極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
434 / 1,212
極道たちのクリスマスパーティー

しおりを挟む
「――デカくなったな」
「だよね! 今から十年前っていうと、その頃の白龍は今の俺とほぼ同じくらいの歳だったんだもんね? 一人で一から立ち上げてこんなに大きな会社にしたんだもん! 本当にすごいよ」
 嬉しいことを言ってくれる冰には悪いが、周としては彼の言うような意味で言ったわけではなく、クスっと笑みを誘われてしまった。
「俺が言ったのはお前のことだ」
「え……? 俺?」
「確かに社もデカくなったには違いねえが、そうじゃなくてあの頃――まだガキだったお前が立派な青年になったと言ったんだ」
「白龍……」
「お前は知らねえだろうが、俺は香港を離れる前の日に黄のじいさんとお前が住んでいたアパートを訪ねたんだ。日本に来ちまったらそうそう会うことも叶わなくなると思ってな」
 あの日の少し切ない思いは、周にとって忘れられない記憶のひとつなのだ。確かにあの頃は冰に対して今のような恋愛感情があったかどうかは定かでない。ただ、幼い彼を置いて遠い地に向かうことがひどく切なかったことだけは強烈に印象に残っているのだ。
「できることなら香港を離れたくはねえ。何もわざわざ遠い異国に行かずとも、お前や黄のじいさんのいる香港の地で起業すりゃいいじゃねえかと何度自問自答したか知れねえ。だが、それじゃ自分を甘やかしちまうことになる。男としてそれじゃいけねえと気持ちを奮い立たせて香港を後にしたあの日の気持ちは未だに忘れられねえと思ってな」
 ゆるりと愛しげに冰の髪を漉きながら瞳を細める。
「白龍……」
「だがそれから八年経ってお前から俺を訪ねてくれた。言葉では言い表せねえくらい嬉しかった。心が躍るという言葉があるが、まさにそんな気分だったなと思ってな。それから一年、こうしてお前と共にいられることが夢のようだ」
 冰がツリーを眺めながら一年前のクリスマスのことを思い返して感慨に耽っていたように、周もまた、二人が出会ってからのことを走馬灯のように思い巡らせていたのだ。共に同じことを考え、同じように互いを想い、今の幸せを噛み締めているのだと知って、冰は思わず熱くなってしまった目頭を押さえた。
「白龍……俺、俺知ってる。白龍があの日、じいちゃんのアパートを訪ねてくれたこと。学校から帰って来てすぐにじいちゃんから聞いたんだ。漆黒のお兄さんが会いに来てくれたんだぞって。すぐにアパートの下まで降りて追い掛けたけど、その時はもう白龍はいなくなっててさ……。一目でいいから会いたかったって思って……すごく寂しくて……苦しくなったのをよく覚えてるよ」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...