極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「いや、これは失敬。まさかそう出られるとは……」
「新造だか何だか知らないけど、ちょっと酷くない? 可愛い禿にするには歳をとり過ぎてるとかさ、いちいち棘を感じるんだよねぇー! 失礼にもほどがあるっていうものだよ! いろいろと納得いかないんだけど」
 多くは男娼だなんて冗談じゃないと怒るのが普通だが、倫周のツボはどうにもズレているようだ。それが天然なのか彼なりの策略なのかは別としても、主人の方ではそんな意外な面も気に入ったようだった。
「なかなかに道に入っているようだ。ではキミは何がお望みかな? むろん男花魁がご希望ならそれでも構わんが」
 すると倫周は機嫌を直したようにしながらも、ますます堂々たる態度をしてみせた。
「ふぅん? 僕に仕事の内容を決めさせてくれるっていうの? おじさん、案外話が分かるじゃない!」
 そう言いながらも男に気付かれないようにチラリとレイを見やり目配せをする。上手く話を繋げという暗黙の合図である。やはり天然ではなく、彼なりの考えがあってそうしているのだろう。
「キミは随分と度胸がお有りのようだからね。大したもんだ、気に入ったよ。希望があれば聞く耳は持つつもりだが、私をおじさんと呼ぶのはどうにもね」
「じゃあ何て呼べばいいのよ」
「ここは茶屋だ。お父さんと呼んでもらえると有難いね」
「お父さん?」
 図らずも実の父親の目の前で赤の他人を『お父さん』と呼べとは思わず噴いてしまいそうになったが、ここで素性をさらけ出すほど倫周も馬鹿ではない。
「お父さんね。分かったよ。じゃあお父さん! 僕の仕事は僕のやりたいポストに就けてくれるってことでいいわけね?」
「ああ構わんよ。それでキミは何がお望みかな?」
 それに対して返事をしたのは実の父親のレイであった。
「そうかい。だったらこいつには髪結をやらせてやっちゃくれねえか? こいつはな、美容師の資格を持っているんだ。表の世界でもそういった仕事を生業にしているやつだからな。和服の着付けももちろんできるしメイクもお手のもんさ。そんじょそこいらの着付師なんぞより腕は抜群だぜ?」
「ほう? 美容師さんなのかい。そいつは有り難いね。なにせ今時、和服の着付けができる人材は少なくてね」
「じゃあ決まりだな」
 レイが満足そうにうなずく。彼にヘアメイクを担当させれば、化粧道具が自由に使えるだろう。いざという時に変装を施すことも可能だからだ。遊女の足抜きではないが、全員が別人に化けてここから出て行く機会を窺うのも夢ではない。倫周本人もそれならと満足気に笑顔を見せた。先程から目配せで意思を伝え合っていた柊親子の思い通りに事が運んだというわけだ。
「よろしいでしょう。では彼には髪結をやってもらうとして、もう一人そちらのキミだが」
 今度は春日野の番である。
「キミはガタイもいいし男前だ。花魁道中に付き添う下男をやらせたら絵的にも最高なんだが、如何かね? もちろん仕事は道中だけではないが、普段は花魁の身の回りの世話をしたり、用心棒的なお役目に就いてもらえたらと思うんだがね」
 春日野にしては願ってもない役回りである。普段から姐さん側付きのお役目を与っていたことだし、何より紫月の護衛という点で堂々と側にいられることは、まさに願ったり叶ったりである。
「いいでしょう。お引き受けします」
 春日野は二つ返事で快諾の意を表した。
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