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極道の姐
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「そ、そんなに厳しい訓練を子供の頃からしてたの……? お兄様や鐘崎さんも一緒に?」
「ああ。カネももちろんだが、李も一緒だったぜ」
「李さんも!」
「何とか耐えてこられたのは兄貴や仲間がいたからだな。俺は今でこそ割合デカく育ったが、ガキの頃はチビだったんだ」
「ええ!? そうなの?」
想像できないよとばかりに冰が目を剥いている。
「だから兄貴がそれこそ父親代わりみてえにしてよく面倒を見てくれたもんだ。カネもガキの頃から体格は良かったから、子供心にこいつとはぜってえ喧嘩しちゃならねえって思ってたわな」
「ふええ……そうなんだ……。でも白龍は今は背もめちゃめちゃ高いし、喧嘩も強そうだよね」
周が誰かと殴り合ったりしているところを見たことはないが、昼間ロンを軽く揉んでいたというのは知っている。冰は別の部屋で待たされていたから直接現場を目の当たりにしたわけではないのだが、そこはマフィアの男というだけある。やはりやる時にはやるのだと驚かされた冰だった。
「そういえば前に紫月さんが言ってたっけ。鐘崎さんは喧嘩とかもすごく強くて、紫月さんとは技の使い方からしてまったく違うんだーって。傭兵上がりの先生に体術を教わったって聞いたけど、白龍たちもやっぱり武道とかも習ったりしてたの?」
「ああ、師匠は皆一緒だったな。まあ、カネのヤツだけは日本で俺らは香港だったから、訓練の時以外は別々の師匠だったがな。体術はもちろんだが射撃や馬術、それに外国語に物理化学の知識と、とにかく覚えなきゃなんねえことは山ほどあって、ホントに過酷だったぜ。情けねえ話だが、俺は将来マフィアにはならねえから、こんな訓練とか勉強はしたくねえってな、泣いて親父に食って掛かったこともある」
「ええ……!? そうだったの? それでお父様は何て……?」
「思いっきり張り倒された」
「え……!? ホントに……?」
「後にも先にもあれが親父にぶん殴られた最初で最後ってやつだったな。俺はチビだったし、部屋の隅っこの方まで転がるくれえに吹っ飛ばされて、でも誰も助けてくれなくてな。普段はやさしい継母もその時だけは何故か一切口を挟まねえし、大丈夫かって手を差し伸べてくれることもなく、側近たちも仁王立ちして見てるだけだった。親父は鬼のような形相でぜってえ目を逸らしてくれねえしで、まさに四面楚歌だ。もうマジで恐ろしくてな。これならまだ訓練で辛え方がマシだと思ったのをよく覚えてるぜ」
「ふわぁ……あのやさしいお父様が……」
信じられないとばかりに冰は硬直状態だ。
「まあ、親父があんだけ怒ったのには訳があったからな」
「……ワケって?」
「ん、俺が心ないことを口走ったもんでな」
「心ないこと……? 白龍がお父様にってこと?」
「ああ……。親父に殴られた後、地下の物置きに閉じ込められて反省できるまで出て来るなって仕置きを食らったんだが、こっそり兄貴が助けに来てくれてな。晩飯の飲茶を密かにくすねて持ってきてくれて、何で親父があれほど怒ったのかってのを聞かされた。俺はつい……どうせ妾の子なんだし、ファミリーであって本当のファミリーじゃねえわけだから後を継ぐ気はねえってな感じのことを言っちまったらしいんだわ。ガキだったし、訓練や勉強が辛くてテンパってたから自分じゃよく覚えてねえが、とにかく興奮のままにそんなことをほざいたらしい」
瞳を細めて苦笑する周の視線はどこか遠く、そして切なげに遥か昔を懐かしむかのように揺れていた。
「ああ。カネももちろんだが、李も一緒だったぜ」
「李さんも!」
「何とか耐えてこられたのは兄貴や仲間がいたからだな。俺は今でこそ割合デカく育ったが、ガキの頃はチビだったんだ」
「ええ!? そうなの?」
想像できないよとばかりに冰が目を剥いている。
「だから兄貴がそれこそ父親代わりみてえにしてよく面倒を見てくれたもんだ。カネもガキの頃から体格は良かったから、子供心にこいつとはぜってえ喧嘩しちゃならねえって思ってたわな」
「ふええ……そうなんだ……。でも白龍は今は背もめちゃめちゃ高いし、喧嘩も強そうだよね」
周が誰かと殴り合ったりしているところを見たことはないが、昼間ロンを軽く揉んでいたというのは知っている。冰は別の部屋で待たされていたから直接現場を目の当たりにしたわけではないのだが、そこはマフィアの男というだけある。やはりやる時にはやるのだと驚かされた冰だった。
「そういえば前に紫月さんが言ってたっけ。鐘崎さんは喧嘩とかもすごく強くて、紫月さんとは技の使い方からしてまったく違うんだーって。傭兵上がりの先生に体術を教わったって聞いたけど、白龍たちもやっぱり武道とかも習ったりしてたの?」
「ああ、師匠は皆一緒だったな。まあ、カネのヤツだけは日本で俺らは香港だったから、訓練の時以外は別々の師匠だったがな。体術はもちろんだが射撃や馬術、それに外国語に物理化学の知識と、とにかく覚えなきゃなんねえことは山ほどあって、ホントに過酷だったぜ。情けねえ話だが、俺は将来マフィアにはならねえから、こんな訓練とか勉強はしたくねえってな、泣いて親父に食って掛かったこともある」
「ええ……!? そうだったの? それでお父様は何て……?」
「思いっきり張り倒された」
「え……!? ホントに……?」
「後にも先にもあれが親父にぶん殴られた最初で最後ってやつだったな。俺はチビだったし、部屋の隅っこの方まで転がるくれえに吹っ飛ばされて、でも誰も助けてくれなくてな。普段はやさしい継母もその時だけは何故か一切口を挟まねえし、大丈夫かって手を差し伸べてくれることもなく、側近たちも仁王立ちして見てるだけだった。親父は鬼のような形相でぜってえ目を逸らしてくれねえしで、まさに四面楚歌だ。もうマジで恐ろしくてな。これならまだ訓練で辛え方がマシだと思ったのをよく覚えてるぜ」
「ふわぁ……あのやさしいお父様が……」
信じられないとばかりに冰は硬直状態だ。
「まあ、親父があんだけ怒ったのには訳があったからな」
「……ワケって?」
「ん、俺が心ないことを口走ったもんでな」
「心ないこと……? 白龍がお父様にってこと?」
「ああ……。親父に殴られた後、地下の物置きに閉じ込められて反省できるまで出て来るなって仕置きを食らったんだが、こっそり兄貴が助けに来てくれてな。晩飯の飲茶を密かにくすねて持ってきてくれて、何で親父があれほど怒ったのかってのを聞かされた。俺はつい……どうせ妾の子なんだし、ファミリーであって本当のファミリーじゃねえわけだから後を継ぐ気はねえってな感じのことを言っちまったらしいんだわ。ガキだったし、訓練や勉強が辛くてテンパってたから自分じゃよく覚えてねえが、とにかく興奮のままにそんなことをほざいたらしい」
瞳を細めて苦笑する周の視線はどこか遠く、そして切なげに遥か昔を懐かしむかのように揺れていた。
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