ンなこたぁ、どうでもいい。俺りゃー、ただてめえの亭主の危機に駆け付けたまでだ」
紫月は抱き上げていたサリーを下ろすと、開けたワンピースの胸元を掴んで正し、自らの上着を押し付けた。
「とにかくそれを着ろ! うら若え女が、ンな破廉恥なカッコさらしてんじゃねえ」
サリーも正気を取り戻したわけか、慌てて受け取った上着で自らの胸元を隠した。
「話は全部聞かせてもらったぜ。あんたの気持ちも分からねえじゃねえが、バカなことはやめるんだ」
「な、何よ……。邪魔しないで!」
「そりゃ俺ン台詞だろ? 例えばあんたが遼二のことを好きで好きで仕方なくて、この世の誰よりも大事だってんならまだしもだ。ところが、他所の男への当て馬にする為だけにこんな目に遭わされたんじゃ到底黙っちゃいられねえさ。遼二は俺ン大事な、この世で唯一無二の亭主だからよ」
「そ……んなこと分かってるわよ! 銀座でもあなたたち二人のことは有名だし、アタシだって止むに止まれない事情で頼んでるんだから! 今後一切あなたたちに迷惑は掛けないわ! たった一回遼二を貸してくれるだけでいいって言ってるの! あなただって男なんだから、そのくらいどうってことないでしょ? 女みたいに嫉妬したりするわけもなし!」
またえらく勝手な言い分である。紫月は片眉をしかめながら呆れた溜め息をもらしてしまった。
「あンなぁ、野郎だからってヤキモチ焼かねえなんて思うなよ? じゃあ反対にあんたの男を一晩でいーから俺に貸してくれっつったら、あんたは『はい、どうぞ』って貸すンかよって話!」
「バ……! バカ言わないでよ! そんなの冗談じゃないわ!」
「だろ? 俺だって同じさ。てめえの亭主をモノみてえに扱われりゃ黙ってられねえだろうが。それにな、サリー。もしもアンタがホントにこいつのガキを産んだなんてことになったとしたら――そン時は俺が引き取って育てるぜ?」
「な、何ふざけたこと言ってんのよ……」
「俺は存外大真面目さ。遼二の子供なら俺の子供も同然だ。この世で一等大事な、てめえの命と引き換えてもいいと思えるたった一人の愛する男の子供なら心血注いで育てるさ」
「な、何よ……今度は惚気?」
「ああ、思いっきり惚気だ。だが、事実でもある。俺はこいつと一心同体と思って生きてる。こいつの痛みはダイレクトに俺の痛みだ。こいつの悩みは俺の悩みであり、こいつの幸せが俺の幸せだ。逆も然りだ。俺たちはそうやって一緒に生きてる。それが俺たちの誇りだ」
真っ直ぐに視線と視線を合わせて言い切る紫月の言葉に迷いは感じられない。惚気でも何でもない。本物の覚悟なのだ。
サリーにもそれが伝わったのだろう。特には大声で助けを呼ぶわけでもなく、棒立ち状態のままで紫月から視線を外すこともできずにいた。
「ンなこたぁ、どうでもいい。俺りゃー、ただてめえの亭主の危機に駆け付けたまでだ」
紫月は抱き上げていたサリーを下ろすと、開けたワンピースの胸元を掴んで正し、自らの上着を押し付けた。
「とにかくそれを着ろ! うら若え女が、ンな破廉恥なカッコさらしてんじゃねえ」
サリーも正気を取り戻したわけか、慌てて受け取った上着で自らの胸元を隠した。
「話は全部聞かせてもらったぜ。あんたの気持ちも分からねえじゃねえが、バカなことはやめるんだ」
「な、何よ……。邪魔しないで!」
「そりゃ俺ン台詞だろ? 例えばあんたが遼二のことを好きで好きで仕方なくて、この世の誰よりも大事だってんならまだしもだ。ところが、他所の男への当て馬にする為だけにこんな目に遭わされたんじゃ到底黙っちゃいられねえさ。遼二は俺ン大事な、この世で唯一無二の亭主だからよ」
「そ……んなこと分かってるわよ! 銀座でもあなたたち二人のことは有名だし、アタシだって止むに止まれない事情で頼んでるんだから! 今後一切あなたたちに迷惑は掛けないわ! たった一回遼二を貸してくれるだけでいいって言ってるの! あなただって男なんだから、そのくらいどうってことないでしょ? 女みたいに嫉妬したりするわけもなし!」
またえらく勝手な言い分である。紫月は片眉をしかめながら呆れた溜め息をもらしてしまった。
「あンなぁ、野郎だからってヤキモチ焼かねえなんて思うなよ? じゃあ反対にあんたの男を一晩でいーから俺に貸してくれっつったら、あんたは『はい、どうぞ』って貸すンかよって話!」
「バ……! バカ言わないでよ! そんなの冗談じゃないわ!」
「だろ? 俺だって同じさ。てめえの亭主をモノみてえに扱われりゃ黙ってられねえだろうが。それにな、サリー。もしもアンタがホントにこいつのガキを産んだなんてことになったとしたら――そン時は俺が引き取って育てるぜ?」
「な、何ふざけたこと言ってんのよ……」
「俺は存外大真面目さ。遼二の子供なら俺の子供も同然だ。この世で一等大事な、てめえの命と引き換えてもいいと思えるたった一人の愛する男の子供なら心血注いで育てるさ」
「な、何よ……今度は惚気?」
「ああ、思いっきり惚気だ。だが、事実でもある。俺はこいつと一心同体と思って生きてる。こいつの痛みはダイレクトに俺の痛みだ。こいつの悩みは俺の悩みであり、こいつの幸せが俺の幸せだ。逆も然りだ。俺たちはそうやって一緒に生きてる。それが俺たちの誇りだ」
真っ直ぐに視線と視線を合わせて言い切る紫月の言葉に迷いは感じられない。惚気でも何でもない。本物の覚悟なのだ。
サリーにもそれが伝わったのだろう。特には大声で助けを呼ぶわけでもなく、棒立ち状態のままで紫月から視線を外すこともできずにいた。
25
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる