487 / 1,212
三千世界に極道の華
10
しおりを挟む
「まあ、この三つのどれかが理由なら断りようもあるってもんだが。一番最悪なのは通常の吉原の他に男色の遊郭があったとして、俺たちを男娼的な目的で拐ってきた場合だ。男の花魁に据えるには容姿風貌どれをとっても百点満点揃いだろうが」
さすがにこの見解には驚きを通り越して誰もが唖然とさせられてしまった。
「ちょっと待ってよレイちゃん! 男の花魁って……まさか僕らが? さすがに想像が飛び過ぎじゃないの?」
息子の倫周が目を剥いている。
「だが有り得ねえ話じゃねえだろ? この俺様の美貌はもちろんのこと言うまでもねえが、紫月も冰もめちゃくちゃ美男だ。春日野も男前だが、男を抱きたい客からすりゃ好まれるタイプとは言えねえ。どちらかと言えば抱いて欲しい客に人気が出そうな容貌だわな」
淡々と意見を述べてはいるが、その内容は淡々とは程遠い。ともすれば度肝を抜かれるような驚愕な内容といえる。
「ちょっとレイちゃん! どうしたらそういう突拍子もない想像が浮かんでくるのか理解に苦しむけどね。それよりも何で”イイ男”の中に僕が入っていないのさ! こう言っちゃナンだけど、僕だってそれなりに美男子のつもりなんだけどね」
倫周は口を尖らせているが、他の者たちからすればこんな時にこんなコミカルな言い合いをしていられる柊親子に唖然状態である。
「確かに突飛っちゃ突飛だけどさ……けどレイさんの考えも満更冗談じゃねえかも知れねえよね。男色専門の遊郭があるとすれば、働き手は確かに必要だろうし、見てくれの点で俺らが気に入られたってのも……まあ納得がいかねえ話じゃねえかも」
正直なところ、紫月はこれまでにも幾度か同性から色目で見られたことがあり、ただその度に鐘崎が眼光鋭く威嚇して追い払ってきたわけだ。男娼的な意味で望まれたというのも有り得ない話ではないと思うのだろう。
「けど今まで何の兆候もなかったってことは、前々から俺らに目をつけてたってよりは、たまたま今日偶然街で見掛けて、とりあえず拐っちまえ……みたいな感じだったのか」
そんな兆候があれば、当然鐘崎が黙って見過ごすわけもないからだ。
「そうかも知れん。ヤツらはそういったスカウトの為に度々地上に出ているのかもな。問題はこれからどうするかってことだ。一応は拉致同然でかっさらってきたわけだ。俺たちをいつまでこのまま放置しておくはずもねえだろうからな。遅かれ早かれヤツらがここへやって来るだろう。まあ、今俺らが想像したのとは全く別の目的という可能性もあるが、どう転んだとしてもある程度対処を考えておく必要がある」
さすがに年長者だけあってレイは頼りになる。もしもここに周や鐘崎がいれば同じように状況判断と今後の動きを考えるのだろうが、今はとにかくここにいる者たちだけで頭を捻るしかない。幸い源次郎というもう一人頼れる強者もいることだし、皆は瞬時に団結してこの奇妙な状況を突破することを思い巡らせるのだった。
「今頃は焔と遼二の方でも俺たちがいなくなったことに気付いているだろうからな。できる限りの足取りを追ってくれているはずだ」
「だったら案外すぐに俺らの居場所を突き止められるかも! さっきっからスマフォが見当たらねえからそっちは取り上げられたみてえけど……ほら、これ!」
紫月は自分のピアスと冰の腕時計を指してみせた。GPS付きのこれさえあれば鬼に金棒だというのだ。
つまり先刻、周と鐘崎が危惧していたスマートフォン以外のGPSが潰されたのではという想像は外れていたということになる。敵もさすがにそこまでは気付かなかったわけだ。電波が届かなかったのも、ここが地下であり、特殊な世界ということと関係していると思われる。
さすがにこの見解には驚きを通り越して誰もが唖然とさせられてしまった。
「ちょっと待ってよレイちゃん! 男の花魁って……まさか僕らが? さすがに想像が飛び過ぎじゃないの?」
息子の倫周が目を剥いている。
「だが有り得ねえ話じゃねえだろ? この俺様の美貌はもちろんのこと言うまでもねえが、紫月も冰もめちゃくちゃ美男だ。春日野も男前だが、男を抱きたい客からすりゃ好まれるタイプとは言えねえ。どちらかと言えば抱いて欲しい客に人気が出そうな容貌だわな」
淡々と意見を述べてはいるが、その内容は淡々とは程遠い。ともすれば度肝を抜かれるような驚愕な内容といえる。
「ちょっとレイちゃん! どうしたらそういう突拍子もない想像が浮かんでくるのか理解に苦しむけどね。それよりも何で”イイ男”の中に僕が入っていないのさ! こう言っちゃナンだけど、僕だってそれなりに美男子のつもりなんだけどね」
倫周は口を尖らせているが、他の者たちからすればこんな時にこんなコミカルな言い合いをしていられる柊親子に唖然状態である。
「確かに突飛っちゃ突飛だけどさ……けどレイさんの考えも満更冗談じゃねえかも知れねえよね。男色専門の遊郭があるとすれば、働き手は確かに必要だろうし、見てくれの点で俺らが気に入られたってのも……まあ納得がいかねえ話じゃねえかも」
正直なところ、紫月はこれまでにも幾度か同性から色目で見られたことがあり、ただその度に鐘崎が眼光鋭く威嚇して追い払ってきたわけだ。男娼的な意味で望まれたというのも有り得ない話ではないと思うのだろう。
「けど今まで何の兆候もなかったってことは、前々から俺らに目をつけてたってよりは、たまたま今日偶然街で見掛けて、とりあえず拐っちまえ……みたいな感じだったのか」
そんな兆候があれば、当然鐘崎が黙って見過ごすわけもないからだ。
「そうかも知れん。ヤツらはそういったスカウトの為に度々地上に出ているのかもな。問題はこれからどうするかってことだ。一応は拉致同然でかっさらってきたわけだ。俺たちをいつまでこのまま放置しておくはずもねえだろうからな。遅かれ早かれヤツらがここへやって来るだろう。まあ、今俺らが想像したのとは全く別の目的という可能性もあるが、どう転んだとしてもある程度対処を考えておく必要がある」
さすがに年長者だけあってレイは頼りになる。もしもここに周や鐘崎がいれば同じように状況判断と今後の動きを考えるのだろうが、今はとにかくここにいる者たちだけで頭を捻るしかない。幸い源次郎というもう一人頼れる強者もいることだし、皆は瞬時に団結してこの奇妙な状況を突破することを思い巡らせるのだった。
「今頃は焔と遼二の方でも俺たちがいなくなったことに気付いているだろうからな。できる限りの足取りを追ってくれているはずだ」
「だったら案外すぐに俺らの居場所を突き止められるかも! さっきっからスマフォが見当たらねえからそっちは取り上げられたみてえけど……ほら、これ!」
紫月は自分のピアスと冰の腕時計を指してみせた。GPS付きのこれさえあれば鬼に金棒だというのだ。
つまり先刻、周と鐘崎が危惧していたスマートフォン以外のGPSが潰されたのではという想像は外れていたということになる。敵もさすがにそこまでは気付かなかったわけだ。電波が届かなかったのも、ここが地下であり、特殊な世界ということと関係していると思われる。
22
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる