極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「まあ、この三つのどれかが理由なら断りようもあるってもんだが。一番最悪なのは通常の吉原の他に男色の遊郭があったとして、俺たちを男娼的な目的で拐ってきた場合だ。男の花魁に据えるには容姿風貌どれをとっても百点満点揃いだろうが」
 さすがにこの見解には驚きを通り越して誰もが唖然とさせられてしまった。
「ちょっと待ってよレイちゃん! 男の花魁って……まさか僕らが? さすがに想像が飛び過ぎじゃないの?」
 息子の倫周が目を剥いている。
「だが有り得ねえ話じゃねえだろ? この俺様の美貌はもちろんのこと言うまでもねえが、紫月も冰もめちゃくちゃ美男だ。春日野も男前だが、男を抱きたい客からすりゃ好まれるタイプとは言えねえ。どちらかと言えば抱いて欲しい客に人気が出そうな容貌だわな」
 淡々と意見を述べてはいるが、その内容は淡々とは程遠い。ともすれば度肝を抜かれるような驚愕な内容といえる。
「ちょっとレイちゃん! どうしたらそういう突拍子もない想像が浮かんでくるのか理解に苦しむけどね。それよりも何で”イイ男”の中に僕が入っていないのさ! こう言っちゃナンだけど、僕だってそれなりに美男子のつもりなんだけどね」
 倫周は口を尖らせているが、他の者たちからすればこんな時にこんなコミカルな言い合いをしていられる柊親子に唖然状態である。
「確かに突飛っちゃ突飛だけどさ……けどレイさんの考えも満更冗談じゃねえかも知れねえよね。男色専門の遊郭があるとすれば、働き手は確かに必要だろうし、見てくれの点で俺らが気に入られたってのも……まあ納得がいかねえ話じゃねえかも」
 正直なところ、紫月はこれまでにも幾度か同性から色目で見られたことがあり、ただその度に鐘崎が眼光鋭く威嚇して追い払ってきたわけだ。男娼的な意味で望まれたというのも有り得ない話ではないと思うのだろう。
「けど今まで何の兆候もなかったってことは、前々から俺らに目をつけてたってよりは、たまたま今日偶然街で見掛けて、とりあえず拐っちまえ……みたいな感じだったのか」
 そんな兆候があれば、当然鐘崎が黙って見過ごすわけもないからだ。
「そうかも知れん。ヤツらはそういったスカウトの為に度々地上に出ているのかもな。問題はこれからどうするかってことだ。一応は拉致同然でかっさらってきたわけだ。俺たちをいつまでこのまま放置しておくはずもねえだろうからな。遅かれ早かれヤツらがここへやって来るだろう。まあ、今俺らが想像したのとは全く別の目的という可能性もあるが、どう転んだとしてもある程度対処を考えておく必要がある」
 さすがに年長者だけあってレイは頼りになる。もしもここに周や鐘崎がいれば同じように状況判断と今後の動きを考えるのだろうが、今はとにかくここにいる者たちだけで頭を捻るしかない。幸い源次郎というもう一人頼れる強者もいることだし、皆は瞬時に団結してこの奇妙な状況を突破することを思い巡らせるのだった。
「今頃は焔と遼二の方でも俺たちがいなくなったことに気付いているだろうからな。できる限りの足取りを追ってくれているはずだ」
「だったら案外すぐに俺らの居場所を突き止められるかも! さっきっからスマフォが見当たらねえからそっちは取り上げられたみてえけど……ほら、これ!」
 紫月は自分のピアスと冰の腕時計を指してみせた。GPS付きのこれさえあれば鬼に金棒だというのだ。
 つまり先刻、周と鐘崎が危惧していたスマートフォン以外のGPSが潰されたのではという想像は外れていたということになる。敵もさすがにそこまでは気付かなかったわけだ。電波が届かなかったのも、ここが地下であり、特殊な世界ということと関係していると思われる。
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