極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
433 / 1,212
極道たちのクリスマスパーティー

しおりを挟む
 その夜のことだ。
 風呂から上がった周は、リビングにもベッドにも冰の姿が見えないことを怪訝に思い、ダイニングや冰自身の部屋まで捜して歩くこととなった。
 ふとドアの隙間から向かいのボールルームの灯りが漏れていることに気付き、そっと覗きに行くと、大きなもみの木を見上げるようにして冰が佇んでいた。
「ここにいたのか。部屋にいねえから心配したぞ」
「白龍! ごめんね。明日にはもうこの飾りを片付けちゃうんだと思ったらさ、もうちょっと見ておきたくて」
「それもいいが湯冷めしねえようにしろよ」
 周は羽織っていたガウンを脱ぐと、自分よりも一回り華奢な冰の肩へとそれをかけた。
「あったかい……! ありがとうね、白龍。あ……! でもこれじゃ白龍が風邪引いちゃう」
「俺は頑丈にできてるから心配はいらねえさ」
 クスッと笑みながらクシャクシャっと髪を撫でられて、冰は湯上がりの頬をポッと朱に染めた。さりげなく当たり前のようにいつもこうして気遣ってくれる。そんな亭主に心がキュンと摘まれる。冰は改めて今こうして彼と共にいられる幸せを噛み締めるのだった。
「楽しかったね、今日のパーティー。そういえばさ、初めて紫月さんと鐘崎さんに会ったのも去年のクリスマスの頃だったんだよね。真田さんがダイニングの方にツリーを飾ってくれて、皆んなでディナーを食べたのをよく覚えてる」
 だからよけいに今年もこうしてツリーをもう少し眺めていたい、冰の横顔からはそんな思いが滲み出ているようだった。
「そういやそうだったな。あれからもう一年か」
「うん。俺が一人で白龍に会いに来て、一緒に住まわせてもらうようになってから一年ちょっと。早かったなぁ。何だか昨日のことみたい」
「そうだな。思い返してみるといろんなことがあったからな。お前や一之宮が拉致られたりして危ねえ目にも遭わせちまったし、逆に俺とカネがピンチに陥ったりな。濃い一年だったが、俺にとってはお前がここを訪ねてくれた日のことは忘れられねえ思い出だ」
 周はそう言いながら、ここ日本で起業することを決め、まだ幼かった冰を置いて香港を離れる日のことを思い浮かべていた。
「あれから八年、いやもう九年になるのか」
 ポツリと呟かれた言葉に冰が首を傾げる。
「九年?」
「ん? ああ、俺が日本に来てからってことだ」
「そっか! 白龍が会社を立ち上げてからもうそんなになるんだね。ってことは来年で十周年だ!」
「そう考えると時の経つのは早えって思うな」
「十周年になったらお祝いしなきゃ!」
 ワクワクと瞳を輝かせる冰を見つめながら、周はまったく違うことを思い浮かべていたわけか、愛しそうに冰の肩を抱き寄せながら微笑んだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...