極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「ヤバい場所……」
「この国に住むほとんどの人間が知らねえってのにこんなバカでかい遊興施設が実在しているってのがな。さっきの花魁道中といい、道を歩ってる着物姿のヤツらといい、実際にここを知っている者が確かに存在している。全国民からすりゃ大した数じゃねえかも知れんが、この街に生きる人間は相当数いるという事実だ」
 そんなものをいったい誰が造ったというのだろう。謎はますます深まるばかりだ。
「あとは……何故俺たちがこんなところへ連れて来られたのかってことだ。さっきエレベーターに乗って来た二人組の仕業だろうが、お前さんらも面識はねえんだろ?」
「ないっす。杖ついたじいちゃんと、もう一人の方も人の好さそうなおっちゃんだったけど……」
「あれは仮の姿だろうぜ。その直後に急に眠くなって意識を失った。気が付いたら全員が見たこともねえおかしな世界に連れて来られてたってわけだが――。拉致にしては扱いが丁寧過ぎるってのも妙だな」
 確かにそうだ。横暴な拐い方の割にはきちんと布団も掛けられていたし、監禁するにしては部屋も豪華過ぎる。
「考えられることは――おそらく次の三つだ」
 レイは皆に向かって三本の指を立ててみせた。
「三つ……っすか?」
「ああ。まずひとつ目はお前らの亭主を誘き出す目的で人質として拐われたということだ。であれば、既に敵から焔と遼二に連絡がいっている可能性が高い。このまま待っていれば何らかの動きがあるはずだ。ふたつ目はこの遊興施設の客にする目的で連れて来られたという可能性だ」
「客……ですか? 俺たちを?」
「その場合、今日一日の内のどこかで買い物をしている俺たちを偶然見掛けて、その買いっぷりからある程度富裕層の人間だと思われたってことだ。言っちゃなんだが結構買い込んだからな」
 確かにレイは久しぶりの日本での買い物を堪能していたし、源次郎や春日野らの両手に余るほどの袋を持ってもらったりしていたのは事実だ。しかもそのすべてがいわゆる高級品といえるブランド店での買い物だった。
「もしかしたらヤツらは度々そうした顧客獲得の為にブランド店の建ち並ぶ界隈でターゲットを探していたのかも知れねえ。そして三つ目だが……これが当たっているとすれば少々タチが悪いと思える想像だ」
 苦笑まじりのレイの表情に皆はゴクリと息を呑んで説明を待つ。
「三つ目は――俺たちをここで働かせる為に拉致ってきたということだ」
「働かせる為って……」
 皆、一様に驚いたように瞳を丸くする。
「考えてもみろ。ここは遊郭街だぜ? さっきの花魁道中からも分かるように江戸吉原の再来を目論んで作られた施設なら、客を相手にする遊女も当然必要になる。つまり働き手だ。てめえで言うのもナンだが、俺たちは正直なところ容姿という点では粒揃いだ。例えば花魁道中の際に肩を貸す先導役の下男なんかをやらせるにはもってこいなんじゃねえか? そういった意味でスカウトの為に連れて来られたとすればこの丁寧な扱いにも納得がいくってもんだ」
 驚きつつもレイの推測には確かに合点がいくところである。
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