極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 その丹羽の話によると、この巨大遊興施設の構想は今から二十年ほど前に持ち上がったということだった。ちょうど僚一がそんな噂を聞きつけたのとほぼ同じ時期といえる。
「ではやはりあの話は本当だったのですな」
 源次郎が納得している。
「源次郎殿はやはりご存じだったか。実際には江戸吉原を再建するという計画はもっと前からあったようです。それが実現化に向けて動き出したのがおおよそ二十年前で、当初はもっとまともな計画だったんだが……」
「まともと申しますと?」
「表の世界にも色を売るばかりじゃなく厳しい鍛錬を積んだ芸事で宴の席を彩る芸妓たちがいる。当初はそういった伝統ある花街をそのままこの地下の巨大空間に移設する予定で、計画に携わっていたのは江戸時代にあった実際の吉原で茶屋を営んでいた者の子孫たちだったそうだ。当時の吉原をそっくり再現するわけじゃなく、色よりも芸事に重きをおいた拡張高い花街を作ることが彼らにとっての永年の夢だったとか」
 これには国からも許可が下りていて、いわば真っ当な花街になるはずだったそうだ。現在の高級クラブや京都の置屋などと同じような感覚だが、ここでは江戸吉原の再来というだけあって、施設に入る者は必ず和服姿でなければならないという決め事があったらしい。また、猫も杓子も歓迎されるわけではなく、ここで遊ぶ者たちは相応の常識と社会的立場のある富裕層が事前の審査で選ばれるシステムになっていたそうだ。つまり会員制の超高級クラブという認識である。
 新しく会員になるには必ず既存の会員からの紹介状が必要で、酒も芸事も粋を心得て楽しめる節度ある大人だけが歓迎されるという条件だったそうだ。先日、茶屋の主人がボソリとこぼした言葉の意味はそういうことだったのかと納得させられる。
「まあこれだけの巨大施設だ。ほとんど街といってもいいくらいだからな。当然我々警察組織も常駐する計画だったわけだが……」
 江戸の頃にも吉原には今でいうところの警察組織が置かれていて、当時は番所と呼ばれていた。
「合法的に認められた花街のはずが、その体制に変化が起こったのは今から五年ほど前だった。この街に目をつけたある組織が介入するようになってな。乗っ取られる迄はあっという間だった。番所役の警察官も手が出せずに追い出され、一年も経たない内に無法地帯と化した。当初からいた芸妓はほとんど拘束状態で、脅されて無理矢理客を取らされる始末だ。それどころか銀座や六本木、赤坂界隈からは人気のホステスが次々と姿を消していった。おそらくは上手い口車に乗せられて、ここへ拐われて来たんじゃねえかと我々は踏んでいる」
 事態を重く見た警視庁と公安から数人が選ばれて秘密裏に調査に動き出すこととなったのはつい一年前のことだったそうだ。丹羽もその内の一人で、客としてこの吉原に潜入し、乗っ取りを図った組織について調べを進めている最中とのことだった。
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