405 / 1,212
チェインジング・ダーリン
9
しおりを挟む
周は紫月にも着替えるように言うと、自らも迅速に態勢を整えた。
「よし、じゃあ里恵子、すまねえがバイクを借りていくぞ。一之宮は俺の後ろに乗ってくれ」
だが、紫月からは意外な返事が寄せられた。
「いや、俺が転がすからお前はケツに乗ってくれ。万が一俺らの尾行がバレて、やむを得ずの銃撃戦なんかになった場合、俺よりはお前の方が腕がいい。なんせ俺は実戦で撃ったことがねえからな。例えば追跡車のタイヤを撃ち抜くなんて芸当は夢のまた夢だ」
確かに一理あるが、周にしてみれば自分よりも華奢な紫月に運転させるのもそれはそれで不安が残るところだ。そんな思いが顔に出ていたのか、
「ンなツラすんなって! 大丈夫だ、俺はこう見えても若い頃から遼を乗せて走ってる。体格的には遼もお前も大して変わらねえ。運を天に任せろとは言わねえが――お前の命、俺に預けてくれねえか」
意思のある瞳でそう言った。長年の付き合いがある周でさえも、ほとんどお目に掛かったことがないキリリとした精悍な表情だ。周はフイと笑むと、進んで後ろの座席にまたがった。
「分かった。じゃあ頼んだぜ!」
コクリと紫月がうなずく。普段は軽いノリが持ち前の彼のこんなにも研ぎ澄まされた表情を初めて拝んだ気がしていた。
「老板、たった今源次郎さんから最新の情報が届きました。鐘崎の若さんからの伝言です。本日未明、宝飾品用の原石を積んだ船便からの荷物が臨海地区にある倉庫へと大量に納められたとのことで、犯人たちの狙いはその原石を横取りすることのようです。現行でも時価十億は固いそうで、加工を施して製品にすれば価値は計り知れないかと。内覧会に来ていた客を人質にとったのも倉庫の警備を脆弱にし、犯行をしやすくする為と思われます」
「なるほど、目的はそれか。とすると、荷を動かす算段もできているはずだ。奪ったブツをそのまま倉庫に置いとくわけはねえだろうからな」
「積荷の移動手段については源次郎さんが既に調査に乗り出してくれているとのことです。臨海倉庫の場所は鐘崎組からの方が近いので、原石の略奪阻止は組の皆さんが動いてくださるそうです。私共は源次郎さんと合流して鐘崎の若さんたちを含めた人質の救出に当たって欲しいとのことです。それから、以後しばらくは鐘崎の若さんからも通信が途絶えるとのことですので、おそらくは犯人が人質たちの携帯電話を取り上げたものと思われます」
「分かった。だが、さすがカネだな。携帯を没収される前に必要な情報をすべて伝えてよこした」
「よし、じゃあ里恵子、すまねえがバイクを借りていくぞ。一之宮は俺の後ろに乗ってくれ」
だが、紫月からは意外な返事が寄せられた。
「いや、俺が転がすからお前はケツに乗ってくれ。万が一俺らの尾行がバレて、やむを得ずの銃撃戦なんかになった場合、俺よりはお前の方が腕がいい。なんせ俺は実戦で撃ったことがねえからな。例えば追跡車のタイヤを撃ち抜くなんて芸当は夢のまた夢だ」
確かに一理あるが、周にしてみれば自分よりも華奢な紫月に運転させるのもそれはそれで不安が残るところだ。そんな思いが顔に出ていたのか、
「ンなツラすんなって! 大丈夫だ、俺はこう見えても若い頃から遼を乗せて走ってる。体格的には遼もお前も大して変わらねえ。運を天に任せろとは言わねえが――お前の命、俺に預けてくれねえか」
意思のある瞳でそう言った。長年の付き合いがある周でさえも、ほとんどお目に掛かったことがないキリリとした精悍な表情だ。周はフイと笑むと、進んで後ろの座席にまたがった。
「分かった。じゃあ頼んだぜ!」
コクリと紫月がうなずく。普段は軽いノリが持ち前の彼のこんなにも研ぎ澄まされた表情を初めて拝んだ気がしていた。
「老板、たった今源次郎さんから最新の情報が届きました。鐘崎の若さんからの伝言です。本日未明、宝飾品用の原石を積んだ船便からの荷物が臨海地区にある倉庫へと大量に納められたとのことで、犯人たちの狙いはその原石を横取りすることのようです。現行でも時価十億は固いそうで、加工を施して製品にすれば価値は計り知れないかと。内覧会に来ていた客を人質にとったのも倉庫の警備を脆弱にし、犯行をしやすくする為と思われます」
「なるほど、目的はそれか。とすると、荷を動かす算段もできているはずだ。奪ったブツをそのまま倉庫に置いとくわけはねえだろうからな」
「積荷の移動手段については源次郎さんが既に調査に乗り出してくれているとのことです。臨海倉庫の場所は鐘崎組からの方が近いので、原石の略奪阻止は組の皆さんが動いてくださるそうです。私共は源次郎さんと合流して鐘崎の若さんたちを含めた人質の救出に当たって欲しいとのことです。それから、以後しばらくは鐘崎の若さんからも通信が途絶えるとのことですので、おそらくは犯人が人質たちの携帯電話を取り上げたものと思われます」
「分かった。だが、さすがカネだな。携帯を没収される前に必要な情報をすべて伝えてよこした」
23
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる