極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「余計なことは考えずにここでの生活に馴染んでいただければ、皆さんには決して悪いようには致しませんよ。お働き如何によっては更なる高報酬も惜しみませんぞ」
「高報酬……ね。つまり俺たちはこの男花魁がより良い上客を掴んで大金を引き出せるようサポートすりゃいいってわけだな?」
「その通りです。正直なところこの男遊郭には男娼はおりますが、遊女の数から比べればまだまだ少なく、数える程度です。この街にある茶屋全体で男花魁を据える自体が初めてでしてな。我々としても安売りする気はありませんし、花魁で人を呼んで、それなりの金を落とせるお客を吟味するつもりです。つまりあなた方には男遊郭の未来がかかっていると言っても過言ではないのですよ」
「要は人寄せパンダってな役回りか」
「まあ、そう言ってしまえば粋に欠けますがな。実際はその通りです。見目麗しい男花魁がいると噂になれば、お客はもちろんのこと、男娼のなり手も増えることでしょう。我々としても早くこの男遊郭を遊女たちの遊郭に負けない稼ぎ処に育て上げねばなりません。そういった意味で皆さんのような美男子揃いには大いに期待したいわけです」
 男の話向から察するに、どうやら男色専門の方はまだまだ軌道に乗る手前であるのだろう。その起爆材として自分たちが拉致されてきたという理由もある程度見えてきたことだし、しばらくはここでの生活に甘んじるしか手はなさそうだ。
 むろんのこと、このまま一生を終えるつもりなど毛頭ないし、周や鐘崎も当然動き出すはずだから、彼らとの連絡手段は追々知恵を巡らせるしかなかろう。レイは最後にもうひとつ気になっていることを男に問うてみることにした。
「まあだいたいは理解したつもりだが、あとひとついいか? ここに来る客、つまりは俺たちが相手にする客ってのはこの世界の住人なのか? それとも外の世界の人間を会員制のような形で連れて来るって寸法なのか……」
 普通に考えれば外から連れて来るのが妥当だろうか。いわば外貨を稼ぐという理論からすれば当然そうなるはずである。
「おっしゃる通りですな。ここへ来るお客人は完全なる会員制で、厳しい審査を通って吟味された外の世界の方々です。遊郭で遊ぶだけの金銭的余裕があり、尚且つ粋も心得たお客人ばかりです。ここの存在を秘密にできないような方はそもそも会員にはなれませんし、新たに会員になるには既存のお客人のしっかりとした紹介が必要です。誰でも彼でも自由に出入りできる外の世界のバーやクラブとは違うのです。それに、万が一にも口外するような浅はかな客人が出た場合、速やかに制裁が待っていることはお客様方も重々ご承知でいらっしゃいます」
「は、なるほど。空恐ろしい話だな」
 レイが苦笑すると男は相変わらず腹の中のどす黒さが透けて見えるようなニコニコと繕った笑顔で応えてみせた。
「そういうことです。他に質問がなければ今夜はごゆっくりお休みください。まあお腹もお空きでしょう。すぐに夕膳をご用意させますゆえ、リビングの方でお待ちください。明日は皆さんの源氏名を決めたりお衣装合わせなどを行います。実際にお客様を接待する所作などの研修も致しましょうな。他に入り用の物や私に御用の際はリビングの通話機でお知らせくだされば、できる限りのご要望にはお応えするつもりです」
 男はそれだけ言い残すと、期待しておりますぞと笑いながら部屋を後にした。
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