極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 敵に正体を知られていないのならば、それはそれでやり易い部分もある。過分な警戒をされずに、この施設のことをもっと深く探ることが可能だからだ。そういえば有名モデルであるレイを見てもそれと気付かなかったようだし、単に容姿が気に入られただけで連れて来られたということなのだろう。
 確かにモデルのレイは街中では歩いているだけで人々が振り返る華やかさであるし、紫月や冰が美麗な顔立ちなのも言わずと知れている。倫周も父親譲りで美しいと言えるし、春日野は周や鐘崎を彷彿とさせるような男前である。初老の源次郎は別としても、この一団が固まって一緒にいれば目を引かないわけがないのだ。男色専用の遊郭に据え置くにはこれ以上ない適任と思われたのだろう。
 先程レイが挙げた三つの理由の内の一番厄介な想像が当たってしまったことは災難であるが、とにかくこうなってしまった以上ジタバタしても仕方がない。言う通りにしてさえいれば危害を加えるつもりはなさそうだし、嘘か誠か報酬も極上の生活も保証するとまで言っている。ひとまずは言うなりになる素振りを装いながら、脱出の機会を待つしかない。それまでは身の安全を考慮しておとなしく従うが賢明と心得る一同であった。
「俺が花魁――ね。それこそ映画でしか観たことねえけど、ある意味大抜擢と喜ぶしかねえってか?」
 紫月が不敵な苦笑いをみせると、男の方も機嫌の良さそうにうなずいた。
「ほほ、さすがに度胸も据わっておられる。花魁としての格も備わっておいでだ。いや、実に素晴らしい!」
「で? 他のやつらは何をやらされるんだ? まさかここにいる全員を男花魁にしようってか?」
 紫月が訊くと男は少々考え込むように腕組みをしながら、一同を舐めるように見渡して品定めのようなことを言い始めた。
「そうですな。あなたの隣にいる彼も容姿の点では申し分ないが、いささか雰囲気が幼いですな。顔は可愛いが色気が足りん」
 男が指したのは冰である。
「そうさね、彼には禿として花魁の側付きになってもらいましょうかね」
「か、禿……!?」
 冰が驚きに目を剥いている。
「そう、禿! まあ禿というには歳をとり過ぎているが構わんだろう。美しい花魁に可愛い禿とくれば、お客様も目の保養になる。人気が出ればいずれは花魁への格上げも夢じゃない」
 まさに有無を言わさぬ勝手そのものであるが、それを皮切りに男は次々と一同を品定めしていった。冰の次は倫周である。
「キミも可愛いらしい顔付きをしているが、禿にするには年齢の点で無理がありそうだな。普通の遊女として……あ、いや失礼。男だから遊女とは言わんな。新造としてお客様のお相手をしてもらおうか」
「新造?」
「分かりやすく言うと花魁の妹分――いや、弟分のようなものだ。花魁道中にも同行できるし花形といえるぞ」
 要は花魁よりも格下の男娼という意味である。それを聞いた倫周は一気に頬を膨らませた。
「僕が単なる男娼だって? ちょっとおじさん! どこに目を付けてるのよ! こんないい男を捕まえて普通の男娼だなんて! 侮辱もいいところだよ」
 プイとそっぽを向いてお冠である。これにはさすがの悪党も驚かされてタジタジとさせられてしまったようであった。
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